弟を刺殺し遺体を切断して村上市の国道脇に捨てたとして、殺人と死体損壊・遺棄の罪に問われた山形県酒田市、元アルバイト店員、土田崇被告(33)に対する裁判員裁判の論告求刑公判が22日、新潟地裁(山田敏彦裁判長)であり、検察側は懲役18年を求刑した。【畠山哲郎】
検察側は論告で、弟の学さん(当時31歳)が引きこもりがちになり、母親に対して嫌がらせや暴力を繰り返していた点について「(学さんにも)落ち度があり、(被告は)悩んでいた」としながらも、「適切な支援がなされていれば、家族との交流を取り戻すのも可能で、第三者に相談すべきだった」と指摘。「母親は学さんがいなくなることを望んでおらず、母を救い出すために行ったと評価すべきでない」とした。
また、被告がナイフで学さんの腹など6カ所を刺し、のこぎりで遺体を切断して遺棄したことについて「ためらいは感じられず、社会を震憾(しんかん)させた」とした。血のついた服をはさみで切って捨てるなどの証拠隠滅行為についても「非難されるべきだ」とした。
一方、弁護側は「母親を守るためにした犯行。彼の苦しい8年間を考えてほしい」と主張し、懲役6年以下が相当とした。判決は27日に言い渡される。
論告前に行われた弁護人による被告人質問で、土田崇被告は「粘り強く弟を分かってあげられるよう頑張るべきだった。殺したのは間違いで、取り返しのつかないことをしてしまった」と反省の弁を述べた。
しかし、検察官が「母親が望んでもいないのに殺すのは独善的では」などと厳しく問い詰めると、被告はぶぜんとした表情に。質問と回答がかみ合わない場面も多くなり、山田敏彦裁判長から注意される一幕も。山田裁判長が「人としての感情が、あまり豊かでない気がする」と指摘すると、土田被告は「そうなんだと思います」と力なく答えた。【畠山哲郎】
毎日新聞 2010年12月23日 地方版