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[25078] 【ネタ】究極(リリカル)!!変態仮面【エクストリーム謝罪級】
Name: str◆87c5f11c ID:8b00ffdf
Date: 2010/12/26 17:03
 メリ-クリスマス。

この作品は『リリカルなのは』の世界に『究極!!変態仮面』の主人公、
色条狂介の能力を持って転生したオリ主が活躍するクロスオーバーです。

以下の条件に該当するお方は申し訳ありませんがブラウザバックでお戻り下さい。

・クロス元の世界観を崩されたくないお方。
・アンダージョークを解されないお方。
・遅筆に我慢ならないお方。
・武侠小説風の文体に我慢ならないお方
・変態仮面とマスク・ザ・パンツの違いがわからないお方

では、筆者五体投地にて本編を始めさせていただきます。



[25078] プロローグ
Name: str◆87c5f11c ID:8b00ffdf
Date: 2010/12/25 09:05
 新暦71年4月29日
ミッドチルダの臨海空港で大規模火災発生、そのとき少女の命は、
誇張抜きで風前の灯であった。



---さて、これから話すのは幾重にも分かれた平行世界の一つ。
君たちのよく知る二次創作における定番手法の一つ、二次元世界への『転生』を
遂げた主人公を紹介するわけなのだが、まずは見ていただきたい。---



 熱風は乙女の涙を焼き、姉の消息を求めて声帯が張り裂けんばかりに立てる声も、
崩れ落ちる建造物の轟音に掻き消され、誰の耳にも届かない。

 少女は泣き虫であった。
 力なく、いつも姉の背に隠れては見ず知らずの他人におびえ、
 持ち前の心優しさを振舞うのは気心の知れた家族にのみ。

 誰が責められよう、この地獄の中。
 彼女のみならず響く怨嗟の声、苦しみからの解放を求める怒号、すすり泣く音。
 救いを求め縋り付く手はわずかな救助者が握り締める前に、一つ、また一つと地に伏してゆく。

 少女に力はなかった。
 愛した母も、愛する父も、己が力の限り見知らぬ人々を助ける職に就きながら、
 持ち前の心優しさを振舞うのは気心の知れた家族のみ。

 誰が責められよう、この地獄の中。
 誰にもへ与えられる当たり前の明日が来ようはずもない今、この時。
 やがて得たであろう父母譲りの意思は芽吹かぬままに朽ちる。

 目を覆う惨状、少女の未来は奪われる。
 まさに少女の身の丈をはるかに超える瓦礫が、その身の上に落ちようとしているのだ。



---君たちのよく知る『リリカルなのは』その第三期、冒頭である。
本来ならタッチの差でわれらが高町なのはが瓦礫を吹き飛ばし、見事スバル・ナカジマを救出、
やがてその姿に憧れた彼女はトクサイへの道を邁進するわけなのだが---



 だがしかし、瓦礫はその小さな体を押し潰したりはしなかった。
 力強い詠唱、少女の悲鳴すら掻き消したその青年の声は彼のナニより野太い輝ける荒縄を生み、
 無作法な瓦礫を食い止めたのだ。
 その…………

…………亀甲縛りで。

「変態秘奥義、ミッド式悶絶捕縛魔法------伏竜ッッッツツ!!」



---ようこそ諸君。
 残念ながら当SSで取り上げられるレパートリーに『萌え』の二文字はない。
 正しくクロスオーバーであるように魔法少女は最低5割確保でお送りしようとおもうが、

 オリ主は何と言っても『変身ヒーロー』だ---



 誰得SS、『リリカル変態仮面』始まります。




 己が窮地を救い出した恩人の姿を見て、ナカジマスバルは泣き出した。
 再び、それこそ己が内にも火が飛んだように激しく、力強く。
 それもそのはず、目の前の男は胸元で交差したブラジル水着のようなものを着て、
 足元には網タイツのように魔道式が絡みつき、燃える瞳をさえぎる様に、パンティーで顔を隠していたのですから。

