福岡県太宰府市で乗用車と衝突したワゴン車が池に転落し計7人が死亡した事故で、救助にあたった筑紫野太宰府消防本部(同県筑紫野市)の隊員2人が26日、毎日新聞の取材に応じた。池の中の視界不良と寒さのため、1人目の引き上げに現場到着から約1時間を要するなど生々しい救助の状況を語った。
中嶋幸博・指揮隊長(59)と本田豊章・救助隊長(37)によると、救急隊が到着した24日午後11時50分ごろ、ワゴン車は既に沈んでいた。隊員1人が隊員服のまま水温5度の池に飛び込んだが、自分の手も見えないほど視界が悪かった。本田救助隊長は「視界はほぼゼロ。救助には過酷な状況で、隊員も唇を紫にして全身を震わせていた」と語る。
ワゴン車の状況が確認できないため、水深がより浅い道路側にウインチで引き寄せて救助することにした。生後6カ月の男児を引き上げたのは到着から約1時間後。ぐったりして意識はなかったという。その後4人を救助したが、寒さで20分おきに隊員を交代させながらの作業となった。
中嶋指揮隊長は「車を引き寄せる前に救助できたら一番良かったが、視界不良と寒さのため断念せざるを得なかった」と無念さをにじませた。
事故は24日午後11時40分ごろ、太宰府市向佐野4の県道で、筑紫野市方面から福岡市方面に走行していたワゴン車と乗用車が衝突。ワゴン車は道路脇の池に転落し、乗っていた9人のうち男児を含む6人が死亡。残る3人は自力で脱出した。乗用車の男性も池から救助されたが死亡した。【関谷俊介】
毎日新聞 2010年12月27日 0時54分(最終更新 12月27日 1時05分)