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[25080] 【一発ネタ?】魔導戦士リリカルNANOHA zero (リリカルなのは)
Name: アニマルⅩ◆c59b88ae ID:71c13777
Date: 2010/12/25 11:47
優れた魔法文明によって発展してきた世界、ミットチルダ。

現主流の魔術式ミット式の発祥の地にして、次元世界を管理する組織──時空管理局の本部が存在する地でもあった。

時空管理局が発足し、新暦となって70と幾年。

数々の世界を管理下においていき、管理局に驕りがなかったといえば、それは嘘となるだろう。

そして引き起こされた、JS事件。

管理局はこの大事件を機動六課の活躍によって解決する事に成功する。

だが、JS事件のもたらしたものは大きかった。

全次元世界に、新たな風が吹こうとしていた…………



[25080] 第一章『機動零課』
Name: アニマルⅩ◆c59b88ae ID:71c13777
Date: 2010/12/25 11:47
ジョエル・スカリエッティが引き起こした"JS事件"からはや一年が過ぎようとしていた。
数多くの爪あとを残したJS事件ではあったが、復興作業が進むにつれて。人々の記憶から薄れつつあった。

そんな中、JS事件によって数多の貴重な人材、最高評議会のメンバーが殺害される等の大損害を受けた管理局は、その機能を大きく減じる結果となっていた。

管理局の"戦力"再編の為に幹部たちが大車輪で動いているころ、第一管理世界ミットチルダのクラナガンではパレードが催されていた。
長年公開されることのなかった管理局の特殊戦術部隊・機動零課が、その歴史上初めて日の光を浴びたのだ。

「あれが機動零課かいな。なんや、おもっとったより普通やな。
高町一尉、フェイト執務官はどう思う?」

関係者専用の観覧席に座っている茶髪の少女、八神はやて二佐は、側にいる友人に尋ねる。
金髪の少女と、茶髪のサイドポニーの少女は苦笑する。

普段はエロ魔人として名高い関西弁の少女が、同じ管理局の高官たちになめられない様、必死に取り繕った表情をしていたからだ。。

「うん。裏では黒い噂をたくさん聞くけど、普通の人たちっぽいね」

敬礼する機動零課の局員に手を振るのは、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官。

「フェイトちゃ……フェイトの言うとおりだね。
もっと荒々しいのかと考えてた」

慌てて仕事モードへと切り替えたのは、言わずと知れた、高町なのは一尉。
はやて、フェイト、なのは の三人は、既に解散した機動六課の"伝説"のメンバーである。
裏と表、様々な意味をもって有名な人物たちだ。

「この時期に公開っちゅーことは、零課の人たちは相当きばらにゃああかんな。
ごしゅーしょーさまー、っていわなあかんで」

「どうして?」

「なのは、今の管理局は人材不足できりきり舞いなんだよ。
"最強の部隊"を遊ばせておく余裕はないんだよ」

「フェイト執務官の言うとおりや。
零課は今まで"暗部"の処理がメインやったしな。
このパレードで表に引っ張り出して、即戦力にしようと考えとるんやろ。
公開された資料を見る限り、高町一尉クラスがごろごろおるからなあ」

「それに私たちなんかよりもずっと修羅場を潜り抜けてる。
実戦力はとても高いと思うよ」とフェイト。

「へー。やっぱり強いんだろうなー。……一度戦ってみたいなあ。
ちょっと最近は力を制御しすぎてると思うんだよねー」

「何が?」とは、フェイトも はやて も聞かなかった。
ただ、なのは の教導を受けたものは半死半生とだけ言っておこう。

「なのは一尉。発想がシグナムみたいになっとるで」
とはやて の脳裏にバトルジャンキーな乳魔人がよぎる。

フェイトは乾いた笑いを浮かべながら、

「最近、なのは の心の病気がどんどん進行してるんです」

フェイトを知っている人がいるなら、突っ込んだ事だろう。
お前もだろ! と。

「もう! フェイトちゃ……フェイトも酷いの!」

機動零課の面々が一糸乱れぬ行進を続けるながら、クラナガンの街道を行く。
威風堂々とした彼らは、市民に多少の威圧感を与えるが、これはパフォーマンスの側面を含んでいるからだ。

