2010年12月28日8時19分
【広州=小林哲】物理学の最大のなぞの一つで、見つければノーベル賞級の成果となる暗黒物質の観測に、中国の研究チームが本格的に乗り出すことを決めた。暗黒物質は地球や我々を作る普通の物質の数倍は存在するのに正体は不明。米欧や日本が初検出にしのぎを削るなか、中国は四川省山中の厚さ2千メートル超の岩盤下に「世界最深」の実験室を設けて、競争に参入する。
現地紙によると、実験室は、四川省涼山イ族自治州で水力発電ダムの建設用に掘られた錦屏山トンネル(長さ約18キロ)内に設置された。実験室を厚さ約2400メートルの岩盤下に置くことで観測のじゃまになる宇宙線の影響を排除する。中国中央テレビは「米欧日に地下実験室があるが、深さ2千メートル以上の好条件はほかにない」などと報じた。
観測には清華大と上海交通大のチームがそれぞれ参加。清華大は、極低温下で半導体を用いて暗黒物質のわずかな痕跡を感知する検出器を設置。上海交通大は、米国で活躍する著名な中国人研究者をリーダーに引き抜き、清華大とは別の方法で挑戦する。
宇宙の成分は、暗黒物質が23%、ダークエネルギーが73%、普通の物質はわずか4%と考えられ、超高感度のセンサーを使った観測競争が過熱している。日本も東京大が岐阜県・神岡鉱山跡に新たに設置した施設「XMASS(エックスマス)」で来春にも観測を始める。