第33政策提言
「外国人受入れの展望と課題」
第4回政策委員会メモ
第33政策提言「外国人受入れの展望と課題」に関する第4回政策委員会が下記の要領で開催された。なお、事前に配布された提言最終案は、伊藤憲一政策委員長が平林博および井口泰の両提言起草委員と協議してとりまとめたもの。また、同最終案に対する欠席政策委員からの「コメント」が席上配布された。
1. | 日 時: | 2010年9月28日(火)午後2時より午後4時半まで |
2. | 場 所: | 日本国際フォーラム会議室 |
3. | 出席者: | 平林博提言起草委員、井口泰提言起草委員を報告者に迎え、伊藤憲一政策委員長他政策委員16名が出席 |
4. | 審議内容 |
(1)政策委員長および提言起草委員の冒頭発言
冒頭、伊藤憲一政策委員長より「前回(第3回)政策委員会の後、タスクフォース(井口泰主査)体制が解散され、新たに平林博・井口泰両政策委員からなる提言起草委員体制が組織され、その体制下で本提言最終案が起草された」との説明があり、その後事務局より提言最終案の抜粋が朗読された。
ついで、井口提言起草委員より「本『最終案』は、自分が起案した原案と平林提言起草員のご意見とを伊藤政策委員長がうまくとりまとめられたものであり、感謝したい。本提言の主要な柱である『選択的移民政策』という概念は、サルコジ仏大統領が掲げる独特の含意をはらんだ同名の政策とは区別され、『移民政策は選択的に行う』というストレートな意味に定義されている。永住外国人への地方参政権付与に関しては、政策委員の間で『明確に反対すべきだ』との意見が少なくない中、『慎重な議論が必要』との表現に留めたのは、評価したい」との補足説明が、また、平林提言起草委員より「外国人受入れ全般の基準や目的については、経済的・社会的な必要性のみならず安全保障上の観点にも配慮するようにした。他方、実際に受け入れた外国人に対しては、社会的統合の観点からも手厚く処遇すべきだとの観点をとった。永住外国人への地方参政権付与については、憲法及び政治的観点から消極的な提言としたが、敢えて断定せずに慎重な議論が必要ということにした」とのコメントがなされた。
(2)政策委員間の審議
つぎに、出席した政策委員間で審議が行われたが、その要点はつぎのとおりであった。
(イ) 「はじめに」について
「冒頭に『東アジア経済は、域内のネットワークをダイナミックに再編しながら』とあるが、このネットワークに日本が入るのか入らないのかを明確にすべきではないか。なぜなら、そのことによって日本がこのネットワークを通じて域内の人の移動を促進すべきかどうかのトーンが変わってくるからだ」、「第8段落に『外国人受け入れ拡大とそのキャリア形成の支援が必要』とあるが、対象となる『外国人留学生』が単なる経済難民的留学生ではないことを明確にするために『外国人留学生』の前に『優秀な』という形容詞を挿入すべきではないか」、「最終段落に『家族呼び寄せは、国際条約で保障されている権利です』とあるが、具体的にどの条約が根拠になっているのか、我が国はその加盟国なのか、不明である。この一文は削除したほうがよい」などの意見が述べられた。
(ロ) 「政策提言」について
@提言3について「『不熟練労働者の受入れは今後とも禁止する一方・・・』とあるが、本提言の全般的なスタンスを誤解されるおそれがあるので、『禁止』ではなく『慎重』という言い方にとどめるべきではないか」、「現在、すでに日本にいる外国人労働者の多くが不熟練労働者であり、彼らなくしては中小企業の経営が成り立たない現実がある以上、彼らの受け入れこそが、重要ではないか」、「国内労働人口の減少を理由に外国人労働者の受け入れを推進するというロジックは安直にすぎる。むしろ、女性の労働市場への参加・拡充や生産性の効率化といった日本独自で達成可能な対応策についても考えるべきではないか」などの意見が述べられた。
A提言4について「『日本で新たに外国人有資格者を養成する仕組を導入すべき』とあるが、日本のみならず海外、とくに送り出し国でも外国人有資格者を養成できる仕組を導入すべきではないか」などの意見が述べられた。
B提言5について「『在留管理に関する関係条文を拡充し・・・』とあるが、関係条文の『拡充』によって外国人の受入れが拡大されるかのような誤解を与えかねない。ここは『整備』くらいでよいのではないか」などの意見が述べられた。
C提言7について「『わが国では、外国人労働者の雇用・労働条件は、労働関係法令と出入国管理関係法令のダブル・スタンダードの状態が続いており・・・』とあるが、たしかにこれら2つの法的枠組みは存在しており、その間の整合性は不十分ではあるものの、『ダブル・スタンダード』とまでは言いきれないのではないか」などの意見が述べられた。
D提言9について「『永住外国人への地方参政権の付与』に関し『慎重な議論が必要』とあるが、やはり『慎重な議論』ではなく、はっきり『ノー』と言った方がよい。そのことが、本提言のひとつの真価となるはずだ」、「この問題に関しては、イエスかノーかの二分法ではなく、各地域での外国人の人口比を一定の限度内に制限した上で地方参政権を付与するという方法も考えられるのではないか」、「『外国人が日本国籍を取得する条件を整備し』とあるが、日本国籍取得のプロセスはすでに相当程度整備が進んでいる。さらに、国籍取得の『プロセスをいっそう透明化』するとあるが、これでは外国人に日本国籍取得の裏道を提供することにもなりかねず、反対だ」などの意見が述べられた。これらの意見に対し、井口提言起草委員より「外国人参政権問題は、微妙な問題であり、その表現には特別の配慮をしてほしい」などの意見が述べられた。これに対して、伊藤政策委員長より「提言9の取り扱いについては、政策委員長に一任願いたい」旨発言があり、全出席政策委員により了承された。
(ハ) 提言全般について
「本提言は、外国人の『労働者』をもっぱら対象としており、『政治難民』や『第三国定住者』への言及が全くないが、日本は人道的な観点からも彼らに支援をも行うべきであり、こうした問題にも言及すべきではないか」「難民や政治亡命者は、それ自体が1つの提言テーマとなり得る大問題であるので、『この問題については別途提言したい』といった文言を挿入するに留めておくべきではないか」などの意見が述べられた。
(3)政策提言最終案の採択
すべての審議を終えたあとで、伊藤政策委員長より、当フォーラム寄附行為細則第5編第4条第1項「政策委員会は、出席政策委員の3分の2以上の賛成がなければ、政策を提言することが出来ない」に基づき、上記の政策委員間の審議内容を踏まえて必要な修正を加えることを前提として、「提言最終案」の採否を議場に諮ったところ、議場は満場一致でこれを承認した。また、政策委員長によって最終的に確定された提言全文は、改めて各政策委員に送付されること、署名の有無はその時点での各政策委員の最終判断によること、などが確認された。
(文責在事務局)