「うわーん、へんたいだーァァァァァァァッ。
助けておとうさーんッ!!」
「……私は変態ではない」

 だがしかし、その男、紳士。
 泣き叫ぶスバルと視線をあわせ、そっと力強く肩に手を乗せ、
 股間のお稲荷さんからブラジャーをとりだすとほほを伝う涙をぬぐう。
 そして言い聞かせるように、まずはその名前を教えるのだ。

「変態仮面、今日から君の友達だ」
「へんたい……ぐすっ…かめん、さん?」
「そうだ、そして知り合いに曰く友達になるには作法がいる。
まずは君の名前を教えてくれないか?」
 途切れ途切れに、しゃくりあげながらも名前を告げた。
「スバル……スバル・ナカジマ…」
「そうか、スバル、いい名前だな。
この火災の中でよく生きていてくれた」

 変態仮面は少女の頭を撫でた、若草のようにしなやかな其の髪も、
 熱気にさらされて少し傷んでいる。

「まずはここを脱出しよう。
其の後で、がんばった君には何かおいしいものでもご馳走したい。
スバル、君は何か好きな食べ物はあるか?」
「うん、アイス」
「そうか、アイスか。
自前でホットなキャンディはあるが、こんな所に長くいたなら冷たいものもいいな」
 二人は手を貸しながら立ち上がり、再び困難を極める退路を行こうとする。
「でも、でもへんたいかめんさん、ここにまだおねえちゃんがいるの。
いっしょにさがしてくれる?」
「なんだと?
それは大変だ、急いで迎えにゆかなくては……ムッ!?」



『ディバイィィィン・バスタァァァァァ』



其の時、オリ主は膨大な魔力の迸りを感じ取った。
少女を背に、目にも止まらぬ速さで腰を突き出すし電光石火の防御魔法を展開、間一髪でその桃色の光から身を守る。
やがてその場に降り立つ一人の乙女、其の名も高町なのは。
いわずと知れた正ヒロインである。





「生存者二人をかくほ……ッてパンツさん?どうして!?」
「壁抜きとは相変わらずダイタニッシュな手腕だ、久しいな高町、息災かね?」
互いに杖と腰を突きつける二人、だがしかし再び泣き出そうとする幼女に感づき、その矛を収める。
「わたしはたまたま居合わせて救助活動を手伝っているだけですけど……まさかパンツさんも?」
「そのまさかだよ。
あまりにも時空管理局が鈍亀なので好きにやらせてもらっている。
大体の要救助者は火の及ばぬところに吊るしておいたよ。
少しは私の亀を見習いたまえ」
 どんな穴にもすばやく潜り込む、そう言うと背にしたスバルを促した。
「さあスバル、このお姉ちゃんが空を飛んで君を安全な場所まで送ってくれる。
きっと私が助けた人の中に君のお姉さんもいるはずだ」
「……フェイトちゃん、がんばって地面におろしてるの。
何で蓑虫みたいに吊るしてまわってたんですか?」
「この火災は人為的なものだろう?
中に犯人が居るかもしれないではないか常考」

『なのはーなのはー、なんでこんな複雑にバインドされてるかわかんないんだけど、
もう切っちゃっていいかなー?』

 親友からの念話が聞こえた。
 なぜか救護者が身をよじって上手く解けないという。

 とてとて、となのはに近づいたスバル、なのははそんな彼女をそっと抱きあげると宙を舞う。
「へんたいかめんさんは?」
「わたしは炎の大地を行く、ひょっとしたらまだ助けていない人がいるかもしれないからね。
高町、その娘を…頼む」
「いえ、普通に任意同行を求めます。
というか早く捕まって……掴まってください。
もうすぐはやてちゃんが凍結魔法で鎮火しますから」
「そうはいかん、それにこれだけの火災を消し止めるなら相当魔力を食うぞ?」
 ならば私はそちらに手を貸す、そう言って炎の中へ消えて行く変態仮面。
 なのははその後姿をしばし眺めた後、いこうか?と少女を促し、彼女の輩、果て無き空へ身を窶す。
 (また喧嘩にならないといいんだけど…)
 そんな事を思いながら。



 そして炎に焼かれるはずであった幼い少女の瞳には、戦乙女の横顔と、愛の戦士の後姿が焼き付いた。
 スバルは思う、ただ泣くだけの自分も、力のない自分も、もう終わりにしよう。

