愛知県東浦町の土手の草むらで名古屋市瑞穂区の安立キリ江さん(72)の切断遺体が見つかった事件で、県警半田署特別捜査本部は12日未明、安立さんと同居していたアルバイトの男(66)が事件に関与した疑いが強まったとして死体遺棄と死体損壊容疑で逮捕状を取った。未明に逮捕する。男が発覚を遅らせるため遺体を捨てたとみて追及するとともに、殺人容疑も視野に調べる方針。
男は9日夜、瑞穂区の自宅アパートの室内で、安立さんの遺体の頭部と両脚を切断。遺体を布団カバーのような袋に入れ、東浦町森岡の五ケ村川西側の土手の草むらに遺棄した疑いが持たれている。
特捜本部は11日、男から事情聴取するとともに、切断現場のアパートを現場検証した。近くの住民らによると、安立さんと男は約10年前、アパートへ一緒に引っ越してきたという。
一方、司法解剖の結果、遺体の頭部は鋭利な刃物、両脚の骨はノコギリのような目の粗い刃物で切断されたとみられる。遺体は死後1~2日経過しており、特捜本部は死亡後に切断されたとみているが、死因は特定できなかった。
事件は10日午後4時ごろに発覚。袋にくるまれた安立さんの遺体が見つかり、頭部と両脚が切断されていた。特捜本部は11日朝から現場を実況見分し、凶器などの遺留品や頭部、両脚を捜している。【山口知、稲垣衆史】
「仲の良い『夫婦』と思っていたが……」。愛知県警が死体遺棄容疑などで逮捕状を取った男を知るアパート周辺の住民らは、一様に驚きを隠せなかった。
男は近所でパチンコや競艇などギャンブル好きとして知られていた。同じパチンコ好きの安立さんと2人で、仲良さそうに歩いてパチンコに行く姿が度々目撃されていた。
同じアパートに住む男性会社員(70)によると、男は警備業の仕事をしており、毎朝午前6時ごろに制服姿で自転車に乗って出勤していた。最後に男と会ったのは9日夜。県警の司法解剖の結果、10日午後に発見された遺体は死後1~2日とみられるため、死亡の前後の時期にあたる。アパートの前で、男は男性に「こんばんは」と威勢良くあいさつしたという。
この男性は7~8年前からアパートに住んでいるが、安立さんと男が言い争う声や大きな物音などは聞いたことがないという。
近くに住む無職の女性(63)によると、安立さんは男のことを「だんな」と呼んでいた。安立さんのアパートの隣の民家に住む無職の男性(68)は「10年ほど前から2人を知っているが、仲むつまじい夫婦という印象でした」と話した。【沢田勇、高木香奈】
毎日新聞 2010年12月12日 中部朝刊