社説
政府予算案/安定財源確保が焦眉の急だ
民主党政権が初めて一から編成を手掛けた今回も、財源確保にきゅうきゅうとした。 予算の組み替えや無駄の徹底排除による捻出は不十分で、虎の子といえる特別会計の「埋蔵金」をほぼ掘り尽くすことで賄わざるを得なかった。地方へのしわ寄せともなりかねない公共事業費削減などで埋め合わせを図り、やっと帳尻を合わせた。 2011年度政府予算案は、そんな窮余の末に出来上がったといえる。 年金・介護といった社会保障関係費の自然増を抑制しない。子ども手当を含むマニフェスト(政権公約)関連事業費は上積みしたい。一般会計総額が92.4兆円と過去最大に膨れたのは、そうした「人」を重視する政権交代後の看板を維持するための歳出増は容認したからだ。 一方で、歳入は2年続けて借金である新規国債発行額が税収額を上回る異常な構図。借金まみれの状態から抜け出せない。 埋蔵金は枯渇寸前にある。マニフェスト関連事業を見直したとしても、社会保障費が毎年1兆円規模で膨らむ中、小手先の財源操作ではもう持たない。財政構造の改善を図るため、安定財源の確保は焦眉の急である。 「財政再建と経済成長の両立」は、国内外に対する菅直人政権の公約だ。 6月に決めた財政運営戦略で11年度予算の目標とした国債発行額44.3兆円以下は、埋蔵金のおかげで辛うじてクリアした形だ。借金の返済である国債費を除く歳出を71兆円以下に抑えるという目標も達成し、歳出増に一定の歯止めはかけた。 一方の経済活性化はどうか。政府は予算編成の基本方針で「成長と雇用」を最大のテーマに掲げた。そのために設けたのが「元気な日本復活特別枠」だ。 アジアの活力を取り込むインフラ輸出事業や地方活性化に資する高速道路未整備区間の整備事業、最低賃金引き上げに向けた中小企業支援事業も盛り込まれた。新成長戦略実現に向け道筋をつけ、雇用の安定・賃金増を目指そうとの意図は伝わる。 だが、小学1年生の35人学級化に伴う教員増経費なども含まれ予算枠が拡大。首相が配分を決めるとしながら、なたを振るった形跡はうかがえない。 デフレからの脱却には思い切った需要と雇用の創出が必要だ。国内でどんな新しい産業をはぐくむのか。特別枠に、そうした施策が乏しいのは残念だ。 財政も成長も、今後のことを考えれば、心もとない予算と言わざるを得ない。 恒久財源の手当てを条件にした基礎年金の2分の1国庫負担に必要な約2.5兆円も、3年続けて埋蔵金など臨時財源頼みとなった。今から12年度予算編成が危ぶまれる。 社会保障の機能強化は、国民生活の安定と将来の安心を担保し、消費を促す点でも「成長と雇用」の前提となる。政府は11年度半ばまでに、社会保障改革と税制改革を一体で進め結論を得る方針だ。財政再建に向け安定財源を確保するためにも、政府与党は議論を急ぎたい。野党にも責任ある対応が望まれる。
2010年12月25日土曜日
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