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福岡・太宰府の車衝突転落:祖母悲痛、肩落とす 生存者、友失い終始無言

 ◇「進学決まってたのに」

 福岡県太宰府市でクリスマスイブの深夜、ワゴン車と乗用車が衝突し、ワゴン車が池に転落して乳児を含む男女7人が死亡した事故は、楽しいはずのイブのイベントに胸を躍らせていた若者たちを一瞬にして冷たい水の底に突き落とした。生存者は友を失った衝撃に言葉もなく、就職や進学に夢を膨らませていた高校生らの家族や関係者らは、冬休みを暗転させた突然の惨事にぼうぜんと立ちすくんだ。【丸山宗一郎、遠藤雅彦】

 亡くなった7人のうち、末吉泰子さんの祖母(80)は、昼のテレビニュースで事故を知ったという。「今年の正月に会ったきりだけど、明るくて活発ないい子だった。専門学校への進学が決まっていたのに……」と肩を落とした。

 佐藤慎一郎さんの祖母ミツヨさん(77)は24日夕、出かけようとした佐藤さんに「ようっと顔ば見せていかんね」と語りかけると、慎一郎さんは振り返った。ミツヨさんは、その表情を胸に刻んだ。「虫の知らせだったんですかね」。佐藤さんは、ミツヨさんの山仕事を手伝い、切り出した杉を運搬車に積み込んでいたという。「やんちゃでしたが心の優しい子。悲しすぎて涙も出てきません」

 一方、池に落ちたワゴン車から自力で脱出した堀川達也さんは25日昼過ぎ、事情を聴かれた福岡県警筑紫野署から帰宅した。父親によると、この間、車の中では、堀川さんは終始無言でうつむいていたという。父親は「本人にけがはなかったが、仲間を失ったショックが大きいようで、私たちも事故のことは何も聞けないんです……」とやつれた表情で話した。

 ◇「始業式で再会約束したばかり」 八女農業高、苦渋の会見

 生徒3人が亡くなった福岡県八女市本町の県立八女農業高校(457人)は25日午前、教職員47人を集めた緊急職員会議で対応などを協議した。午後からは高山謙一校長(58)と待鳥(まちどり)順二教頭(55)が記者会見。高山校長は「冬休みのいい思い出を作り、1月11日の始業式で再会しようと約束したばかり。非常に残念。取り返しのつかないことになった」と動揺した様子で話した。

 待鳥教頭によると、亡くなった3人は仲良しグループ。井手さんは同県広川町の病院に看護助手として就職が決まっていた。末吉さんは航空業界への就職を目指し、福岡市の専門学校へ進学するはずだった。石原さんは歯科医院の助手を希望していたという。

 同校では、24日の終業式では、深夜の出歩きや生徒同士での旅行を慎むよう注意していた。27日朝、全生徒を登校させて事故を報告し、交通安全などについて改めて注意喚起。臨床心理士による生徒の心のケアも予定している。【松尾雅也】

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 ◆事故に遭った方々(敬称略)

 【死亡】<ワゴン車>井手綾美(17)=福岡県八女市黒木町木屋▽石原瞳(18)=同県久留米市荒木町藤田▽末吉泰子(18)=同県筑後市山ノ井▽佐藤慎一郎(18)=八女市黒木町大淵▽山本翔(18)=同市黒木町湯辺田▽山本悠斗(生後6カ月)=同<乗用車>秦智之(26)=同県太宰府市青葉台4

 【救助された方】<ワゴン車>山本佑紀(18)=八女市黒木町湯辺田▽木村光志(18)=同市黒木町本分▽堀川達也(18)=同市黒木町大淵

毎日新聞 2010年12月26日 西部朝刊

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