ホメオパシーだけじゃない 民間療法規制に壁(1) |
2010年12月28日付 朝日新聞東京本社朝刊から
砂糖玉をなめれば、病気に効くというホメオパシーなど、科学的に効果が証明されていない民間療法や健康食品によるトラブルが後を絶たない。国はようやく、健康食品の広告規制の強化に乗り出した。しかし、いまの規制の仕組みでは、健康被害があっても法律違反に問うのは、ハードルが高いのが実情だ。(長野剛、岡崎明子) |
日本ホメオパシー医学協会が作成した利用者向けの確認書。奥は療法で用いられる砂糖玉
「ご不便をおかけし、大変心痛く感じております」
今月上旬、ホメオパシー療法の利用者らに療法で使う砂糖玉の販売業者から手紙が届いた。今夏以降に相次いだ報道による影響や、砂糖玉の販売方法の変更で苦労、不便をかけたとして、わびていた。
ホメオパシーをめぐっては、がん患者らが「効く」と信じ込み、通常の医療を拒否する例が相次いで発覚。死亡する人まで出た。東京都は8月上旬、販売業者に薬事法に基づき立ち入り検査を実施。8月下旬には、日本学術会議が医療現場からの排除を求める会長談話を出した。
普及団体の日本ホメオパシー医学協会は10月から、使うべき砂糖玉を利用者に伝える療法家が、利用者に直接販売できないようにした。
薬事法では、医薬品として認められていないものを効果があるように宣伝する広告行為を禁止している。厚生労働省の基準によると、広告とは「顧客の購買意欲を刺激する」もの。利用者が療法家の「顧客」でなければ法に触れない。
療法家は砂糖玉の種類を伝えるのにとどめ、利用者は販売業者から直接買う仕組みになり、「利用者が療法家の顧客だと証明するのは困難」(厚労省)になった。
また協会は全国の療法家に利用者本人の意思に反して、通常医療にかかることを妨げないよう指示。利用者が医療を拒めば「私自身の判断と選択により、現代医学の治療を受けません」と記した確認書に署名させるよう徹底した。
ホメオパシーは、患者を通常医療から遠ざける行為が問題になった。慶応大の磯部哲准教授(医事法)によると、正常な医療の機会を奪うことも、医師法などの違反とする考え方は、広がっている。
磯部さんは「だが、個人がきちんと判断し、民間療法を信じるのは自由。患者から正常な判断力が奪われていたことを立証する必要があるが、何をもってそう認定するか、が難しい」と話す。
健康食品については、消費者庁は来年度から虚偽・誇大広告を取り締まる態勢を強化する。砂糖玉や水などの食品を「著しく誤認させる方法」で広告した業者への監視を強め、命令に従わない業者には罰則を科す。
《キーワード》 ホメオパシー |
植物や鉱物などの成分を限りなく薄めた水を砂糖玉に染み込ませ、飲み薬のようにして使う民間療法。がんや皮膚病など多くの病気を治療できる、と普及団体は主張している。 |