 強くなるんだ……そして100円ショップの電池とパンツは、もう買わないようにしよう、と。



* 



 八神はやては業火の中、いつの間にかあらかた助けられている救助者をフェイトに任せ、ユニゾンデバイスであり
彼女の家族でもあるリインフォースⅡとともに儀式魔法を展開していた。
 管理局の対応の遅さに憤慨していた彼女も、今はただ目の前に荒ぶる炎を消し止めんと、
今まさに広域魔法を放とうとした其の時。

「……雨?」

 瞬く間に暗雲に覆われる空、そして一筋の水滴が彼女の鼻先を濡らした次の瞬間。
 炎が掻き消えるほどに激しくその場に雨が降り注ぐ。
 南米のスコールもかくや、といわんばかりの勢いで、だ。

「ありえへん……天の助けといわれればどんな邪神もあがめたる量やよ?コレ」
「はやてちゃん、あのビルの屋上です!見るです!」
 はたして、末っ子の指し示した先に、崇めると誓った其の男はいた。

 わっしょいわっしょい、そいやそいや。
 
 強奪したであろう官給品のストレージデバイス、その先端に無数の女性下着をくくりつけ。

 わっしょいわっしょい、そいやそいや。

 一心不乱に天を突く纏(の、ようなもの)をふりかざしている其の男、変態仮面。
 忘れようはずもない、彼がかぶっているのは失った初代リインフォースの遺品であった。



「変態やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッツ!!
だれかあいつ捕まえたってーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」



 絶叫であった。
 彼女達、時空管理局を差し置いてだれもが『陸の守護者』とはやし立てる其の男、変態仮面。
 時空管理局に反目し、己が正義でもって人々を救う変身ヒーロー!------オリ主!

 だが果たして、高町なのはを除く彼女達にとっては……







「そこまでだ!デバイスを捨てて投降しろ」
 油断なく愛機、バルディッシュを構えてビルの屋上へ降り立つフェイト・テスタロッサ。
 ふむ、と一つ頷くと杖を床に転がし、肩をすくめる。
 ---遠雷が一つ、轟いた。

「久しいなテスタロッサ、御身疾風の如しと謳われた君にしても、今宵のおいしいところはすべて頂いてしまった。
いっておくが、此度の火災は私の仕業ではないよ?」
「そんなことは解ってる、でもここで逃しはしないよ全次元広域指定性犯罪者」
『Haken Form』
 ---一触即発、いまだ二人の間に雨は降り注いでいる。

「……やれやれ、ご馳走を平らげてしまった以上、ここは私の体一つでもてなすよりあるまいか?」
 手を後頭部に添え、ファイティングスタイルを取る変態仮面。
「公務執行妨害、器物破損容疑、加えてわいせつ物陳列罪の現行犯で逮捕・連行する。
行くよ、変態仮面……いや」
 其の身を低く、B+のランク程度しか持たぬ相手をしてなお全力で切りかかる執務官。
「『アールワン・D・B・カクテル』ゥゥゥゥゥゥ!!
母さんのパンツ返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!!!!!」
 



 嗚呼、幾度目の決闘だろうか。
 その日---97管轄外世界『地球』より遥か彼方の地に、落ちた迅雷と愛の太陽---



[25078] 承前~高町家編~
Name: str◆87c5f11c ID:8b00ffdf
Date: 2010/12/26 17:10
 夕日が赤く海を染め上げるころ、鳴海の臨海公園に小さく金属がきしむ音がする。
 一人、また一人と子供達が家路に就くころに、俯き小さくブランコを揺らす幼女が一人。
 即に言うぼっちなのはである、



「君、もうすぐ暗くなる。
家に帰らなければあぶないぞ」
 背後から誰かの声がした。
 しかし、幼女---なのは---はブランコから腰を上げることをしなかった。
「……まだ、おかあさん達もおにいちゃんもかえってこないの」
「一人きり、というわけか。
ならばなおさらの事、君が待っていてあげなければ家族は真っ暗な家の鍵を開けなければならなくなる」
「おうち、くらいの。
でんきをつければあかるいけれど、みんな元気がないの」
 その小さな背にかけられる言葉は優しかった。
 家族の前では押し込めていた苦しみが、堰を切ったようにあふれ出してくる。

