政権交代2年目の今年も財源探しで混迷した。無駄の削減は進まず、予算の大胆な組み替えも掛け声にはほど遠い。
予算編成過程を透明化する狙いはいいが、逆に国民の目には「継ぎはぎだらけの帳尻合わせは、もう限界」という現実だけが見える皮肉な結果になった。
菅直人内閣が決定した2011年度政府予算案の中身は、成長戦略にも財政再建にも力不足で、目指した政治主導の予算編成は空回りのまま終わった。
一般会計総額は、子ども手当など公約政策や成長戦略の予算拡充などで92・4兆円と2年連続で過去最大となった。ただ、政府が財政運営戦略で初めて決めた二つの財政健全化目標は守られた。
借金の新規国債発行額は、44・3兆円を切って本年度を50億円下回り、「約44兆円以下」とした目標をどうにかクリアした。国債費を除く「歳出の大枠」は70・8兆円強と、これも「約71兆円以下」の目標をかろうじて達成した。二つの政府目標は、財政規律を保つための最低限の条件だけに堅持は当然だ。
とはいえ、税収が本年度より3・5兆円増え、40・9兆円を超す見込みにもかかわらず、国債発行額はわずかしか減らせなかった。無駄削減への切り込み不足の裏返しだろう。2年連続で借金が税収を上回る異常事態も続く。しかも、なお不足する財源7・2兆円は「霞が関埋蔵金」に頼る構造も相変わらずだ。
その中で、ばらまき批判のある子ども手当や農家の戸別所得補償の予算は拡充した。恒久財源なき公約政策が財政規律を危うくする姿もより鮮明になった。
政府は来年度予算案は「成長と雇用」が最大のテーマと強調する。それを具体化するはずの「元気な日本復活特別枠」には、在日米軍への思いやり予算なども含まれた。予算額も当初想定した1・3兆円から2・1兆円に膨らんだ。
本来なら、閣僚が政策の優先順位を決め、首相が大胆に予算の組み替えを主導すべきだった。だが、首相が指導力を発揮したとは言い難い。特別枠が成長や雇用にどうつながるかも説明不足だ。
税制改正の目玉の法人税減税は、それに見合う財源が捻出できず、首相が決めた財源確保ルールを自ら放棄した形だ。これでは財政規律は保てない。注目された基礎年金の国庫負担率は、首相の表明で現行の50%を維持したが、この財源も1年限りの埋蔵金をかき集めた。
だが、その埋蔵金も底をついた。その場しのぎの展望なき財政は破綻する。
まず公約政策の見直しが先決だ。無駄削減も成長戦略も重要だが、毎年1兆円規模で膨らむ社会保障費を賄い、同時に財政再建を果たすのは至難の業だ。
政府は先日、来年半ばまでに税と社会保障の一体改革の具体案をまとめる方針を決めた。もはや、社会保障の安定財源と見込める消費税の増税論議に取り組むしか道はない。予算編成の迷走劇は、そう悟らせるには十分だったろう。
=2010/12/25付 西日本新聞朝刊=