マンUの放映権料で、レッズと鹿島、ガンバが買える??

UEFAのリーグランキングでトップの座にあるプレミアリーグは、別格の存在です。特に“マンU”の愛称で親しまれる「マンチェスターユナイテッド」は、世界のサッカークラブのなかでも高い資産価値を有するクラブとして有名です。米国の経済誌「フォーブス」の「2010年版サッカークラブ経済価値番付」では、6年連続No.1の座を獲得するほどです。

マンUの2008-09シーズンの売り上げは2億7850万ポンド(約419億円※2)。内訳は、入場料収入が39%(164億円)、放映権料が36%(150億円)、グッズ販売などが25%(105億円)となっています。

放映権料だけで150億円の収入があるなんで、恵まれたクラブですね。Jリーグで最も成功している浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)でさえ、売り上げは71億円。マンUの6分の1でしかありません。浦和レッズ、鹿島アントラーズ(41億円)、ガンバ大阪(44億円)の売り上げを足して、ようやくマンUの放映権料に届くなんて、なんともうらやましい限りです。


さて、その放映権料はどのように受け取るのでしょか? 配分方法は各国で異なりますが、プレミアリーグの場合、一度協会にお金が入り各クラブに配分されます。その基準は、50%は各クラブ均等に、25%はリーグ終了時の順位に応じて、そして残りの25%はテレビ放送された試合数に従って配分されます。そのため、2008-09年の最下位チーム「West Bromwich Albion FC」(ウエスト・ミットランド州)でも、3109万ポンド(約47億円)もの放映権料を受け取ることができるのです。ちなみに、2008年のJリーグ全体の放映権料収入は53億円です。

プレミアリーグ発足時(1992年)、マンUの売り上げはJリーグと同等規模の36億円でした。それが18年の間に12倍近く伸びました。当然、スタジアム整備やスター選手の獲得など、様々な先行投資が行われたことはいうまでもありません。しかし、過度な投資に、サッカー・バブルを懸念する声も高まっています。  UEFA会長を務めるミシェル・プラティニ氏も警鐘を鳴らしている1人です。なぜならプレミアリーグの負債は35億ポンド(4550億円)に達し、欧州サッカー市場の負債全体の56%を占めるまでに至ったからです 。

サッカーを愛する一人としては、ギリシャの財政問題が欧州経済、いや世界経済を混乱させたように、プレミアリーグの財政問題が世界のサッカー市場を混乱させる引き金にならないことを切に願うばかりです。

※1 2008年の平均為替換算:ユーロ:153.94円 ポンド:196.50円 ドル:104.46円
※2 2009年の平均為替換算:ユーロ:131.70円 ポンド:150.35円 ドル:94.57円

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清宮 浩一(きよみや ひろかず)

スポーツジャーナリスト。清宮地域総合計画室代表取締役社長。 1962年埼玉県浦和市生まれ。中央大学理工学部土木工学科卒業後、建設コンサルティング会社、国際文化交流事業団体活動(英国派遣)、コミュニケーション・デザイニングを経て95年清宮地域総合計画室を設立。官公庁のコミュニケーション戦略の企画立案、調査研究事業やスポーツ・観光を核とした地域づくりなどを担当。著書に『スポーツ生活圏構想』(厚有出版・共著)、『スポーツ経済効果で元気になった街と国』(講談社・共著)」など。