事業仕分け:「公共事業」特会を廃止 スーパー堤防も

2010年10月28日 22時7分 更新:10月29日 0時56分

社会資本整備事業特別会計(3兆1933億円)の仕組み
社会資本整備事業特別会計(3兆1933億円)の仕組み

 政府の行政刷新会議(議長・菅直人首相)は28日、道路や港湾整備などの公共事業を行う「社会資本整備事業特別会計(特会)」や「年金特会」など3特会を対象に事業仕分け第3弾2日目の作業を実施した。国土交通省が所管する社会資本特会は「特会があることで、ずさんな需要予測による無駄な事業を続けてきた」と指摘し、廃止して一般会計化すべきだと判定。200年に1度の大洪水に備える「スーパー堤防事業」も「廃止」を求めた。無駄な事業の温床とされる特会の抜本見直しを迫る内容となった。

 「『スーパー無駄遣い』ということで廃止にします」。スーパー堤防事業について、仕分け人の緒方林太郎衆院議員が「廃止判定」を読み上げると、満席の傍聴席から大きな拍手が起こった。

 同事業は87年に開始され、利根川など6水系に計6943億円を投入。しかし、地元住民の反対などで計画の5.8%しか整備が進まず、このままでは完成は400年後。総事業費は12兆円に上る。国交省の津川祥吾政務官も「既存の堤防強化のほうが現実的だ」と、判定に従うしかなかった。

 仕分け人が特に厳しく追及したのは、費用に見合った効果があるのかという点だ。同省幹部はスーパー堤防の防災効果について「効果は把握していない」と繰り返すばかり。見積もりの甘さはすべての公共事業に共通し、この日の議論では、07年以降の道路事業274件で費用が当初予定を上回り、5.1兆円もの追加支出を余儀なくされた実態が判明した。港湾でも想定したコンテナ取扱量を上回ったのは126港中16港のみで、仕分け人の長妻昭前厚生労働相は「コストを低く見積もり、後で予算が膨張している。小さく生んで大きく育てるのが公共事業だ」と皮肉った。

 仕分け人が一般会計化を迫った背景には、「特会があることで(支出が固定化して)金がジャブジャブ出ていく」(長妻氏)との問題意識がある。仕分け判定では、社会資本特会のうち空港使用料などの特定財源を抱える「空港整備勘定」は当面の区分経理を容認したが、「道路整備」など残る4勘定は一般会計化を求めた。ただ、同特会はこれまでも一般会計の公共事業費から資金が繰り入れられており、「国交省から財務省の財布に変わるだけ」との指摘もある。

 一方、年金特会では、加入者に年金履歴などを通知する「ねんきん定期便」事業について「早期にネットへ移行し、予算要求を3割圧縮」と判定。計7事業が「予算圧縮」となった。国債整理基金特会では、12兆円に達する積立金で繰り上げ償還(借金の返済)を検討するよう求めた。【三沢耕平、倉田陶子】

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