「その話は置いておくとして、これで管理局の力を誇示しようとしてるのかな」

「そうやな。なんやかんやで管理局には敵が多いさかい。
弱みを見せんようにするのは普通ちゃうか?」

「……?」

「……なのは には私があとで教えてあげるから」

もっと政治面も勉強しようよ、とフェイトが視線を送るが、なのは 本人は気付いていない。
そんな2人を見ていたはやて は、笑いを堪えるので必死であった。

航空魔導士の派手な演出付きの曲芸を〆に、パレードは無事終了した。




「ん~! やーっと、かったるいパレードも終ったで。
もう肩がガチガチのガチホモや」

「いや、意味分かんないし」

「あはは……はやて ちゃんって、時々よく分からなくなるんだよね」

「なんや、2人とも冷たいでー?気ぃ張りすぎて肩が凝ったってことや。
ホモやったら、私は女やないで。……まあ、リーンと融合すれば──」

「いや、何も変わらないでしょ」

「え? 髪とか色々変わるんじゃないの?」

「なのは……」

そこじゃないんだよ、とフェイトは内心でつっこんだ。

パレードにやってきていた人影は徐々に少なくなりつつあった。
日も傾き始めている。

「そんな事はええとして、これから飲みにいかへん?」

「え? まだ昼間だよ?」

「私はいいけど……」

「いいんかい!? フェイト執務官の片鱗を見たで! 今!!」

「いや、そんな事別にいいし。てか、どうでもいい」

「ひどっ……」

「はやて はお酒飲めるの?」

右手でVサインを作り、誇らしげな はやて。
フェイトは腕時計を見て、時間を確認する。

「午後4時……ちょっと早すぎるね。
居酒屋は開いてないかも」

「な、なんやてー!」

心底ショックを受けた……風の はやて。
がっくりと肩を落とす……見た目だけ。

「あっ、でも、あのお店なら大丈夫だよ。
ほら、ヴィータちゃんとチンクちゃん行きつけの」

「確かに なのは の言うとおりだね。あのお店なら絶対開いてるよ。
…………店長は嫌がるだろうけど」

「うちは居酒屋じゃなーい!ってね」

なのは とフェイトが声を合わせて笑う。

「なんやなんや。うちだけ仲間はずれかいな」

少しすねたように言う はやて。
そんな はやて に、なのは とフェイトは謝った。

「ごめんごめん。
別に はやて ちゃんを仲間はずれにしようなんて思ってないよ」

「私たちが話してるのは『桜花謳歌』……和菓子屋だよ」

「和菓子屋?」と小首をかしげる はやて。

「そう。和菓子屋だよ、はやて ちゃん」

笑顔の なのは。

「……なんで?」

はやて の質問は、的確なものだろう。
普通、和菓子屋に酒は置いていない。




「で、来たのはええけど……どこからどう見ても和菓子屋です。
本当にありがとうござ──」

「ところが、ねえ」 「ねえ」

何の躊躇もなく扉を開ける、フェイトと なのは。
はやて も二人の背に続いて桜花謳歌の敷居をまたいだ。

中はミットチルダでは比較的珍しい、和風文化を漂わせる内装であった。
カウンターには驚いた顔をしている、黒髪黒目の男がいた。

「ちょっ!? お前ら何しに来てんだよ!……和菓子か? 
ああ、和菓子か。それならいいのが──」

「残念。はずれです。麦酒か焼酎をもらいに来ました」

「そう言う事なんですよ、ナナシさん」

その場でガクッと頭をおとしたナナシと呼ばれた男とは対照的に、フェイトよ なのは は嬉しそうにする。
……餌を目前にした犬のようだ、と はやて は思うのだが、口には出さなかった。

