資産劣化進む農林中金の命運
農水省と金融庁が責任のなすり合い【金融ジャーナリスト匿名座談会】
(前略)
C とにかく金融分野は厳しくなっている。筆頭は農林中金だろう。公的資金注入のための金融機能強化法の復活で、政府・与党が農林系金融機関も対象とすると言い出した理由は明らかだ。公的資金を注入しないと、まずいことになるからだ。
A それに対して、民主党が「待った」をかけたのも正しい。もはや悲惨なほど資産が劣化しているからね、農林中金は。その実態が明らかにされないまま、公的資金で解決というのは筋が通らない。というか、そんな話を通してはいけない。
B 農林中金の自己資本は4兆円程度だが、表向きだけでも証券化資産の規模は6兆円を大きく超えている。しかし実際にはその規模をはるかに超えた問題資産を保有している。結局、資産のロス率が問題となるんだが、証券化資産の場合、五〇%以上のロス率が当たり前だ。すると、表向きの数字だけでも3兆円以上のロスが出る。実際はそれを大きく超えているだろうから、自己資本がほとんど食われてしまうという話だ。
C 政府は金融機能強化法の予算規模を2兆円から突然、10兆円に引き上げると言い出した。あれは農林中金対策ということだ。
A しかし世間ではちょっとした勘違いがあって、農林系も公的資金の対象にするというと、JA(単位農協)の経営が悪化していて、そこに公的資金をぶち込むための方策だと思っている人がいる。もちろん経営が悪化しているJAがあってもおかしくないんだが、目下、火がついているのは農林中金だ。
B その農林中金が傘下の信連を引き受け先として増資をするという話があるけど、え? という感じだ。それってファミリー増資でしょう。つまり親会社が子会社を相手に第三者割当増資をするようなもの。そんな増資が許されていいのかという話だ。
C 金融機能強化法の復活問題をきっかけに、金融庁と農水省の関係が悪化している。金融庁はこの問題を利用して、農水省の所轄を外して、自分たちの完全監督下に農林系を置こうと画策している。それに農水省が反発しているわけだ。なんとも平和なことだが、実際には、それとは別の事情もある。
A どういうこと?
C 権限の綱引きの前に、どちらに責任があるかということだ。
B なるほど、農林中金が経営悪化した責任のなすりあいということか。
C そう。金融庁としては、監督すべき農水省がダメだったから、農林系がああなった。悪いのは農水省で、だから自分たちが100%監督するようにしないといけないという論法。チャンピオンベルトを獲るには、まず相手を倒さないといけないということだ(笑)。
B しかし、そんなことをやっている場合なのかね。(後略)
|