全身の筋肉が衰えていく遺伝性の難病「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」の進行を抑え筋肉の修復を促す化合物を、財団法人大阪バイオサイエンス研究所と国立精神・神経医療研究センターが開発した。この化合物を投与し続けることで、運動能力を維持できることをイヌで確かめた。治療薬の開発につながると期待される。神戸市で開かれている日本生化学会で10日発表した。
この病気は男性だけが発症する遺伝性疾患で、男児3500人に1人の頻度で見られる。進行が早く、5~6歳ごろから車椅子を使う場合が多い。根本的な治療法は確立されていない。
大阪バイオサイエンス研究所の裏出良博研究部長(生化学)らは、損傷した筋肉の周辺に炎症を引き起こす「プロスタグランジンD2(PGD2)」という物質が多いことに着目。PGD2を作る酵素の働きを妨げる化合物を合成した。
この病気を起こしたマウスに化合物を5日間飲ませたところ、壊死(えし)した筋肉の体積が半減した。同病の兄弟犬2組でも実験。化合物を投与したイヌは約1年経過しても健康なイヌと同じくらい走ることができた。
裏出部長は「薬を服用しながらうまく筋肉を使ってやることで、長い期間自力で動けるようにできるかもしれない。1~2年以内に人間での臨床試験を始めたい」と話す。【西川拓】
毎日新聞 2010年12月10日 22時09分