2006年 11月 12日
1980年代、新潟の海岸では「子供は夜遊ぶな」といわれていた
今朝の「報道2001」には、産経の古森義久氏が出演していた。ブッシュ共和党が、“予定通り”に大敗したために、この問題について、今後の産経の論調について討論するために帰国したのだろう。

(憶測開始)

「古森君、君はネオコンの共和党が実権を握っているから、産経もボルトンとかチェイニーを持ち上げていればいいといっていたではないかね」

と、住田良能社長の直電がワシントンに飛んだのだろうか?

古森氏は

「(絶句)」

(憶測終わり)

古森氏は、番組中で「日本の新聞ではブッシュはラムズフェルドを更迭したと書いているが、アメリカの新聞の世論は違う。むしろラムズフェルドはしばしば辞意を表明したが、ブッシュがこれを押しとどめていたのだから」と言っていた。

ところが、古森氏も愛読しているウォールストリートジャーナル紙面は次のような見出しが躍っている。

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Rumsfeld's Ouster Transforms Iraq Debate
Different Tack in Gulf War;
A Role for Iran and Syria?
Baker Panel Seen as Crucial
By NEIL KING JR., YOCHI DREAZEN and GREG JAFFE
November 9, 2006; Page A1

http://online.wsj.com/article/SB116303507461918025.html?mod=special_page_iraq_1

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確かに、steps downとしている記事もあるが、ワシントンポストもoustedという見出しが目に付いた。古森氏の言っていることは党派的なダメージコントロールのニュアンスが強い。

日本の報道番組は、それ独自の価値観・情勢分析を提供して、国民を騙して、世界について知らせないことを仕事にしている情報統制期間で、「閉ざされた言語空間」を作り出すシステムである。

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さて、11月11日の新聞各紙によると10日に、管義偉総務大臣は、NHKに対して北朝鮮の日本人拉致問題を重点的に放送するように、という罰則なしの「命令放送」の支持を出した。
同日の産経新聞の社説によると、この命令放送は「放送法33条」に基づくものである。

(引用開始)

(国際放送等の実施の命令等)
第33条 総務大臣は、協会に対し、放送区域、放送事項その他必要な事項を指定して国際放送を行うべきことを命じ、又は委託して放送をさせる区域、委託放送事項その他必要な事項を指定して委託協会国際放送業務を行うべきことを命ずることができる。

2.協会は、前項の国際放送の放送番組の外国における送信を外国放送事業者に委託する場合において、必要と認めるときは、当該外国放送事業者との間の協定に基づきその者に係る中継国際放送を行うことができる。

3 第9条第7項の規定は、前項の協定に準用する。この場合において、同条第7項中「又は変更し」とあるのは、「変更し、又は廃止し」と読み替えるものとする

http://www.houko.com/00/01/S25/132.HTM
(引用終わり)

命令の内容は、「国際問題に関する政府の見解」「国の重要な政策」についてのものだと産経新聞は規定しているが、私はこの条文を読む限り、中継国際放送などと書いているので、予想されない大災害、大紛争、大戦争によって、海外の一部に日本の情報が伝わるための通信機能が麻痺している場合における放送を想定しているように思える。

テレビ東京の菅谷定彦社長は「要請ならいいだろうが、命令では下手をすると大本営の宣伝になってしまう」と不信感をあらわにしたということである。私も同感である。

産経新聞でさえも、命令放送ではなく、資金援助で行うべきであるという立場で、管総務省はほぼすべてのマスコミの反対を押し切った形で命令を出した形になる。

片山虎之助参議院自民党幹事長は、命令放送という名称、仕組みを変えるという放送法改正に言及し、これに塩崎恭久官房長官も同調している。

安倍政権は、拉致問題を提起し続けることによって、数々の利益を得る立場にある。

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私の個人的経験を話させてもらうならば、北朝鮮の拉致という話題は子供も頃から大人によってさりげなく提起されていたのである。サンケイがアベック失踪事件を報じたのは、1983年(昭和55)年で、横田めぐみさんの拉致事件は1977(昭和52)年、産経新聞が横田さん拉致の実名報道に踏み切ったのは、1997(平成9)年である。

ところが、私が10才前後の時から新潟市内では「夜遅くまで海岸で遊んでいると、海の向こうから人さらいがくるぞ」と大人は話していたものである。大人としては、子供を夜遊びさせないという小言のつもりだと当時は子供たちは思っていたのだが、実際は噂として朝鮮半島からの「人さらい」について広く語られていたのだろう。

北朝鮮が正式に横田さんの拉致を認めたのが2002年。25年掛かっている訳である。いま、政治家は、拉致問題、拉致問題と騒いでいるが、当時の「都市伝説」をまともに取り上げて調査をしていたら、状況はすこしは変わっていたかもしれない。また欧州に旅行中に北朝鮮に誘われた若いカップルの事例では、拉致と言うよりは甘言で騙して誘拐したといえるものもあり、外務省が旅行者に警告を発していれば・・・と思えるものもある。

