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福岡・太宰府の車衝突転落:2台並走中に衝突か 重体乳児も死亡 死者計7人に

 福岡県太宰府市の県道で24日深夜、乗用車と衝突したワゴン車が池に転落した事故で、死亡した同県八女市黒木町湯辺田、アルバイト、山本翔さん(18)の息子で、意識不明の重体だった悠斗(ゆうと)ちゃん(生後6カ月)が事故から約19時間半後の25日午後7時10分ごろ、搬送先の病院で死亡した。死者はワゴン車の山本さんら10代の男女5人と悠斗ちゃん、乗用車を運転していたとみられる太宰府市青葉台4、アルバイト、秦(しん)智之さん(26)の計7人になった。

 県警筑紫野署は25日、事故車両を実況見分して詳しい原因などの調査を始めた。現場は片側2車線の緩いカーブ。乗用車の左前部、ワゴン車の右側面に車同士が衝突したような損傷があるため、同署は2台が同じ方向に並走中に衝突した可能性が高いとみている。ワゴン車から脱出した男性2人から事情を聴いて調べている。

 県警によると24日午後11時40分ごろ、同市向佐野(むかいざの)の県道を筑紫野市方面から福岡市方面に走行していたワゴン車と乗用車が衝突。ワゴン車が道路左側の柵を突き破り篠振池(しのふりいけ)に落ちたとみられる。ワゴン車には定員7人を超える9人が乗車していた。捜査関係者によると定員オーバーの場合、衝突の衝撃が比較的小さくてもバランスを崩しやすいという。

 ワゴン車に乗っていたのは、10代の友人グループ8人と悠斗ちゃんの計9人。ワゴン車は脱出した男性の父親名義だった。【金秀蓮、関谷俊介、川名壮志】

 ◇「取り返しのつかないことに」

 生徒3人が亡くなった福岡県八女市本町の県立八女農業高校(457人)は25日午前、教職員47人を集めた緊急職員会議で対応を協議した。午後からは高山謙一校長(58)と待鳥(まちどり)順二教頭(55)が会見。高山校長は「冬休みのいい思い出を作り、始業式で再会しようと約束したばかり。非常に残念。取り返しのつかないことになった」と動揺した様子で話した。

 待鳥教頭によると、亡くなった3人は仲良しグループ。井手さんは同県広川町の病院に看護助手として就職が決まっていた。末吉さんは航空業界への就職を目指し、福岡市の専門学校へ進学するはずだった。石原さんは歯科医院の助手を希望していたという。

 同校では、24日の終業式では、深夜の出歩きや生徒同士での旅行を慎むよう注意していた。臨床心理士による生徒の心のケアも予定している。【松尾雅也】

 ◇仲間失い終始無言

 池に落ちたワゴン車から自力で脱出した堀川達也さんは25日昼過ぎ、事情を聴かれた筑紫野署から帰宅した。父親によると、車の中では、堀川さんは終始無言でうつむいていたという。父親は「本人にけがはなかったが、仲間を失ったショックが大きいようで、私たちも事故のことは何も聞けないんです……」とやつれた表情で話した。【丸山宗一郎】

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 ◆事故に遭った方々(敬称略)

 【死亡】<ワゴン車>井手綾美(17)=福岡県八女市黒木町木屋▽石原瞳(18)=同県久留米市荒木町藤田▽末吉泰子(18)=同県筑後市山ノ井▽佐藤慎一郎(18)=八女市黒木町大淵▽山本翔(18)=同市黒木町湯辺田▽山本悠斗(生後6カ月)=同<乗用車>秦智之(26)=同県太宰府市青葉台4

 【救助】<ワゴン車>山本佑紀(18)=八女市黒木町湯辺田▽木村光志(18)=同市黒木町本分▽堀川達也(18)=同市黒木町大淵

毎日新聞 2010年12月26日 東京朝刊

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