会見で涙を見せる細貝=27日午後、大原サッカー場 |
ドイツ1部のレーバークーゼンに完全移籍することが決まった浦和の日本代表MF細貝萌(24)が27日、大原サッカー場クラブハウスで記者会見し、「(移籍は)苦しい決断だった。6年間、浦和で育ててもらって感謝している。いつか浦和のサポーターや関係者らに恩返しできるように結果を残してきたい」と終始、涙を浮かべながら新天地での活躍を誓った。
レーバークーゼンは今季リーグ戦で17試合を終え、3位の強豪。細貝は移籍と同時に、同2部のアウクスブルクに期限付き移籍し経験を積む。夏すぎにレーバークーゼンから獲得の意思が伝えられたという。
細貝は前橋育英高(群馬)から2005年に浦和入りし、主に守備的MFとしてプレー。9月に日本代表に初選出され、国際親善試合のパラグアイ戦でデビューした。フル代表は通算3試合に出場し、来年1月のアジア・カップ(カタール)日本代表にも選ばれている。
「恩返ししたい」 一問一答
海外移籍の夢をかなえた細貝。浦和で結果を残せなかった悔しさをにじみ出しながらも、ドイツでの成長を力強く誓った。
−移籍を決めた理由は。
「昔から海外に行きたいと思っていた。浦和にはわがままを言って毎年、単年契約にしてもらってきた。今回オファーをもらう形になって、行きたいと思った。日本とは違う厳しい環境でサッカーをしたいと思った」
−苦しい決断とは。
「浦和から海外に行った選手たちがいるが、自分は浦和で結果を残すことができなかった。そういう状態で浦和を離れることはすごく悔しい」
−レーバークーゼンから高い評価を受けていると思うが。
「移籍と同時にアウクスブルクへのレンタル移籍の話ももらった。レーバークーゼンの中盤の選手の能力は高く、今は試合に出るのは厳しいと言われたので、アウクスブルクでしっかり結果を残して、良いサッカー選手になれるようにしたい」
−良い選手とは?
「日本代表で活躍し、ヨーロッパで活躍できる選手になりたい」
−どこを評価されたと思うか。アピールしたいところは。
「ヘディングが強いということと、ボランチの選手として評価していただいた。球際でしっかり負けないように激しくぶつかっていきたい」
−当面の目標は。
「試合に出ることがレベルアップになる。少しでも早く試合に出られるようにしたい。レーバークーゼンでプレーするためにもアウクスブルクでしっかり試合に出たい」
−浦和で得たものとやり残したことは。
「自分が試合に出始めるようになって良い結果を残すことができなかったが、プロとしての一歩を踏み出したチーム」
−浦和で忘れられない思い出は。
「忘れられないのは毎日。たくさんの人が常に自分を支えてくれた。向こうに行って良い選手になって恩返ししたい。もしも将来、レッズが僕を必要としてくれるなら戻って来たいと思うし、必要だと言われるような選手になりたい」
絆を胸に 涙の決意
涙、涙の会見だった。細貝は自分が試合に出るようになってから、チームの結果が出なかったことに責任を痛感しているようだった。本格的にリーグ戦に出場するようになった2008年以降、チームはタイトルを獲得できなかった。その話題に話が及ぶ度に声を詰まらせ、涙を浮かべた。
「向こうで良い選手になって、いつか今度こそ、みんなから期待されるような選手になりたいと思う」。自らに言い聞かせるように、言葉に力を込めた。
共に戦ってきたチームメートの話になると再び涙。特に今季限りで浦和を退団するポンテには、深く感謝していた。移籍の話が持ち上がった当時は、ほかの選手に相談できず、レーバークーゼンでかつてプレーしたポンテにだけ話をしたという。
ポンテは細貝に向け長文のメッセージをくれたという。「俺とハジ(細貝)はこれからもずっと友達。この先もずっとハジのプレーを見ている。ドイツに渡ることで必ずいい選手になると信じている」。2人とも別々の道を進むが、浦和で培った絆は消えない。
細貝の目標は、はっきりしている。「日本代表で、ヨーロッパで活躍できる選手に」。視線の先には次のワールドカップ(W杯)ブラジル大会がある。仲間の思いとファンの期待を胸に、24歳は必ず大きくなって戻ってくる。