2010年10月29日 23時34分 更新:10月30日 0時43分
【ハノイ浦松丈二、西岡省二】ベトナム訪問中の菅直人首相と温家宝中国首相による首脳会談について、中国の胡正躍外務次官補は29日夜、「日本側が首脳会談の雰囲気を壊した。責任は日本側が完全に負うべきだ」と述べ、拒否する姿勢を示した。会場に予定されたホテルで、香港の記者団を部屋に呼び込んで話した。菅首相に同行した福山哲郎官房副長官も「今のところ(日中首脳会談の)予定はない」と述べた。沖縄県・尖閣諸島沖での漁船衝突事件で悪化した日中関係は、この日の首脳会談見送りで修復にさらに時間がかかる見通しとなった。
福山副長官は同日夜、「午後6時半(日本時間同8時半)に日中首脳会談がセットされたが、直前になって中国側からいきなり『できない』と言われた。日本としては冷静に対応したいし、戦略的互恵関係を推進するという立場は変わらない」と述べた。
一方、胡次官補は「ハノイでの首脳会談開催に向けた雰囲気を壊した責任は日本側が負うべきだ」と主張。拒否の理由として、「日本の外交当局の責任者は別の国と結託して釣魚島(尖閣諸島)の問題を再びあおった」と述べ、前原誠司外相とクリントン米国務長官が27日にハワイで行った日米外相会談で尖閣諸島を日米安保条約第5条の適用対象と確認したことを非難した。
また、「ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議の最中にも日本側が中国の主権と領土保全を侵害する言論をメディアを通じて流した」と日本側の報道を問題視。さらに「(29日の)日中外相会談について事実と異なる内容を発表し、東シナ海問題に関する両国の原則的共通認識の履行についての中国の立場を歪曲(わいきょく)した」と主張した。
日本外務省幹部によると、中国側は仏AFP通信の記事に問題があると伝えてきた。AFP通信は、前原外相の発言として、東シナ海ガス田開発の条約交渉再開で両国が合意したという記事を配信しており、中国側はこれを問題視した可能性が高い。外務省は同社に訂正を求めたという。
福山副長官は「ガス田問題に合意したという報道が流れているが、それは事実ではない。根拠のない報道で首脳会談がキャンセルになったとしたら遺憾だ」と語った。
日中両国はこの日に首脳会談を開き、来月13、14の両日、横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での胡錦濤中国国家主席の訪日へ向けた環境整備を進めようとしていた。