対中ODA、技術協力名目に疑問 経済大国成長、政府内で温度差

2010.12.22 09:07

 仙谷由人官房長官は21日の記者会見で、中国への政府開発援助(ODA)について「無償資金協力および技術協力は環境問題や交流に資する案件を中心に実施している」と意義を強調した。ただ、中国は国内総生産(GDP)で日本を上回り世界第2位になろうかとしており、技術協力などの名目でODAを供与することには政府内からも疑問が出ている。(坂本一之)

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 仙谷氏は20日の会見では「新たなODAが供与されているとあまり聞いていない」と説明した。確かに円借款は平成19年度を最後に新規供与を終了した。それでも中国への無償資金協力と技術協力の合計は20年度で約53億円。21年度も約46億円が投じられた。

 外務省の「ODA国別データブック」に列挙されている項目をみると、無償資金協力による中国への環境対策支援は19年度からほとんどなくなっている。18年度までは黄砂・酸性雨対策や、黄河流域での保全林造成事業など環境対策支援が個別案件として明記されていたが、19年度以降は人材育成や日本語支援などが中心となっている。

 仙谷氏は、資金協力から、新幹線や石炭火力発電の共同開発などの技術協力に重心を移す考えを示したが、経済産業省幹部は「経済大国になった中国に技術を提供する必要があるのか」と疑問視する。

 ODAは発展途上国を支援し、友好国を増やす有力な外交手段だ。21年版ODA白書は「日中関係全体や中国情勢を踏まえ、国益に合致する形で総合的・戦略的な観点から実施していく」との方針を示した。

 しかし、沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件などで中国は日本の利益に反する行動をとった。外務省筋は「たとえ1兆円渡しても中国はびくとも動かないだろう」と述べ、もはや対中ODAが外交カードとして機能しないと指摘する。

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