しかし、北朝鮮の元工作員の安明進という人物の証言がきっかけになって、日本政府も本腰を入れ始めた。横田さんの”遺骨”が北朝鮮によって渡されたが、日本政府の公式鑑定と別のもう一つの鑑定では、正反対の結果が出ている。

私も北朝鮮側の死亡時の状況報告は嘘であろうと思う。しかし、被害者はだからこそ口封じで殺された可能性も否定できないと思う。拉致の目撃情報は、帰国した5人の他には、例の安明進の証言以外には私は知らないのだが、私の調査不足かもしれないが、仮に安証言のみを頼りにしているならば、これはかなり不審である。イラクの亡命者がフセイン政権に都合が悪い証言をして、当てにならない大量破壊兵器話を持ち込んだということもあるし、亡命者というのは亡命先での身の安全を保証してもらうために過激な証言をするものである。

「世に倦む日々」によると、安明進氏の証言を被害者であった蓮池薫氏は否定している、とのことである。安明進さんが朝鮮労働党中央委員会直属政治学校(現金正日政治軍事大学)で蓮池薫さんを目撃したとする発言に対し、「金正日政治軍事大学にいたことはない。従って安氏にお会いしたことはない」というのが発言だった。

この記事に元になった蓮池氏の「会見」については私はソースを入手できなかったが、これを受けての安氏の報道発表文(2005年8月)が入手できた。(http://www.chosa-kai.jp/shiryou/050829.pdf)

(引用開始)

蓮池さんは、私を見たことがないと言っていますが、それは当然だと思います。たくさんの学生がいて、私はその中の一人に過ぎなかったのですから…。一方彼らは、特別な立場にありました。蓮池さんが言うように、確かに彼は「金正日政治軍事大学」にはいなかった、あるいは、私、安明進を見たことはなかった。それはそれで事実でしょう。当時の学校の名前は違っていたし、私は、多くの学生の中のワンオブゼムで、会って話しをしたわけでもありません。けれどもだからといって、彼らが実際の事実を否定することはできないはずです。私が考えるに、蓮池さんが金正日政治軍事大学にいたことを認めれば、他の拉致被害者についても話をしなければならなくなり、それを負担に思って認めたくないのだと推測しています。

http://www.chosa-kai.jp/shiryou/050829.pdf
(引用終わり)

ここは確かに安氏の言おうとしていることも分からないでもない。ただ、蓮池氏の顔をたくさんの学生のなかからなぜ安氏がrecognizeできたのか。それほどすごい工作員だったということでいいのだろうか。

また、安氏はコメントの締めくくりでさらに不思議なことを述べている。被害者たちが安氏を避け始めているというのである。

(引用開始)

私たちも蓮池さんも、北朝鮮に対して闘わなければならない立場であるのに、なぜこれ程までに私を忌避しなければならないのか? ということをお伝えしたい。以前、東京国際フォーラムであった大集会(03 年5月7日の第5回国民大集会)の時に、蓮池さんたちも出席したのですが、彼らは、私と同じ階には泊めないでくれとまで言いました。なぜそこまでしなければならないのか、と思わざるを得ません。私は、もちろん日本人だけではなくて、自国の可哀想な同胞を救いたいと思ってやっているわけですが、多くの日本人の皆さんも拉致被害者を救出しようと活動しています。私が、日本人に危害を加えようとしているならともかく、日本人も救おうとして活動しているのに、なぜ避けなければいけないのでしょうか?

http://www.chosa-kai.jp/shiryou/050829.pdf
(引用終わり)

以上の安氏のコメントを読むのは私はいまが初めてだが、これを読むだけでも、安氏と元被害者の皆さんの間に溝ができているように思える。

安氏の証言はクロスチェックを受けたのだろうか。私はいま、それが気になっている。
なぜ拉致問題の解明はただ一人の目撃証言に大きく依存しなければならないのだろう。素朴な疑問である。

by japanhandlers2005 | 2006-11-12 12:09 | Trackback | Comments(2)
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Commented by ゴンベイ at 2006-11-17 18:15 x
在日朝鮮人ジャーナリストである河信基氏のサイトも拉致問題に関して情報発信を続けているので、参考になると思います。

<河信基氏参考>
*河信基/Ha Shingi.net
www8.ocn.ne.jp/~hashingi/

Yahoo!ブログ - 河信基の深読み
blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/

*河信基 - Wikipedia
ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B3%E4%BF%A1%E5%9F%BA
河 信基(ハ シンギ、Ha Shingi、하신기、1946年 - )は、兵庫県姫路市生まれのジャーナリスト、評論家。中央大学法学部卒業。朝鮮新報社記者、朝鮮大学校講座長(主任教授)を経て、評論家に。朝鮮南北情勢を伝統や文化的特長を踏まえて深読みする分析は、慧眼と評される。...

*minow175の拉致事件と北朝鮮情勢のブログ:蓮池薫さんの写真と河信基氏のサイトについて。
blog.livedoor.jp/minow175/archives/50370353.html

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Commented by japanhandlers2005 at 2006-11-22 14:15
ゴンベイさんへ

貴重なブログ情報どうもです。面白そうなブログですね。
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