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 私は今、ある高級マンションの一室にいる。

 4畳ほどのクローゼットだらけの部屋に、一人でその時を待っている。

 前には、小さなテーブルがあり、少な目のジュースとラムネ菓子がある。

 私は、時間つぶしに、それらを口にする。

 

 私が、ここに来た理由は、友達から勧められたサークル…。

 いわゆる、如何わしいサークルで、エッチなことをするというものだ。ただ、女性会員は、プラスお金が貰えるという得点付きのようだ。

 友達は「本番なしで、お金も貰えて、自分が気持ちよくなるだけ。」と言って私を誘った。

 給料はというと、数時間で5万円〜。「〜」というのは、歩合制らしく、主催者の気分によって変動するらしいのだ。

 …本番なしで、高額な金額が手に入るということで、私は気軽にオッケーした。

 私は、37歳の既婚者。子供は小学校5年生の息子が、一人いる。早くに結婚出産し、それからは、コンパなどでも遊んでいた私だったが、このような仕事は初めてだった。

 体を売る…ということは、はっきり言って抵抗は無い。しかも本番なしで5万円というのは、高校生の売春でも高いほうだと思う。

友達は、サークルのようなもので自分が楽しめるとだけ言い、私をここへ残した。

しかし私は、性欲はいたって普通で、そんなサークルなんてどちらかというと興味がない。

私は、サークルというよりもパート気分で、ここへ来た。

 

しばらくすると、若めの男の人が2人、入って来た。年は20代後半位かな?さすがはルックスがいい。この人たちが主催者?

「初めまして、奥様。ともこさんのご紹介ですね。」

 「はい。」

 私は、少しうつむき答えた。男の人達はニコニコしながら、私を見る。

 「綺麗な方でしたので、ビックリしました。バイト代は弾みますよ。さぁ、こちらへ…」

 そうお世辞を言い、私を部屋から別の部屋へと案内を始めた。

 

 マンションの中は想像していたよりも広い。

 外観は高級マンションそのものだったが、室内も凄い。広く長い廊下と、幾つもの部屋の扉…。一度でいいから住んでみたい。

 そうこうしているうちに、ある部屋の扉にたどり着いた。そこは、今までの部屋の扉とは違い、大きな引き戸になっていた。いわゆるリビング…というものだろうか?

 彼らは、その引き戸を開いた。

 

 中は、薄暗く、よく見えない…。しかも広い。

 目をこらしてよく見てみると、誰かがいる?

 しかも、一人二人ではない…。

 なんとも怪しい雰囲気が、広いホールのようなリビングに広がっていた。

 「あの…」

 私は、少しビックリして、彼らに目をやった。

 「大丈夫ですよ。安心してください。」

 彼らは、相変わらずニコニコして、愛想が良いだけだ。でも、その笑顔が私に安心感を与える。

 私は、彼らを信じて、案内されるとおりに中に入った。