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ロシア:モスクワ暴動、緊張高まる 背景に民族対立

モスクワ中心部で、暴動の再発を警戒して警備にあたる治安部隊=2010年12月13日、AP
モスクワ中心部で、暴動の再発を警戒して警備にあたる治安部隊=2010年12月13日、AP

 【モスクワ田中洋之】若者らによる大規模な暴動が起きたモスクワで、さらなる衝突や外国人を狙った襲撃が発生する可能性があるとして緊張が高まっている。背景にはロシア系と南部カフカス系住民との民族対立があり、メドベージェフ政権は難しい対応を迫られそうだ。

 クレムリン横のマネージ広場などで11日、サッカーファンの若者らが治安当局と衝突、30人以上が負傷した。モスクワ中心部で暴動が起きたのは、02年のサッカー・ワールドカップ(W杯)日韓大会でロシアが日本に敗れた時以来。13日夜にもファンらが集まるとの情報が流れ、治安部隊が同広場一帯を封鎖、地下の大型ショッピングセンターも夕方に閉店した。騒ぎは起きなかったが、15日には市西部のキエフ駅周辺で再び集会が行われるとの情報があり、当局は警戒を強めている。

 暴動は、6日に市内でサッカーファンのロシア人男性がカフカス系の若者に射殺されたことが発端で、「カフカス系は出ていけ」など排外主義的なスローガンが目立った。ロシアのサッカーファンは過激な行動で知られるが、集会に紛れ込んだ右翼や民族主義のグループが暴徒化を扇動したとの見方が強まっている。モスクワにはカフカス地方や中央アジアからの移住者が多く流入し、ロシア系住民の間で差別や反感が根強い。殺人事件がそれに火を付けた形だ。

 モスクワでは11、12日に中央アジア出身の少なくとも3人がロシアの若者集団に襲われ死傷する事件があり、暴動に伴う民族主義の高まりとの関連が取りざたされている。

 メドベージェフ大統領は暴動を「ポグロム(集団的な迫害)であり、罪を犯したものは罰せられる」と非難。ロシアでの18年W杯開催が決まった直後にクレムリンのすぐ隣で起きた「不祥事」だけに政権は衝撃を受けている模様だ。大統領は簡易ブログのツイッターで「国内とモスクワは全てコントロール下にある」と強調したほどだ。暴動の発端となった殺人事件では警察が容疑者を釈放するなど初動捜査の誤りも指摘され、事前に予告されていた11日のマネージ広場での集会を防げなかった当局の責任を追及する声も出ている。

 在モスクワ日本大使館は13日、カフカス・中央アジア系と外見上似ている日本人が襲撃の標的になる可能性があるとして在留邦人に警戒を呼びかけた。

毎日新聞 2010年12月14日 20時13分(最終更新 12月14日 21時23分)

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