• 辞書 >
  • JAPANなニュース
ニュースな英語 政治、経済、社会、文化スポーツまで、幅広いジャンルのニュース記事を題材に、優しくて役に立つ英語の表現を紹介します。

RSSMANGAやANIME規制の都条例に英語メディアは
RSS

本日の言葉「soft power」(ソフトパワー)
(2/2ページ)
前述の『ロサンゼルス・タイムズ』紙記事では、記者が新宿の紀伊國屋書店の漫画コーナーへ赴き、「題名を眺めていると、漫画ファンはどういうテーマが大好きなのか分かってくる。恋愛もの、時代活劇、そして裏切りだ。しかしぎゅうぎゅう詰めの書棚の上を見上げるとそこには、『成人漫画(adult manga)』と書いてある。東京都の都議会議員たちが子供たちに読ませたくないと思っているのは、この成人漫画の中にあるハードコアな部分、強姦や近親相姦など性犯罪行為を描いたものだ」とリポート。

この記事も、石原都知事の「当たり前だ。日本人の良識だよ。自分の子供にあんなもの見せられるのかね」という発言を紹介しつつ、青少年を守るための規制はすでに存在しているので、新しい規制は「政治家たちが表現の自由を規制しようとしている」証だという反対派の意見も並列しています。今回の改正条例を使えば当局が「inappropriate(不適切)」と判断するあらゆる本や映画やゲームを規制することができると反発する声があり、この条例を使って演劇や絵画などほかの表現手段をも規制することになりかねないという懸念もあるのだとも。たとえば、この条例が「作家たちの創造性を萎縮させるのが最悪だ。作家たちが豊かな想像力をもつからこそ、日本の漫画やアニメは世界中で多くのファンを引きつけている」と、元編集者でマンガ文化論を専門とする明治大学の藤本由香里准教授によるコメントを紹介しています(こちらの藤本氏の発言文言は、私が英語から日本語訳したものです)。

前述の『インディペンデント』紙はマンガ文化についてさらに詳しく、大人も子供も読む日本の漫画は「メインストリーム文化の一部で、ビジネスや戦争、政治といった複雑なテーマも探求する。トルストイの『戦争と平和』やヒットラーの『わが闘争』、シェイクスピアの『リア王』に加えて、最近ではマルクスの『資本論』も漫画化された」と紹介。しかしそればかりでなく、「日本の書棚は恋愛ものや文学的なマンガでひしめいているが、保守派は昔からマンガというジャンルの片隅にいるハードコアな非主流派を問題視してきた。その中ではフェティッシュや暴力的な性行為、近親相姦、そして子供のような女性をエロティックに描いたいわゆるロリータ・ポルノなどが題材となることが多い。『ボーイズ・ラブ』と呼ばれる若い女性向けのジャンルでは、若い男性同士の理想化された同性愛関係が性的に描かれる。こういう内容のものが子供にどういう影響を与えるか、もう何年も議論が重ねられてきた。日本におけるいくつかの悪名高い連続殺人事件では、暴力的なマンガやアニメの影響が裁判で取り上げられたが、性犯罪や凶悪事件は日本では比較的少ない」とも、説明しています。

アメリカのリベラル系ニュースブログサイト『ハフィントン・ポスト』では、読者のコメント欄が活況を呈していて、Manga やAnimeの浸透ぶりをうかがわせます(日本の漫画やアニメの中でもハードコアというか相当にひどい部類のものを見てきた人というたちも、何人か書き込んでいます)。それでも「何を子供に見せるか見せないか、公権力が決めることではない。検閲は徐々に拡大する。表現の自由が徐々に奪われていかないか」と懸念する意見と同じくらい、「過激なポルノを18歳未満の子供に見せないのは当たり前」という意見も並んでいて、この辺の両論併記ぶりが日本でもアメリカでもおおむねの「世論」なのではないかなと思わせられます。