「仕事はどうしたよ……それに今から飲むのか?」

「そのへんは大丈夫です。ね、なのは」

「うん。寧ろ休日を消化しなきゃならないよ、私は」

「左様ですか……。
それよりも、そちらの美少女は?」

ナナシは今まで見たことの無い少女──はやて に話をふった。
『美少女』の単語に、やや照れる はやて。

「あ、八神はやて いいます。はじめまして」

「これはご丁寧にどうも。俺はナナシ、偽名だが気にするな。
何故偽名かといえば、その方がかっこい──」

「ナナシさんは元管理局員でゼロ機関にいたんだよ」

「なのは……」

「え!? ダメだった?
でも機動零課は公開されたし……」

ゼロ機関とは機動零課のことである。
旧最高評議会の直属で、あらゆる指揮権、制約に制限されずに独立していた為、こう呼ばれる事が多かった。
S級次元犯罪者の抹殺、非合法活動を主とした独立した機関……ゼロ機関。

「まあ、そんな事は気にしないからいいよ。ちょっと待っててくれ、店閉めの札を出してくる。
まあ、適当に腰を落としてくれ」

そう言って入り口へと向かうナナシ。
なのは とフェイトは、勝手知ったる何とやら。我が家でもあるかのように席に着く。
まだ桜花謳歌の空気に慣れていない はやて は少し戸惑う。
フェイトは店の奥へと入っていってしまった。

「ええんか? あれ」

「いいのいいの、ほら、はやて ちゃんも座って。
ゆっくりしていかないと」

「せやけど……」

「なのはー! ちょっと手伝って!」

「わかった! ちょっと待っててね、はやて ちゃん」

「え……」

珍しく取り残された感のある はやて。

「ったく、あんのガキどもは、また勝手に……。
八神さんはゆっくりしていっていいよ。我が家と思ってくれ」

いつの間にか戻ってきたナナシが、はやて の対面に座る。
メガネのずれを直しながら、ため息を吐いた。

(えらい目に迫力のあるひとやな……メガネやけど)

「ありがとうございます」

「しかし、新聞の一面を飾る人間がよく来るよ。
……それも和菓子屋に酒を求めて……」

「すみません……」

「あ、いや、これは失礼。
これは俺が謝らないとな。今のは客に対するものじゃない」

すまん、と頭を下げるナナシ。

「い、いやいや!
こちらこそ、何かすみません!」

なぜか謝り返してしまった はやて。

(なんや、ペースが乱される……)

