2010年12月25日22時39分
松本照玲紗ちゃん(右)は父親の隆さん(中央)と一緒におにぎりを差し出した。サンタの帽子はレストランでもらった「おまけ」だ=25日夜
猛暑日が続く今年7月下旬、いつものようにおじさんに声をかけたが反応がない。額に脂汗を垂らしてうなだれ、会話できずに別れた。2日後、隆さんは別の路上生活者から告げられた。「救急車で病院に運ばれて、それきりだよ」。名前も年齢もわからないままのふれあいだった。
照玲紗ちゃんは今でも、あの軒下を通るたび思い出を口にする。隆さんはおじさんを支え切れなかった現実に「自分にできることはあまりに小さい」と迷うこともある。
おにぎりを渡し終えた帰り道。照玲紗ちゃんは冷たくなった指で隆さんの手をつかんだ。「パパ、おうちに戻ったらお風呂に入ろうね」。うなずきながら、隆さんは思う。
また、明日も行こう。(乗京真知)