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11年度税制改正:予算編成、誤算続き 減税財源、穴埋めに苦心--大綱

 法人税の実効税率5%の引き下げが、減税分を穴埋めする財源が足りないままの「実質減税」で決着したことで、11年度予算編成の困難さが一段と増している。財務省は国債発行を約44兆円以下に抑える財政ルールを堅持する構えだが、証券優遇税制の打ち切りなど、増税を見込んでいた項目が次々に覆るなど誤算が続いており、穴埋めに頭を悩ませている。

 「(国債44兆円枠は)基本中の基本方針。相当厳しいが、ぎりぎりの努力をする」。野田佳彦財務相は14日の会見で、苦渋の表情を浮かべた。

 法人税について同省は、企業関連の税制優遇措置廃止などによる代替財源の確保で減税に伴う減収分を全額穴埋めするよう経済産業省に求めてきた。だが、経産省が提示した財源は6500億円規模にとどまり、約1・5兆円の減税額を大きく下回った。差額は、相続税など本来無関係の個人向け増税で埋め合わせる努力をするが、全額の穴埋めはほぼ不可能な状況だ。

 11年末の打ち切りを目指していた証券優遇税制も、金融庁や国民新党の抵抗で2年延長となり、2000億円規模の増税が吹き飛んだ。子ども手当を11年度から上積みするための財源と見込んでいた配偶者控除の縮小も、民主党の強い反対で見送られ、給与所得控除縮小による約1200億円を回さざるを得なくなった。

 税制以外でも、基礎年金の50%国庫負担について、財務省は「財源が確保できない」として、11年度は08年度以前の36・5%に戻すことを厚生労働省にいったん提案した。しかしこれも、首相の指示で一時的財源で50%を継続することになった結果、2・5兆円の財源確保が必要になっている。財務省幹部は「社会保障費の自然増などもあり、歳出削減での財源確保も限界」と悲鳴をあげる。

 政府は6月に閣議決定した財政運営戦略で、国債発行枠に加え、新たな減税にはそれに見合う恒久財源を確保するとする「ペイ・アズ・ユー・ゴー原則」を決めた。だが、玄葉光一郎国家戦略担当相は14日の会見で「ペイ・ゴー原則にこだわるよりも、(国債44兆円枠の)ルールを守ることで、財政規律を保つ方が大切だ」と述べ、同原則を棚上げすることを正当化した。

 ただ、特別会計の埋蔵金や税の自然増収、予備費の先食いなど、一時的に見込める財源によって来年度は44兆円枠を達成できても、新たな恒久財源を確保しない限り、財政規律の維持は難しそうだ。【坂井隆之】

毎日新聞 2010年12月15日 東京朝刊

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