2010年12月29日0時2分
不信、不安、失望などの言葉が最後まで躍った2010年ではあったが、うれしいニュースもあった。小惑星の粒子を持ち帰った探査機「はやぶさ」、そして2人の科学者のノーベル化学賞受賞。我が国の持つ力が国際社会であらためて評価され、国民は少しだけ自信を取り戻した。
変化という意味で羽田空港の国際線定期便復活は画期的であった。悪平等を好み、いったん決めたことを変えることが苦手なこの国にあっても、政治がその気にさえなれば変えられることを見事に示した。首都圏に住む人にとっての利便性は言うまでもないが、これまで韓国の仁川空港に飛び、そこで乗り継いで東南アジアなどへ行っていた地方の人たちが喜んでいる。年間100万人前後にも上るというこの人たちが羽田空港経由で行けることになったのである。また、東京に来たいと思っている多くのアジアの人たちがいる。羽田の国際化は我が国に直接の経済効果以上のものをもたらしてくれるに違いない。
そしてもう一つの変化が厳しい財政事情下での法人税減税である。これには異論があるかもしれない。歳出削減のめどは立っていないし、見返りの増税メニューもいただけない。本社を海外に移した企業がこれだけで戻ってくるとは思えない。だがこの減税は我が国の地盤沈下に政治が本気で歯止めをかけようとする決意と受け止めたい。
やろうとすればできる。変えようと思えば変えられるということである。足元のつまらぬことにこだわるのはもうやめよう。足の引っ張り合いはいい加減にして我が国の持てる力、可能性を引き出すことに全精力を傾けよう。心底からそう思ったこの一年であった。(啄木鳥)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。