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劣化する政治と官僚機構

2010年12月28日0時0分

 この一年を回顧すれば、ますます衰退する経済を阻止し、復活させるべき政治がむしろその悪化を加速させたといえる。利権誘導型の自民党と官僚の支配を脱すべく政権交代をした民主党自身が、バラマキ政党であることのみならず、公務員や教職員、民間の労組という新たな利権団体の政党であることが明らかになった。

 加えて、官僚機構の疲弊がますます明白になった一年ともいえる。その主なものは、まず特捜検事の証拠捏造(ねつぞう)とその上司の隠蔽(いんぺい)事件。これは、行政機構で聖域とされてきた検察庁でさえ制度疲労を起こしていることを白日の下にした。利益相反である身内による逮捕は、組織の制度設計の欠陥であり、検事総長の退任で幕引きを図れるものではない。

 次に、尖閣での漁船衝突ビデオの流出事件と、警察の機密漏洩(ろうえい)事件。リークビデオがきわめて容易にネットに流れるIT時代にもかかわらず、行政には「知らすべからず」という強権的な発想が抜けない。さらに、約2カ月後にようやく情報漏洩を認めた警察の振る舞いは、卑怯(ひきょう)で未練なというしかなく、この結果、警察の協力者を危険にさらし、友好国の不信と非友好国の侮りを受けてしまった。

 さらに、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)では、利害を異にする省庁が全く相反する予測値を出した。過去に楽観的過ぎる予測値でダムなどを乱造して血税を浪費し、この国の生態系を破壊してきた官僚機構の体質は変わらず、その罪は深い。

 国内向けにしか強気の発言が出来ず、国民を害し、官僚と利権集団を守る「引きこもり」政権があと3年も継続すれば、日本経済の衰亡は計り知れないだろう。(六菖)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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