来年4月7日の任期満了に伴う広島市長選をめぐる情勢に進展がみえない。4選を目指すとの見方が強い秋葉忠利市長(68)は態度を明らかにしていない。「打倒秋葉」を掲げる自民党系市議は候補擁立に奔走するが、めどが立たぬままの越年が濃厚だ。広島五輪構想への賛否も交錯する中、大半の政党が秋葉市長との「間合い」をつかみかねている。
「最後には岸田さん自身が出る方法もあるのではないか」
今月中旬、自民党広島県連の岸田文雄会長(衆院広島1区)の事務所に同党の中堅、若手市議が集まった。市長選への対応を話し合う中でそんな発言が市議から飛び出した。市長選まであと4カ月。候補を探しあぐねる党へのいら立ちがにじんだ。
岸田氏は発言を受け流し、市議と連携し候補を探すことを確認した。会合に出た市議は「平和偏重の行政や五輪騒動の市政には経済界や市民の不満が募っており、勝負になる。今こそ党が本気で動く時だ」と注文する。
秋葉市長が初当選した1999年以降の市長選で、自民党の推薦候補は落選を続ける。過去3回の選挙戦に共通するのが、自民党系の一部市議が別の候補を支援し、分裂選挙となった構図だ。いずれの市長選も推薦、一部支援の両候補の得票合計は、秋葉市長の得票を上回っていた。県連幹部は「一枚岩になれないのが最大の敗因」と言い切る。
複数の自民党系市議によると、これまで地元民放関係者や前衆院議員に打診したが、断られた。市内の大学教授や経済人にも接触しているが、好感触は得られていない。あるベテラン市議は「現職は抜群の知名度がある。ただでさえ手ごわいのに、前回次点の候補まで出るとなれば大抵は尻込みする」と言う。
前回、自民党推薦の元参院議員を上回る票を得た元市議の大原邦夫氏(61)は10月に立候補を表明した。ミニ集会や街頭演説を繰り返し、五輪構想など秋葉市政への批判のボルテージを上げる。大原氏は「市民の批判の声が多く届けられている」と手応えを語る。
一方、民主党は菅政権の迷走もあり、全国の地方選で苦戦を強いられている。19日に南区での幹事会終了後、党県連の三谷光男代表(衆院広島5区)は独自候補を擁立するかどうか1月に判断するとした。ただ、市議選候補の擁立に苦心する現状に、市議会では「そんな力はあるのか」との声が漏れる。
民主党の最大支持組織である連合傘下の労組幹部は「最近は強引な市政運営が目立つ」と述べ、秋葉市長への不満も示す。連合の対応について「応援を表明した前回と同じようにはいかないだろう」と話す一方で、明確な方針を打ち出せているわけではない。
各政党の対応も定まっていない。公明党県本部は「候補者が出そろってから対応を判断したい」。共産党県委員会は「候補者を擁立するかどうかを含め、連携する市民団体と協議中」と説明する。
社民党県連合は「候補者の状況がはっきりしておらず、判断する段階ではない」。みんなの党県広域第1支部は「県議選や市議選に全力を注ぐ。推薦も含め市長選の対応は考えていない」とする。
広島市長選には、横浜市の執筆家荒木実氏(67)も立候補を表明している。
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