何時もの調子がいまひとつでない はやて。

「そう言えば、何で和菓子屋にお酒があるんですか?」

ペースを取り戻そうと自ら話題を振っていく はやて。

「俺が知りたいよ……」

「は?」

「"酒神"が毎年10トン単位で送ってくるんだよ」

「……は?」

間抜けな声を2度もだす はやて。
それを見て、ナナシは顔を少し赤くする。

「じょ、冗談だよ。冗談!」

「真面目に答えられたら恥ずかしい」と頬をかくナナシ。

「……は?」

はやて が主導権を握るのは、遠い。

そして、時が止まった。
ナナシと はやて の限定時間氷結。
だが幸か不幸か、凍った時間はすぐに解凍される事となった。

「パパー!」

1つの流星、もとい少女によって。
少女は止まった時を切り裂き、ナナシと はやて の間に突き刺さる。

「あはは。……ごめんね、八神さん」

「い、いえ」

少女はナナシにしがみ付くと、はやて をギロリと睨んだ。
歳は10歳ごろ、赤い髪に翡翠色の目をしていた。

黒髪黒目のナナシに似ている部分はなかった。
いや、ただ1つ似ている部分があった。
その鋭い目は、ナナシと少女は似ているかもしれない。

「この子はヴェル。……似てないだろ?」

笑いながら言うナナシに、はやて は苦笑した。

「他の娘達もいたんだが、今はこの子だけだ」

「結婚されたんですか?」

「うん、まあ……そうかな?」

やや歯切れの悪いナナシ。
ほんの少し、ほんの少しだけその目は────に染まっていた。

「八神さんはやはり管理局に?」

「はい、二佐をやっています」

「そっか。そりゃ、そうだよな。
新聞の一面を飾るんだ、管理局なのは当たり前か……」

色々憎まれる事が多いから、気をつけてとナナシ。

「え? あ、はい」

はやて はナナシの目が気になった。
だが その違和感も乱入者によってすぐに忘れる事となる。

「ジャンジャンジャン、ジャンジャジャーン!!」

「なんだ? その黒い装甲服を着た暗黒面の騎士が出てきそうな音楽は。
…………俺の騎士甲冑と、着るときのテーマじゃ──」

フォース生命体のテーマとともに出てきたのは、両手に酒瓶とコップを抱えた、なのは とフェイトであった。

「またそんな、ジュースみたいな酒を……」

「これがいいんですー!」と なのは。

ナナシは呆れながら、

「別に飲むのはかまわないんだが、……お前ら子供はどうすんだ?」

「キャロちゃんはともかく、ヴィヴィオちゃんが心配」とはヴェル。

ヴェルの意見にはナナシも頷く。
フェイトと なのは の動きが止まる。

そんな2人を見てヴェルは、

「パン、パン。はい2人は死亡」

指鉄砲と作っていた。

「うむ。偉いぞ、ヴェル。いい判断力だ」

「えへへー」

「いや、そこちゃうやろ。
ほんま、ヴィヴィオちゃんはどうするん?」

なのは とフェイトは互いの目を見る。
確認は一瞬、下した結論は、

「ヴィヴィオを呼ぶ」 「キャロとエリオを呼ぶ」

「いや、帰れよ」とはナナシ。

「お前らどうせそのまま寝るだろ。
"あんな"悲劇は一度で十分だ」

「悲劇て、何や?」

ナナシが なのは とフェイト話している途中、はやて はヴェルに尋ねた。
ヴェルはそれを聞いて、思い出し笑いする。

「四ヶ月ほど前だったかな?
赤ウサギと銀髪眼帯と青チビが酒目当てにうちに来てたの」

「?」

誰かのあだ名だろうが、はやて は誰かまでは分からなかった。
だが、赤ウサギと青チビは身内の気がした。

「そしたらもう、酔うわ酔うわ、暴れる暴れるの末に爆睡したの。
で、三人は朝帰りになったんだけど……」

ご近所ネットワーク恐るべし、しみじみと考え込むヴェル。

「?」

結局、よく分からなかった はやて。

「勘弁してくれ。うちは表向きは和菓子屋で通ってんだ。
それに近所の俺に対する目が、非常に冷たいんだからな」

「なのは……」 

「フェイトちゃん……」

「仕方ないよ。私たちには私たちの道があるんだよ。
例え道が違っていたとしても、いつかは、いつかはきっと……」

「そうだね、なのは」

何かを決心する、なのは とフェイト。
ナナシの目を正面から見返した。
それに対して、ナナシは少したじろぐ。

「お酒プリーズ!」と見事なハーモニーであった。

「あほかー! か・え・れー!!」と叫ぶナナシ。

本気の風は感じられず、なのは とフェイトの冗談だろう。
ナナシもそれにのっただけであった。
冗談……冗談の筈である。

「ナナシさんのお酒って、麻薬でもはいっとるんちゃう?」

「……………そんな事はないけど」

殺生な、とか叫びを上げながら、なのは とフェイトは自宅へと強制転移させられる。
無断で魔法を使用したのがバレれば、逮捕されかねない。
管理局員(過去)が4人もいるが、問題はない。