「それは、どうしてだい?」
「お父さんがかえってこないの。
しごとでおおけがして、しんじゃうかもしれないっていわれて。
何とかそんなところはとおりこしたっていわれたけど……」
 ついに、なのはの瞳か涙がこぼれ始めた。
「でも、そしたら、おかあさんもおねえちゃんもずっとおとうさんのびょうしつにいっちゃったままだし……
おにいちゃんもすごくこわいかおしてずっとずっとけんをふってるし……
みんなわたしのこと、いらなくなっちゃったのかな……
わたし、これからどうすればいいんだろう」
 しゃくりあげながらも、胸の内を一気に吐き出した。
 ブランコを握り締める手が震えている。
 あるいは、背後に立つ何者かにすがりつかない事こそ、最後の、自身の弱さへの抵抗であったかも知れぬ。

「君のお父さんは悪い奴だな。
こんなにかわいい娘を一人きりにしておいて、病室のベッドでぐっすりおやすみとは------」
「おとうさんわるくないもん!!やさしいもん!!
きっともうすぐ帰ってきてわたしのことだっこしてくれるんだから!!」
 はじかれたようにブランコを飛び降り、公園の真ん中で見事にすっ転び、天を仰いで号泣する。
 そして背後の男はゆっくりとちかづいて、彼女の脇をもちあげしっかりと立たせるのだ。
「ありがとう、もちろん君のお父さんも君の事を心配している。
お母さんやお前の兄弟のこともな。
------だから最後の力を振り絞って、奇跡を呼び起こしてここまで来たんだ」




 なのはは背後を振り返る、そこには自分より5歳ほど年上の少年が、
---------ブーメランパンツをかぶっていた。
「わたしは高町士郎……君のお父さんの、パンツだ」



 君を助けにきた、そういって幼女を抱きしめた少年の瞳にはハイライトが無く、
にごった上に焦点も合っていなかったが、なのははその奥に確かな優しさを見た。
それは、父の瞳であった。







 少年、否、高町士郎のパンツはジーンズから携帯電話を取りだし、
登録していた息子の番号を呼び出すとなのはに手渡した。
「さあ、これで恭也に電話して『変な人につかまった』といいなさい。
あいつなら物の数分もしないうちに駆けつけてくれるぞ。
何を賭けてもいい」
「------なんでもいいの?」
 幼女はそれをうけとって、少しだけ自分より背の高い少年を仰ぎ見る。
 初めて手にした父の携帯は、とても頼もしく思えた。
「ああ、もちろんなんでもいいよ。
私が起きたら家族みんなで遊園地にでもいこうか?」
 ゆっくりと、絆を確かめるようにコールボタンを押したなのは。
 言われたとおり兄に助けを求めると、漫画のように携帯がブッ飛んだ。
 大事そうにそれを拾い上げる娘、父のパンツにそれを差し出すと、告げた。

「おでかけはいいよ」
「…では、なにがいい?」



「------はやくかえってきてほしいの」



 不覚にもジンときた。
 意識の奥底に閉じ込められた少年---オリ主---本来の魂が、今初めて、この世界への転生を感謝した。

 其の瞬間である。
 爆発する音、地を駆ける炎、吹き飛ぶ民家の屋根や粉砕する塀とともに駆けつける姿、
電話からわずか数十秒、現れたのは高町恭也、その人である。

「---------なのはッ、大丈夫か!?」
 力任せに抱きしめられるなのは、兄の背後から遅れて届く大気を揺るがす『キィィィィン・ゴォッッッッ』と言う轟音。
 周囲の木がど真ん中からヘシ折れて、海に落着する。
「おにいちゃん、これ……」
「これは父さんの携帯……なのは、悪い奴はどこだ?」
 父の所有物を見せられ、息巻く恭也。
「ぱんつさんは…」



「ここだあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 ひん曲がった街灯の上、腕を組んで二人を見下ろす少年。
 踵を一つ打ち下ろすと、音も立てずに一瞬で砂塵と消える鉄製の足場。
 着地し、静かな足取りでこちらに向かってくる相手は……表情が伺えなかった。
「其の年甲斐の無い色、形……父さんのパンツじゃないか!?」
 息子の目からしてもどうかと思う、父の勝負パンツで顔を隠していたのですから。
「いかにもそのとおりだ、恭也。
そして何をしている、なのはを独りぼっちにして、それでも御神の剣士かッ!!」
「ちょ、一寸待ってくれ!
どうして父さんのパンツをかぶった子供に責められなければならないんだ?」
 ワケが解らなかった。
 確かに変態には違いないが、思った以上に年若い。
 加えて父のパンツ、何でそんなものを持ち出したのか皆目検討もつかぬ。

「どうやら私は買いかぶりすぎだったようだ。
敵を眼前にこうも動揺するとは……構えろ恭也、性根を敲きなおしてやろう」
 上着のスソからヴァイブとアナルビーズを持ち出して突きつける。
 それはまごう事なき、自身に染み付いた小太刀二刀流。
「---------永全不動八門一派・御神真刀流……其の構えは、もしや」
「行くぞ恭也!!」
 ---------虎切---------
 神速をもって襲い掛かる猛攻を、二振りの小太刀で受け流す。
 返す刀で相手に切りかかるも、バイブレーターの振動と硬軟一体のアナルビーズではじき返された。
 二合、三合と打ち合って行くにしたがって、彼の中で相対する相手が、寸分違わず父の技であると確信する。

「恐ろしく腕が鈍っているぞ恭也、恐れ、不安がにじみ出るような太刀筋だ」
「クッ……」
「私が倒れ、居もしない難敵に挑み続けても何かを守るための力は身につかん。
ならばこそ、愛するものをしかと心にとどめておかなくては私のように不覚を取る羽目になる」
 獲物を収める父のパンツ、膝を屈する其の息子。
 書いていて思ったんだが上記のような表現でも卑猥なものに思えてしまう当SSの狂気。
「ならば、それならば、なんであんな怪我をして帰ってきたんだ、父さん……
母さんも、俺達も置いてゆくところだったじゃないか」

「それは正直すまんかった。
だがしかし、私の愛は尽きることが無い、こうやってパンツに残留思念を残して尚、
お前達が生かしてくれている自身の体には熱い思いが駆け巡っているのだから」
「---------------------------御神にそんな技が……」
「すべてを伝えるまで、私は死ねないさ」
 父のパンツがなのはを促し、大切な其の家族をしっかりと抱きしめる。
「待っていろ、もうすぐお前たちの所に帰るからな」

 二人は其の心地よい絆に目を伏せ、そしてしばらく後、忽然と抱きしめる腕の感触が消えたかと思うと、
一陣の風が過ぎ去るがごとく、父のパンツは姿を消していた。

「おにいちゃん……」
「ああ、なのは。
父さんのところに行こう!!」







 そして、高町士郎は目を覚ました。
 しばらくは己のおかれた立場に戸惑っていたようだったが、一家総出で涙を流しながら迎えてくれたことには、
どうやら不覚を取りながらも無事に帰ってきたのだ、と安堵した。

 まどろみの中、覚えていたことはなにもない。
 故に問いたださねばならないだろう。

 「------------------なあ、どうして布団の上に俺のパンツが置いてあるんだ?」



[25078] 承前~R1編~
Name: str◆87c5f11c ID:8b00ffdf
Date: 2010/12/26 23:28
サッカーボールをおいかけた少年が、車道のほうへ飛び出した。
そんな光景を目の当たりにしたならば、たとえ聖者にあらずとも、必ず人間の体は動く。

 今、このSSを読んでいる諸君の体も必ず動くだろう。
 幼い命を救わんと、己が身の最速をもって助け出そうと駆け出すだろう。

 そういった意味では、この作品のオリ主も、君たちとそう変わらない青年であった。
 見事に目的を完遂し、助け出した其の子供にいくつか言い聞かせた後、その場を去る。

 だが、そんな帰り道、彼の亡骸は無残にひき潰された姿で発見された。
 運命が、其の天秤をつり合わせたかのように、青年はこの世を去ったのである。

 しかし検死に当てられた其の死体、結果を見て誰もが首を捻る。
 其の身に、そして現場に残されたタイヤ跡はあまりにも大きかった。
 全長18メートルは下るまい、正直日本の道路を走る余地も無いほどの大型自動車にひき逃げされた青年。