ちなみにあくまでも参考として、暴力描写や性描写の業界自主規制が日本よりはるかに厳しいアメリカではどうかというと、まずポルノは表現の自由を保障する憲法修正第一条に保護されているが、「obscenity(わいせつなもの)」はその保護を制限されるというのが大前提としてあります。何が「わいせつ」かは「一般的に現代の社会規範に照らし合わせて扇情的と判断されるもの」という今回の都条例と似たような基準が一般的ですが、加えて「作品が全体として芸術的・政治的・科学的価値をもたない」という要件も必要とされるというのが通説のようです。そして子供に有害(harmful to minors)な内容のものを年少者(minors)に見せてはならないという点に、議論はありません(これはおそらく日本でも)。

つまり問題は、何が「現代の社会規範に照らしあわせて扇情的と判断される」のか。都条例の文言を借りれば何が「社会規範に反する内容を不当に賛美・誇張する描写」に相当するのかを、誰がどう判断するのか。この「誰がどう」について、日本では多くの漫画家やアニメ作家が東京都をまったく信頼していないというのが、東京都によるマンガアニメ規制の根本問題なのだと思います。

*****

以下は補足です。アメリカで、表現の自由か青少年保護かで長年議論されてきたのは、ポルノを18歳未満に見せるかどうかではなく(見せないのが当たり前なので)、児童ポルノの被写体にされてしまう子供をどう保護するかが中心です。児童ポルノの頒布や入手希望を法制で禁止するのは、表現の自由を保障する憲法修正第一条に違反するものではないというのが2008年の最高裁判例です。

一方で、本物の18歳未満の子供を被写体にしたわけではない「virtual child pornography」(バーチャルな「非実在」児童ポルノ)については、この頒布・所持を禁止する1996年の連邦法について、「規制の文言が曖昧で創作活動を萎縮させる」という市民団体の訴えが認められ、2002年に最高裁で違憲判断が下されています。18歳未満への頒布は、州法レベルで規制できるというのが通説のようです。

こうしてアメリカの事情を調べていたら、イギリス政府は若年者がインターネットでポルノを閲覧できないようにするため、ブロードバンドプロバイダーに自主規制を要請する方針だというニュースが流れてきました。認証をいくつも経ないとポルノ・コンテンツがブラウザに表示されないようにするなどの対応を、業界に求めており、業界側も前向きに検討しているとのことです。つまり、「青少年の健全育成」のための表現規制というのは、政府が強権的に業界を敵に回してやるべきことではないのだという、これに尽きます。


関連ニュース

加藤祐子

執筆者:加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイト「CNN.co.jp」で 2000年と2004年米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。最新の訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」(朝日新聞出版)。



便利なツール
注目 スマートフォン版goo辞書
国語・英和・和英辞書を搭載
注目 goo辞書Twitter
漢字クイズや「今日の名言」配信中
注目 goo辞書 for IE8
IE8 日本語版 RC1 アクセラレータ機能に対応しました!
注目 goo複合検索
「ウェブ検索」「教えて!goo検索」「goo辞書検索」など、6種類の検索結果を一画面内で閲覧できます!
注目 gooスティック
バージョンアップしたgooスティックからgoo辞書が利用できます!
注目 Googleツールバーカスタムボタン
Googleツールバーからgoo辞書が利用できます!
注目 goo辞書ブログパーツ
ブログでいつでも辞書検索!
注目 Firefox対応 goo辞書アドオン
Firefox検索プラグインからgoo辞書検索が簡単便利に!
gooのお知らせ
将来のライフプラン教えて!goo見て見ぬふり!?将来のライフプランと“お金のこと”
050あんしんナンバー特集誰にでもあんしんして教えることができるもうひとつの電話番号「050あんしんナンバー」特集
プリンターで年賀状作成教えて!goo今年もこの季節がやってきました。知ってトクする!べんりQ&A“プリンターで年賀状作成”特集
キッズgooキッズgoo最近、子どもの笑顔を見たのはいつ?「パパ、ありがとう!」そんな顔を見たいなら、こんなプレゼントも。