2010年12月29日15時4分
裁判員裁判の審理対象の強制わいせつ致傷事件で起訴された男性被告(47)が捜査段階で自ら書いたとされた「自供書」をめぐり、大阪地裁の細井正弘裁判長が「警察官が示唆して作られた」と述べ、作成段階で誘導があったと指摘していたことがわかった。被告の取り調べを担当した大阪府警の男性巡査部長(44)は、証人出廷した公判で誘導を否定。これに対し、弁護人が巡査部長を偽証容疑で刑事告発する事態となっている。
自供書は、警察官や検事が取り調べ対象者の説明を聞き取って作る「供述調書」と異なり、容疑者本人が犯行内容や容疑を認めたことを主に直筆で記すもので、刑事訴訟法で証拠として認められている。一般に信用性が高いとされる自供書の作成経緯について、裁判所が疑問を投げかけたのは異例だ。
弁護人の山本了宣(りょうせん)弁護士によると、被告は取引先の20代の女性に無理やりわいせつな行為をしたとして昨年10月15日に東成署に逮捕された。逮捕当日は容疑を否認したが、翌16日の巡査部長の取り調べに認め、「女性に『おれにさからうやつはおらん』とおどしました」「女性を押し倒して、馬のりになり、服をはぎとって全裸にした」などと書かれた自供書が作成された。
これに対し、弁護側は公判前に争点や証拠を絞り込む非公開の手続きなどで、「自供書の言い回しが逮捕状の内容とそっくりだ」「被告は『巡査部長の言った通りに自供書を書かされた』としている」などとして無罪を主張。自供書の信用性が争点の一つとなり、地裁は巡査部長の証人尋問を決めた。
尋問は初公判から3日後の今年10月7日にあり、巡査部長は弁護側の主張について「でたらめだ」と証言。「自供書は被告が記憶に基づいて書いた」「(被告に助言したことは)まったくない」と述べた。検察側も「自供書が信用できるのは明らかだ」として被告側の主張を退けるよう求めた。