 この事は、日本にいくつもある未解決事件の一つ、もしくは都市伝説の一つとして誰もの耳に入ったが、
やがて風化して消えていった。
 青年に家族は無く、ただ警視庁のファイルにはさまれた、一枚の紙片としてしか、彼は『かつていた世界』に痕跡を残さない。

 それはある意味、幸福な結末であったのだろう。







「ここは、どこだ?」

 見慣れぬ草原であった。
 おぼろげながら、自分が---何か物々しい---巨大なトラックにひかれる寸前までのことは覚えているが、
ここは聞き知った三途の川ではない。
 小鳥のさえずりが聞こえないことが、いっそ不思議なほど穏やかな風景。
 しばらくそれらを眺めていると、遠くからエンジン音が聞こえた。

 それは、かつて流行したスーパーカーに似た存在だった。
 青年が駆け寄ると、2・3度ヘッドライトを点滅させ、語りかけてきた。
 彼が、其のスーパーカーが、である。
『遅くなってすまない    君、急なことで動揺しているだろう?』
「なんと!?」
 急展開に目を見開く青年、スーパーカーは来た道をゆっくりバックし、距離をひらくと、



 ------変形した。
全長7メートル程度の蒼いロボットに、である。



『私の名はセイザー。
君たちが言う神様が指名した<観測機構隊>の一員だ』
「セイザー……そうか、神様の名を出すということは、私は死んだのだな?」
『そうだ、本来ならあの少年を突き飛ばし、君が身代わりになって轢かれるはずだった。
わざわざその場を離れてから君をここへ呼び足したのは、君にお願いがあったからだ。
回りくどいことした』
 セイザーは頭を下げる、自分より大きな其の機械を手で制すると話を促す。
「それで、死んだ私はどうすればいい?
自分が昔坊主に聞いた話ならば、49日のたびを経て、仏の弟子になるとの事だったが……」
『ああ、その事なのだが。
かつて勇気あるものは、オーディンという私の上司が天界の兵にしていた』
「かつて、とは?」
『今は君たちの言う天国で、戦争は無いということさ。
だがしかし、その地を狙う亡者達は組織化し、さまざまな平行世界を新たな自分の住処とし、
侵略を始めたのだ。
頼みがある、君は私の知るとある世界に行き、そこで第二の生をすごしてほしい』
「------転生、というわけか?
だが、そんな事をして君たちにはどんなメリットが?」
 一つ頷くとセイザーは言う。
『其の世界における私達の旗印になる、いわば所有権を行使できるわけだ。
亡者達は争いと混乱を望むので、身を守る特別な力はつける。
最低限だが、其の世界で生きて少しだけ活躍できるだけの力を。
礼とはおこがましい程度の、だが……』

 俯くそのロボットを、勇気ある青年は笑い飛ばした。
「わずかな力も必要ない。
もう一度生きて、何かを為す舞台を与えられるなら感謝するよ。
それこそクトゥルフ印の機械神でも、億単位の異星起源種であろうとも力の限りあがいて見せよう。
------其の世界の人間として、ね」
 青年はヲタク野郎であった。
 苦難の道ですら、これから始まる冒険を前にして心躍らせるほどの、重度な。
『ありがとう、それでは早速ゲートを……』

『まぁぁてぇぇぇぇぇぇい!!』

 しかしまた変なのが出た。
 今度は身の丈はセイザーと同程度、漆黒のいかにも悪そうな奴だった。
 ------角も生えている。
『また手下を送り込もうという魂胆かぁ、セイザー。
そうはさせんぞぉ』
『また貴様か!時空暴君ティンダロス、いい加減にコーディーの体を返せ!!』
 太ももから拳銃のような武器を取り出し、構えるセイザー。
 青年の胸熱、彼は萌えより燃え派である。

