2010年12月26日12時36分
ポリオ(小児まひ)の予防接種で、国内で未承認のワクチンを海外から輸入して使う医療機関が急増している。国内で承認されているワクチンより安全性が高いためだ。未承認ワクチンを扱う医療機関は9月から1.5倍になり、薬販売業者の取扱量は昨年の4倍になっている。
ポリオは、ポリオウイルスの感染で手足にまひが起こる感染症。国内で承認されている現行ワクチンは毒性を弱めたものだが、それでも約200万〜450万回の接種(1人2回接種)に1人の頻度で副作用のまひが起こるとされる。先進国の多くで、毒性をなくした「不活化ワクチン」が開発され、導入されている。日本は他のワクチンとの混合型を開発中だが、導入まで数年はかかりそうだ。
このため、海外から未承認の不活化ワクチンを独自に輸入して使う医療機関が出始めた。今年、現行ワクチンで被害報告が複数あり、親のワクチンへの関心が高まるとともに、ネットを通じた医師同士の情報交換が盛んになった。患者団体「ポリオの会」会員の調べでは、9月に26施設だったのが、今月は39施設と13施設増えた。未承認薬の販売会社「RHC USA コーポレーション」日本支社によると、昨年の販売は899本(1本接種1回分)だったが、今年は10月で3658本と4倍以上になっている。
不活化ワクチンの接種は、生後2カ月以降3〜4回で費用は高い場合は計3万円。副作用が出た場合、国の補償制度は適用されない。それでも接種のために東北、東海地方から上京したり、すでに承認されている韓国に行ったりする人もいるという。
「ポリオの会」は、ウェブサイト(http://www5b.biglobe.ne.jp/polio)で、不活化ワクチンの問い合わせに応じている。「最近は1日1千件もの問い合わせメールが来る」と小山万里子代表。年明けから接種を予定している千葉県立佐原病院小児科の松山剛医師(46)は「親が選択できる環境をつくってあげたい」と話している。(熊井洋美、金子淳)