民主党政権が初めて、編成の全段階を手がけた11年度予算案。だが、子ども手当の上積み分や基礎年金国庫負担などの財源探しに追われ、菅直人首相の掲げる「経済、財政、社会保障の一体改革」を実現したとは言い難い内容となった。与野党が逆転するねじれ国会の下で予算案の成立も危うい状況で、政権の行き詰まり感は色濃くなっている。
「日本全体が閉塞(へいそく)感に覆われている状態を、突破する予算を組んだ」。24日夜の記者会見で菅首相は、閣議決定したばかりの11年度予算案を自賛した。
長引くデフレや円高で、日本経済の停滞感が強まる中、菅首相は11年度予算案を「民主党政権として正念場となる本格予算」と位置づけていた。限られた財源の中、「予算の大幅組み替え」で、菅政権の看板である成長戦略への重点配分を指示。省庁に既存の予算を一律1割削減させ、浮いた財源を成長戦略に振り向ける「特別枠」を創設し、財源の壁を突破しようと試みた。
これに対し、防衛省や文部科学省など人件費が大半を占める省庁は、1割の経費削減に抵抗。結局は2・1兆円の特別枠に、教員人件費や在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)など従来通りの経費が入り込み、「組み替え」は限定的なものにとどまった。桜井充副財務相は2日の記者会見で「民主党が掲げていた、(予算組み替えなどにより)16兆8000億円の財源が出てくるという前提は崩れている」と、財源捻出策の破綻を公式に認めた。
予算組み替えが進まない背景には、国の歳出構造が硬直化していることがある。新規国債発行額を前年以下にするなどとした予算編成の基本方針を守れたことから、菅首相は24日、「財政規律の約束はしっかり守ることができた」と強調したものの、社会保障費は、高齢化に伴う医療費などの増加で、11年度は前年度比1・4兆円増の28・7兆円にまで膨張。今後も毎年1兆円余り増える社会保障費を、他の歳出削減で吸収できない限り、消費税を含む抜本的な税制改革は避けて通れない。【坂井隆之】
毎日新聞 2010年12月25日 東京朝刊