「WBA世界フライ級タイトルマッチ」(26日、さいたまSA)
王者・亀田大毅(21)=亀田=が、挑戦者シルビオ・オルティアーヌ(32)=ルーマニア=を2‐1の判定で下し、2度目の防衛に成功した。減量の影響で苦しみながらも僅差の勝利を手にした。今後は王座を返上して階級を上げる可能性が高く、2階級制覇を目指す。兄・興毅との“兄弟同時世界戦”は日本初だった。3兄弟の先陣を切った三男の和毅(19)=亀田=は、ピチットチャイ・ツインズジム(20)=タイ=を3回KOで下し、来年にも予定している世界挑戦へ弾みを付けた。
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過酷な減量の代償は予想以上に大きかった。「後半、足が思うように動かなかった。減量がきついと足がつるんですよね」。大毅がそう明かした通り、動きは鈍く、決定打もないまま試合終了のゴング。ジャッジ1人は8ポイント差でオルティアーヌを支持した。判定2‐1で接戦を辛くも制し、王者は憔悴(しょうすい)しきった表情で苦笑いを浮かべた。
序盤は体格で一回り上回る王者が小柄な相手にプレッシャーをかけて優勢だったが、3回から大毅の動きが鈍くなり、挑戦者の手数が上回った。8回こそ挽回したものの、9回以降も手が出ない。12回、大毅の有効打で相手が右目上をカットしたが、決め手とはならなかった。大毅は試合後のリングで「疲れました。よくないですね。相手が強かった。ボクシングは何が起こるか分からない」と謙虚に語った。
減量との闘いだった。大毅は通常の体重が60キロ以上あるが、フライ級のリミットは50・8キロ。10キロを超える減量を強いられ、今回は生まれて初めて1週間の絶食生活を送った。もはや敵は相手というよりも、「口の中がぱすぱす」になるほどの『減量』だった。
大毅は9月に坂田健史の挑戦を判定で退けた初防衛戦を引き合いに出した。「前回は後半も足が動いたのに、今回は8回から足がつり出した。最低限、勝てたからよかったけど、“減量ありき”の練習になってしまった」と反省しきり。心身ともに限界だった。既に今回がフライ級の“ラストマッチ”であると公言。来年はベルトを返上し、2階級制覇に挑むことになる。
大毅は「2つくらい上げたいな」と、バンタム級が視野にあることを明言。「(ベルトは)返上したいな。減量きついしな。オヤジ(史郎氏)らと話し合う」と言い切った。兄・興毅の3階級制覇を見届けると、「兄弟3人そろって勝てて最高や」と会心の笑み。
「9月の試合を終えてこの3カ月間が試合よりしんどかった。今はゆっくり休んで、この体を癒やしたい。次はベストの体重とコンディションでリングに上がる」と、尊敬する兄に続く覚悟を固めた。