異物混入:今度は「ネズミ入りパン」(下)

食品への異物混入、なぜ後を断たない?

微々たる補償規定、消費者・メーカーとも不満

 食品業界は「事の真偽にかかわらず、騒動になった瞬間からメーカー側が被害者になるため、こうした事件が起きた場合には、何が何でも阻止しようと考えるしかない」と嘆く。だが、消費者の主張は違う。購入した食品から異物が出て精神的なショックを受けても、製品を交換すればいいという程度に考える企業が多いという。

 公正取引委員会の消費者紛争解決基準によると、食料品に異物が混入・腐敗・変質していた場合、該当メーカーは該当製品を交換または返金するよう規定している。そして、消費者が身体上の被害を受けた場合は、治療費や関連経費などを補償しなければならない。しかし、「金銭的な補償以外に刑事罰などの制裁がない処罰規定では、食品メーカーにとってほかの製品や商品券を提供する程度で事件の解決を図れる」と専門家は指摘する。

 米国では、製造物責任法が厳格に適用されている。事故に対する予防措置を適切に行っていない企業に対しては、多額の損害賠償を請求できる。このため該当企業は、問題がさらに大きくなる前に、自発的にリコール(自主回収)措置を取ったり、被害補償に積極的に取り組んでいるという。

 梨花女子大学食品工学科の呉尚錫(オ・サンソク)教授は、「食品問題が発生した時の補償基準を、製品の包装紙などに事前に記載するのも一つの方法」と話す。

 専門家は、「異物混入騒動の悪循環を断ち切るには、食品医薬品安全庁・消費者保護院などの政府機関が、事件を公表するかどうかの判断から、事実関係の調査・補償までを決めるシステムを設ける必要がある」と強調する。

 被害を受けた消費者が該当食品メーカーに直接接触し、金銭的な補償を受けるだけで終われば根本的な解決にはならず、同じ事件が繰り返される可能性があるためだ。逆に、「ブラック・コンシューマー」が中立的な機関を経由せず、一方的にインターネットなどに「異物混入事件」をでっち上げれば、該当メーカーは多大な被害を受ける。

 市民団体「緑色消費者連帯」のイ・ジュホン政策部長は、「メーカーに対する規制と共に、ブラック・コンシューマーの一方的なでっち上げに対しても、さらに強い対応が必要だ」と話している。

金徳翰(キム・ドクハン)記者

洪源祥(ホン・ウォンサン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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