「対犬コンビ・ロリ連合・魔王と嫁対策に転移魔法も習得してるんだよ。
パパ、凄いでしょ?」

「寧ろ家をしっとるのが驚きや。
……送り先、家やろ?」

「……」

はやて の問いに答えるものは、いない。

「あ、八神さんがいたんだった。どうします?
軽く飲んでいきますか? 味だけは保障しますよ」

なのは とフェイトが転移する直前に引っ手繰った酒瓶とコップを机に置く。

「もうちょっとお話しようよ」

「こら、ヴェル。我侭はダメ」

「あの、今日は……いえ、やっぱり少し飲んでいきます。
勿論、タダですよね?」

意地の悪そうな笑みを浮かべる はやて に対して、ナナシの答えは1つであった。

和菓子屋で酒を飲む青年と二佐。
それを眺めながら時々会話に加わる少女。
どこかおかしな、三人の時間はあっという間に過ぎ去っていった。

「でな、そのパンドラっちゅーのが、また、よー分からんのや」
最近は活動が突然活発になっとるし、管理局に長年敵対しとるのに、何も分かっとらんのや」

「パンドラですか、有名な反管理組織ですね。
……あれ、もうこんな時間ですよ」

「ほんまや。流石にそろそら帰らなあかんね。
……おっとっと」

「はやて姉さん、足取りが危なっかしいよ。
………………流石は八神家」

と、ふらつく はやて を"支える"ヴェル。

「シャマルに連絡とってあるから、一緒に帰ってください」

「おー、気が利くなあ」

「……まあ、慣れてますから」とナナシ。

「すみませーん! はやてちゃんを迎えに来ましたー!」

店の外から、迎えの声がした。

「いいタイミングだ。ヴェル、お願いできるか?」

「任せてください」

はやて を補佐しながら、店の外へと向かうヴェル。

「じゃあ、ナナシさん。ほななー」

「次はお菓子を買いに来てくださいね」

はやて にさよならをすると、ナナシは後片付けにはいった。

「閣下、これでよろしかったのでしょうか?」

戻ってきたヴェルは、今までとは違う、軍人のような無感情の口調であった。

「ヴェル、お前の気にする事じゃない」

「ですが……」

「くどいぞ、ヴェル・レーヴァテイン・メルキュール」

すっと目を細めるナナシ。

「も、申し訳ありません!」

「いや、今のは俺が悪かったな。
最近はこんな調子ばかりだ」

「……上手くいっていないのですか?」

「ああ。スカリエッティめ、評議会の小僧どもを殺るなんてな。
おかげでこちらの"真実"を知る者は管理局にいなくなった」
それに……第120観測世界に管理局の調査隊が降下した」

「馬鹿な!? あ、いえ、すみません。ですが条約は? 条約はどうしたのですか?
あれの危険性は高すぎます。我ら一族と閣下で──」

「所詮は秘密条約に過ぎない。有ってない様なものだということか。
あれの存在は危険すぎる。その為にこそ、我々の幹部と管理局側が水面下で接触する。
多少の譲渡は仕方あるまい。
……時間をかければ、"ネオ・ワールド"の連中が動き出す」

もしもこの接触に失敗したら、と続けるナナシ。

「あれの封印の為の独自の道を進む」

「戦争……ですか?」

不安そうな顔をするヴェル。
ナナシはそんなヴェルの頭をポンポンと優しく叩く。

「そうさせない為に、代表として俺も出る」

「そんな、危険すぎます!」と声を荒げるヴェル。

その表情にはあせりが見て取れた。

「管理局が何度閣下を暗殺しようとした事か!」

「ああ、分かってる」

「分かっていません!
もし閣下に何かあれば、彼らは間違いなく報復するでしょう。
それは──」

「次元世界を巻き込んだ戦争になる、か。
いざとなったら、そっちのプランも考えてるよ」

「閣下!」

ヴェルは怒りを露わにする。
自身の命をも道具として考えるナナシに、ヴェルは怒りを感じた。

「少々長く生きすぎたのだ」

ヴェルの怒り……それと悲しさ、寂しさに満ちた目を見ながら、ナナシは口をあける。

「多くの人が、世界が、文明が消えていった。
俺の存在を知るものは、過去を知るものはもう──」

ナナシはそこでやめた。どうでもいいことだ。

「とにかく、俺も出る。これは決定事項だ。
どうせ精神は死にはしないんだ、肉体が死んでもいいだろう」

自暴自棄とも取れるその言葉に、ヴェルはもう反論しなかった。

「彼女らと再会したのもまた、運命だろう」

「私は──」とヴェル。

「運命は嫌いです」

「俺もだ」とニカッと笑うナナシ。




次元世界に新たなる風が吹こうとしていた。
その風が平和をもたらすのか、はたまた動乱をもたらすのかは、まだ誰にも分からない。








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