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2011年度政府予算案が閣議決定された。民主党政権にとっては初めて一から取り組んだ当初予算案である。
一般会計は過去最大の92兆4千億円。子ども手当の上積みなどマニフェスト(政権公約)の実行や社会保障費の増加が押し上げた。全体として総花的でばらまきの印象はぬぐえない。
「予算編成の基本方針」では、重要政策として子育て支援、農業予算、雇用対策、一括交付金の四つを挙げていた。
子ども手当は3歳未満への支給額を7千円上積んだ。農業予算は農家の収入を下支えする戸別所得補償を拡充。雇用対策では新卒者らを対象にする就職支援対策費を倍増させた。
地方を元気にしようと導入したのが一括交付金である。自治体の裁量で使い道を選べる。政府が使い道を限る従来の「ひも付き補助金」は段階的に廃止するという。地方交付税も自治体への配分額を増やしている。
いずれも政権公約の柱だけに曲がりなりにも目配りしたようだ。
実質5%減となった公共事業の中で、突出しているのが自治体の要望の強かった道路整備である。本年度並みを確保し、高知県などで高速道路の新規整備を認めた。無料化実験も続ける。来年の統一地方選を意識した大盤振る舞いと言われても仕方あるまい。
歳出全体の3割を占める社会保障費では、基礎年金の2分の1の国庫負担をかろうじて維持した。来年度も財源の2兆5千億円を「埋蔵金」に頼る綱渡りが続く。
菅直人首相のもう一つの触れ込みが「元気な日本復活特別枠」である。各省庁に一律10%削減を求める代わり、それを財源に「政策コンテスト」を経て経済成長や雇用拡大に結びつく事業に重点配分するはずだった。
しかしふたを開けてみると、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)も含めて計上している。どう「元気な日本」につながるのか説明してもらいたい。
歳入はどうか。新たな国債発行額は本年度並みの約44兆円。一方、税収は約41兆円にとどまるという。新規の借金が税収を上回る異常事態は2年連続となる。
借り換えなどを含めた国債の発行総額は過去最大の170兆円程度に膨らむ見通しだ。巨額の借金に頼る予算はもう限界だろう。
政府は6月に「財政運営戦略」を閣議決定。国債の利払い費などを除く歳出を71兆円程度に抑える方針を示した。今回はかろうじてこの数字をクリアしている。ただ、かき集めた埋蔵金で帳尻を合わせた感が否めない。
日本は先進国でも最悪の財政状況にある。次世代へのつけ回しをこれ以上増やしてはならない。政府・与党は抜本的な財政再建に向けた対策を示し、国民的な議論を巻き起こす必要がある。
予算案は公約の「全面組み替え」とはほど遠い。政権として何をやりたいのか、優先順位をはっきりさせるべき時だろう。
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