きょうの社説 2010年12月27日

◎誘客へ外国人活用 「もてなし」の有力な味方に
 石川県などは来年から、大学などに通う留学生ら県内の在住外国人を活用した海外誘客 に力を入れる。在住外国人による電話での3者通訳サービスや、留学生らが本国向けに書くブログでの観光情報発信などを始め、海外からの観光客の受け入れ態勢を強化する狙いである。

 県は海外誘客50万人を目指す「海外誘客10倍増構想」を掲げており、実現に向けて 地域を挙げた取り組みが求められている。石川に暮らして、魅力を知っている在住外国人は海外誘客を促進する人的資源であり、多くの協力を得ながら石川の「もてなし力」を向上させたい。

 3者通訳サービスは、在住外国人が観光客とホテルや旅館の接客係との間に入って、会 話を手助けする仕組みである。県が民間会社に委託する形で、順次対応できる外国語を増やしていく予定である。飲食店や土産店、ゴルフ場などでも需要があるとみている。石川を訪れる外国人旅行者が不便さを感じている点に外国語の表示や案内の整備状況が挙げられている。通訳サービスを含めて、個人旅行者でも安心して、快適に旅行できるサービスを拡充していく必要がある。

 ブログによる情報発信は、外国人ならではの視点で石川の魅力を紹介してもらう。若い 世代を中心に、旅行先を決める際のブログや口コミの影響力は大きいという。歴史や文化、温泉、自然などの数多い石川の観光資源のなかでも、特に本国の人々が関心、興味を持ちそうな点を大いに発信してほしい。ブログによって石川の魅力が掘り起こされ、新たな観光プランが生まれる可能性もあるだろう。

 県内には1万人を超える外国人が在住しており、留学生は金沢を中心に約1800人に 上る。誘客を後押ししてくれる有力な味方として、さまざまな分野でそのアイデアを活用していきたい。

 県内の自治体では北陸新幹線の金沢開業に向けて、通訳ガイド養成や多言語の案内表示 などの改善を進めている。在住外国人の目線から見た要望や改善点も反映して、きめ細かい受け入れ態勢を整えてほしい。

◎来年度予算案 公約破綻が鮮明になった
 来年度政府予算案は財源探しに終始した編成過程の混迷ぶりをみれば、民主党政権のマ ニフェスト(政権公約)が破綻したことを一層鮮明にしたといえる。予算編成を終え、政府内からは消費税の早期増税への言及もみられるが、その前に公約を抜本的に見直し、実現不可能な政策は思い切って撤回するのが筋である。

 硬直化した歳出構造に切り込み、予算を大胆に組み替えて財源を捻出する。民主党が一 から手掛ける今回の予算編成は、そうした改革の一歩になるはずだった。だが、ふたを開ければ不発に終わった印象が強い。国家公務員の総人件費2割削減や国会議員定数削減など、わが身を削る改革も手つかずのままである。積み残した課題の多さを考えれば、もうお手上げとばかりに増税に逃げ込むのはいささか早すぎるのではないか。

 子ども手当は3歳未満が1万3千円から2万円に増えたが、今の財政状況では満額の2 万6千円まで上げるのは極めて困難である。今回の措置も1年限りであり、先の見えない制度では少子化対策としての効果は期待しにくい。

 高速道路無料化では、平日上限2千円の新たな制度が導入されるが、この仕組みが無料 化にどのように結びつくのか分からない。すでに公約は有名無実化しているとの指摘は民主党内にもある。実現の展望が見いだせないのなら、白紙に戻すのが政権党としての責任ある態度である。

 北陸などの自治体が新幹線建設への活用を求めた鉄道建設・運輸施設整備支援機構の利 益剰余金は大半が年金財源の穴埋めにされた。目先の財源確保に追われるうちに財務省に主導権を握られた予算編成を象徴する例といえる。

 成長戦略や公約に沿った「元気な日本復活特別枠」も、在日米軍駐留経費負担(思いや り予算)など従来の政策を付け替えるケースが相次ぎ、看板は大きく色あせた。内閣支持率が急落し、官僚に足元を見透かされては既存の仕組みを大胆に変えることは難しい。真の予算改革は政権がよほど安定しないと実現できないことをあらためて思い知らされる。