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質問なるほドリ:医療ビザ、何のためにできた?=回答・立山清也

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 ◆医療ビザ、何のためにできた?

 ◇利便性高めニーズ取り込み 受け入れへソフト面の課題も

 なるほドリ 日本で病気を治したい外国人向けのビザができるそうだね。

 記者 来年1月から導入される「医療滞在ビザ」のことですね。日本の病院で治療や健康診断を受けたい外国人は現在、主に短期滞在ビザ、通称「観光ビザ」で入国しています。滞在期間は最長90日で、原則1回しか入国できないうえ、家族や付き添いの同伴もできません。一方、医療ビザは、有効期間が最長3年、1回の滞在期間は半年で、治療に必要と認められれば繰り返し来日できます。付き添いの人の入国も認められます。経済成長と雇用拡大のため、政府が6月に閣議決定した「新成長戦略」に新設方針が盛り込まれていました。

 Q 医療ビザで成長?

 A 背景には、医療を受けるために外国に出掛ける「医療ツーリズム」が盛んになっていることがあります。日本政策投資銀行によると、タイ、シンガポールなど約50カ国が医療ツーリズムを積極的に受け入れており、08年には600万人が外国で医療サービスを受けたと推計されています。慢性疾患の治療や臓器移植、美容整形、人間ドックなどメニューはさまざまで、市場規模が06年の600億ドル(約5兆円)から、12年に1000億ドルに拡大するとの予測もあります。

 Q 日本にもたくさん海外からの患者さんが来ているんだ。

 A ところが、観光ビザを取って、治療目的で来日した外国人はこの2年間で約300人しかいませんでした。タイは年間100万人以上、韓国も09年に6万人を集めたそうです。日本政府も、「高度な診断機器を使った人間ドックや先端医療を日本で受けたい」という中国など新興国の人のニーズを取り込もうとして、医療ビザを作ったのです。温泉旅行、買い物などを組み合わせた新たな観光商品の開発の動きも出ており、医療目的での訪日外国人数は20年に年間43万人、市場規模は約5500億円に達するとの試算もあります。

 Q 医療が日本の成長の起爆剤になるかもしれないんだ。

 A でも、外国語のできる医療スタッフや通訳の配置、医療事故が起きた時の相談体制、帰国後のかかりつけ医との連携など、受け入れ拡大にはさまざまな課題があります。また、来日患者の多くは富裕層です。日本医師会は「お金をたくさん払う自由診療の外国人患者向けが優先され、保険診療の国内患者が後回しにされる恐れがある」との懸念を表明しています。(経済部)

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毎日新聞 2010年12月27日 東京朝刊

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