2010年12月24日 23時40分 更新:12月25日 1時33分
「日本全体が閉塞(へいそく)感に覆われている状態を、突破する予算を組んだ」。24日夜の記者会見で菅首相は、閣議決定したばかりの11年度予算案を自賛した。
長引くデフレや円高で、日本経済の停滞感が強まる中、菅首相は11年度予算案を「民主党政権として正念場となる本格予算」と位置づけていた。限られた財源の中、「予算の大幅組み替え」で、菅政権の看板である成長戦略への重点配分を指示。省庁に既存の予算を一律1割削減させ、浮いた財源を成長戦略に振り向ける「特別枠」を創設し、財源の壁を突破しようと試みた。
これに対し、防衛省や文部科学省など人件費が大半を占める省庁は、1割の経費削減に抵抗。結局は2.1兆円の特別枠に、教員人件費や在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)など従来通りの経費が入り込み、「組み替え」は限定的なものにとどまった。桜井充副財務相は2日の記者会見で「民主党がマニフェストで掲げていた、(予算の組み替えなどにより10年度からの4年間で)16兆8000億円の財源が出てくるという前提は崩れている」と、民主党の財源捻出策の破綻を公式に認めた。
予算組み替えが進まない背景には、国の歳出構造が硬直化していることがある。社会保障費は、高齢化に伴う医療費などの増加で、11年度は前年度比1.4兆円増の28.7兆円にまで膨張。消費税を含む抜本的な税制改革抜きでは、毎年1兆円余り増える社会保障費を、他の予算削減で吸収しなくてはならない。菅首相は24日の会見で「財政規律の約束はしっかり守ることができた」と強調したものの「成長戦略、教育、環境など投資しなくてはならない分野は多く、削り込みには限界がある」(財務省幹部)のが実情。新規国債発行額が税収を上回る危機的状況に2年連続で陥る結果になった。
政府は11年半ばまでに社会保障と消費税を含む税制の抜本改革に向けた具体案を作り、12年度にも実行に移す構え。菅首相は会見で「年明けから、私も未来に向かっての方向性を国民に申し上げたい」と述べ、年頭の記者会見などで、消費税増税の必要性を説明する可能性を示唆した。だが、「支持率低迷で求心力が低下する首相が、国民の反発が避けられない増税を背負えるのか」(民主党中堅議員)と懐疑的な見方は根強く、閉塞状況を打破できる見通しは立っていない。