グランパスでの最後のゲームを終え、サポーターから寄せ書きのボールを受け取り涙ぐむ杉本=カシマスタジアムで
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2冠ならず−。今季J1王者の名古屋グランパスは鹿島に1−2で競り負け、ベスト4進出はならなかった。史上初の3連覇を狙うG大阪は浦和を2−1で退け、5大会連続の準決勝進出。このほか清水、来季2部(J2)に降格するFC東京が勝ち、29日の準決勝は鹿島−FC東京、清水−G大阪の顔合わせとなった。
◆鹿島2−1名古屋
試合終了の笛と同時に、背番号「19」が芝生の上に崩れ落ちた。2冠の夢と同時に、杉本のグランパスでの6年間が終わりを告げた。増川と中村に引き起こされ、「ありがとう」と声をかけられると、涙をこらえられなかった。
「最後の最後まで、『(点を)とってくれ』という気持ちのこもったパスをたくさんもらった。決められなくて悔しいし、正直、もっとこのチームでやりたかった」
一分、一秒でも長く、赤いユニホームを着ていたい。その一念でピッチを駆けた。最大のチャンスは1−2の後半35分、金崎のシュート性の折り返しを逆サイドで詰めた。だが、この時すでに両足がつっていた。「力が入らなかった」という一撃は、ライン際で新井場にクリアされた。「僕が決めていれば勝てた。きょうは全部僕のせい」と悔しさを隠せなかった。
負傷などで主力5人を欠く苦しいメンバー編成。最後は力尽きたが、杉本は熱い思いを体現した。
誰よりサポーターを愛し、愛された。チームバスがスタジアムを出発する際も、杉本コールはやまなかった。観客席で見守った父・俊一さん(60)は「応援してくださった皆さんには涙が出る思いです」と目を細めた。
試合後の控室で、杉本は楢崎から「お手柔らかに」と声をかけられた。来季に向けては甲府、徳島、熊本の3クラブからオファーが届いている。今後は対戦相手となるが、「もっとステップアップして、またグランパスに戻ってきたい」。名古屋を沸かせたスピードスターの新たな挑戦。「僕と対戦するときは、ブーイングは好きじゃないので、あたたかく迎えてほしい」。もう涙はなかった。
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