『ふはははは、送り込むのならまあそれでもよかろう。
だがコレを見るがいい』
 宙から巨大なキャノン砲を取り出して構える時空暴君。
 セイザーはそれを見て後ずさった。
『なっ、それはクロスオーヴァー・キャノン!?
あの子も貴様の手に落ちていたのか!!』
『その通りよ、こいつを其の男にぶっ放して、設定過積載の最低系SSオリ主にしてくれるわ!!』

 急に話を振られて困惑する青年、だがしかし、そうはさせんと立ちはだかるセイザー。
 地平線の果てまで届けとばかりに、其の名を叫ぶ。



『インガロォダァァァァァァァ!!』



 土煙を上げ此方に走りくる巨大な車体、前輪を持ち上げ瞬く間に巨大なヒトガタへ姿を変える。
 青年はその大型車に見覚えがあった、己を跳ね飛ばした車であった。
「転生トラックが……変形しただと?……」
 トォゥ、と空を舞うセイザー、其の巨大なヒトガタに貼り付けになると、其処へTの文字があしらわれた装甲が降りた。



『輪廻合体------テンッ・セイザァァァァァァァァァァ』



 拳が飛び出し、セイザーの顔を隠すようにチンガードが降りると、其処に幾多の二次創作を守護する無敵の巨神が爆譚する。
 もしかしたら、君たちの元にもインガローダーは走り来るかもしれないぞ?


『パラダイム・ブレードォォォォォ!』
 地面に輝ける湖面が現れ、テンセイザーが巨大な剣を引き抜いたそのとき、
『おそいわッ!バッドエンド・ブラスターァァァァァァ!!』
 時空暴君の手にある砲が漆黒の光帯を放つ。
『早く!早くその湖に飛び込むんだッ』
『だがしかし!テンセイザー、君は……』
『私に構うな!異世界を頼んだぞ!』
 巨大な剣が黒い光を裂く、だがしかし、飛び込む瞬間ほんのわずかにソレを、青年は浴びてしまった。

------思えばそれが、ミソの付き初めかもしれない。

『------リリカルなのはの世界をッ!!』
『……ぁるェ----!?』

 そして、思いもよらない自身の行き先を聞いて、ずっこけた上に頭から次元の狭間へ突撃することになるのである。







「---------そして、9年の歳月がすぎた、か」
 オリ主、名をアールワン・ディープパープリッシュ・ブルーメタリック・カクテルは海に遠い視線を向けた。
 年月が過ぎ去るのは早いものである。
 あまりに過積載な転生の顛末ゆえ、お袋のまたぐらから這い出た苦痛もそこそこに、
泣くのも忘れてポカーンとして看護士たちを慌てさせたのも遠い過去の話。

 父は無く、母はミッドチルダからの移民系でSMクラブのM嬢で生計を立てている以外は取り立てて目立つところの無い、
そんな身分に自分は生まれ落ちた。
 
 魔法の才も母親が乳飲み子のときあやしていた言葉『将来はBランクぐらいまでいきまちゅかね~あーちゃん』くらいまで
行くとは思っている、だが、それだけだ。

 加えて転生者頼みの綱である『原作知識』も二次創作をざっと見たぐらいの、穴だらけの知識しかない。

 だが何よりも彼を悩ませるのが一種のレアスキルである。
『パンツをかぶると持ち主の経験・特技を自分の者に出来る』というものである。
 あんまりにアレなので、これは母親にも話していない。
 正直母親の職場で同僚の下着をかぶってハイハイを覚えた、とは言い出しがたいものである。

 原作の介入が出来るほどとは、到底言いがたい。
 いまでは暢気に小学校に通いながら母親相手に主夫業などして過ごしているだけだ。
 コレではいけないと考えてはいるのだが……。

「------------------正直、彼女達は強い。
自分が座れるイスはシリーズ通してのライバル的存在、ぐらいだと思うんだがなぁ……」
 この作品の主人公達は、幾多の悲しい出来事にも膝を屈せず、幾人もの友人達とそれを切り開いて行ける。
 助けが必要も無い、眩しい者達ばかりなのだ。
 自分がここにいる必要など、これっぽっちも見つからないのである。
 友は、あの巨神はどうして自分をこの世界に遣ったのだろう。
 つま弾き感が満載だ、自身の名前もバイクだし。







 そんなことをつらつらと考えながら後ろを振り向いた其のときである。
 俯きながらブランコを小さくこいでいる幼女を発見した。
 特徴的な栗色のツーテール、高町なのはである。

「アレが……魔王かッ……」

 無意識のうちに固唾を飲んでしまったが、幸い今の彼女からはプレッシャーなどかけらも感じぬ。
 と、いうか目に見えて落ち込んでいた。
(そうか……いまは『ぼっち期』父親は入院中といったところか……
む?高町士郎------使える!!)

