2010.12.25 05:00
2011年度予算案には2つの大きな課題があった。一つは、限られた財源の中で真に必要とする分野への「選択と集中」を実現することであり、もう一つは、財政再建の道筋をつけて、将来世代への負担の先送りを防ぐことであった。しかし両方とも対応は不十分である。
選択と集中については「元気な日本復活特別枠」を使って財源を優先的に配分しようとしたが、その中には在日米軍の駐留経費負担など、どう考えても「元気な日本」とは無縁の政策が含まれている。制度設計の見直しが必要だろう。子ども手当などマニフェストへのこだわりが依然残っているのも気になる。経済社会情勢の変化に合わせてマニフェストそのものを思い切って見直すべきだろう。
財政再建では、国債発行額を前年度並みに抑えてはいるが、埋蔵金頼みの面が強く、「その場しのぎ」の感が否めない。このままいけば来年は完全に予算編成が行き詰まる。早急に消費税率の引き上げに向けた議論を本格化させる必要がある。
将来世代負担の軽減は喫緊の課題である。日本における現在世代と将来世代との負担の格差は、ほかの国々に比べて飛び抜けて大きい。これこそが是正すべき「真の格差問題」である。この点については、物価下落に沿って基礎年金の支給額を減額したことは評価されるが、高齢者医療制度の見直し案は、むしろ勤労世代の負担を高め、格差是正に逆行している。
今後問題になるのは、予算関連法案をめぐって国会審議が混乱し、政治情勢が不安定化すると、それが経済にもマイナス要因となりかねないことだ。与野党は熟議を尽くし、国民に迷惑をかけないようにしてほしい。(寄稿)