 オリ主は駆け出した、腐ってもかつての主人公、高町恭也が使う永全不動八門一派の技ならば、
これから始まる本編の末席にでも食い込める戦闘力を手に入れられるのでは!?

 最後にもう一度振り返り、力ない幼女の姿を目に留める。
 あまりにも切ない其の姿に思うところもあるが、今の彼女に出来ることは、自分にはきっと無い。







------問題は、男のパンツをかぶっても己のレアスキルは発動するかどうか、という所である。

 高町士郎の病室には、いまは誰もいない。
 家族は遅い昼食にでも、戻ったのであろうか?

------幾度か試してみたのはすべて女性の下着、高揚感とともに己が服を脱ぎだした以上ネタ元になったのは『アレ』に違いない。

 いくつもの治療機器につながれた高町家の大黒柱、裏の世界に其の男ありと歌われた高町士郎、
今は血の気のない表情で静かに眠っている。

------だがしかし、所詮は15年前の変態表現、21世紀を生きたヲタク野郎ならばジェンダーの壁ぐらい…

 傍らには家族が用意したであろういくつかの荷物、必ず必要になると確信の上、用意された着替えの中に…

------------かくしてオリ主の手に男のパンツは納まった------------

「……あった……」
 コレをかぶれば、自分はもう平穏な日々には戻れまい。
 けして日の光の射さぬ道を行き、人には唾を吐かれよう。
 なぜならば、男のパンツをかぶってハァハァできたならば、ある意味ヤツ以上の変態なのだから。

 アールワンは高町士郎にしばし頭を下げ、そして意志を固めた。
「逝こう、針の筵の上であろうと、灼熱地獄の道程であろうと……
あの乙女達の前に立ちはだかり、この世界に幾ばくかの彩りでも添えられるならば、
後ろ指を差されよう、嘲笑されよう。
今このときばかりは、高町士郎のパンツよ……私を導いてくれ」

 この友情が主題の世界において------------------
 強敵(とも)と呼ばれることを望んだ、それがオリ主の誓い------------------



「Live Better! (歪みなく生きろ)」



 意を決し、広げたブーメランパンツに顔を突っ込む。
 未体験のフィット感、だがしかし、これが高町士郎のパンツだと頭が認識した其のときであった------

「う、う、うぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁぁ
ぁぐぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁっぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぎぁっぁあぁぁぁおぁぁっぁあっぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁっぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁぁ!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 脳髄を侵食する御神の理念、高町士郎という男の生涯。
 理解不能の苦痛であった。
 そして瞬く間に侵食される、転生前後30年の己の意思------------

 最後に思い出したのは一人ぼっちのさびしそうななのはの姿。
 そうか、父よ。
 行くのだね、さびしそうな娘を救いに。

 己が意思に反して動き出す体、最後の力で笑みを浮かべると、オリ主は意識を手放した。
 男のパンツに隠された、それは男の顔だった。







「臓器活動停滞、四肢も全部複雑骨折しています!!」
「目立った外傷も無いのに……矢沢先生、この子どうしてこんなことに……」

 オリ主はストレッチャーに乗せられて、鳴海総合病院の廊下を行く。
 アールワンは病院に隣接した街路樹の隅で、ボロ雑巾になったところを発見された。
 士郎の寝室で顔からパンツをはがした跡、這うような速さで其処まではこれたのだが。
 正直子供の体で御神の技は反動がきつすぎたらしい。
 再び薄れ行く意識で横を見ると、目の覚めた士郎を中心に高町家全員が抱き合って泣いている姿。

 よかったな、高町なのは……
 だがしかし……

(生涯、お前達家族の下着だけは、かぶるまい!!)

 オリ主は、そう心に誓ったのだった。


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