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2008年12月号
Yl_pin.gif (1016 バイト) 政 治

与党内でも浮く「麻生・弱体官邸」
「話が通じない」と焦る小沢【永田町25時】

 小沢一郎の焦りが日々強まっている。年内に衆院解散に持ち込む目論みが崩れそうだからだ。首相の麻生太郎は解散権を持つ強みを生かして、民主有利の風向きが変わるのを待つ姿勢。金融サミットのワシントンでは記者団に「解散は来年春」と言ってのけた。
 その直後の11月17日、小沢は首相官邸に押しかけて直談判。「定額給付金」を含む第2次補正予算案を開会中の臨時国会に提出するよう要求した。採決に協力すると約束し、「約束を破ったら議員を辞めてもいい」とまで言って、力づくで説得しようとしたのだ。
 小沢は、定額給付金をめぐって国会が紛糾するのは間違いなく、最終的に採決と交換条件で話し合い解散に漕ぎ着けられると確信している。だから、インド洋での給油を継続する新テロ特措法案や、中小金融機関の救済につながる金融機能強化法案の参院での採決も約束した。麻生の望みをすべて受け入れるから、国会を大幅延長して第2次補正を出せというわけだ。
 小沢のなりふり構わないやり方はいつもの通り。目的を果たすためには土下座もする。結果的に衆院解散を実現し、選挙に勝って政権を手に入れられるなら、その過程など問題ではない。だが麻生は「調整中」と曖昧に応じ、小沢を焦らせる態度を変えなかった。
 小沢が焦るのは、民主党内の事情が大きな要因だ。小沢は「年内に麻生を解散に追い込む」と断言して候補予定者を走らせた。誰もが小沢を信じてカネを使い、もはや青息吐息だ。来年になれば悲鳴が怨嗟の声に変わる。10月、11月には小沢が主役のテレビCMを打って多額の党資金を使った。反小沢グループはこれを利用して攻撃態勢をとりつつある。
 それでなくても、衆院国対委員長の山岡賢次を重用する小沢の党内運営には反発が強い。山岡は新テロ法案と金融機能強化法案を11月30日の会期末までに参院で採決すると一旦は与党に約束したが、これに代表代行の菅直人が「徹底抗戦して大幅延長させ、解散に追い込むべきだ」と噛みついた。小沢と山岡は話し合い解散が実現できると踏むが、党内は信用しないのだ。
 小沢と山岡が「話し合い解散は可能」とみるのは、自民、公明の多くの候補者が本音では早期の解散を望んでいるからだ。公明党の後ろ盾の創価学会は、都議選のある来春より前、遅くとも年明け早々には衆院選を終わらせたい。候補者の多くは民主党と同じでカネが持たない。重要法案さえ成立してしまえば、麻生がその要求を拒むことはできないという読みだ。
 だが、誤解がある。麻生官邸はいまや完全に与党内で浮いている。だから独走する。そこを小沢は理解していない。(後略)


Yl_pin.gif (1016 バイト) 経 済
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資産劣化進む農林中金の命運
農水省と金融庁が責任のなすり合い
【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
C とにかく金融分野は厳しくなっている。筆頭は農林中金だろう。公的資金注入のための金融機能強化法の復活で、政府・与党が農林系金融機関も対象とすると言い出した理由は明らかだ。公的資金を注入しないと、まずいことになるからだ。
A それに対して、民主党が「待った」をかけたのも正しい。もはや悲惨なほど資産が劣化しているからね、農林中金は。その実態が明らかにされないまま、公的資金で解決というのは筋が通らない。というか、そんな話を通してはいけない。
B 農林中金の自己資本は4兆円程度だが、表向きだけでも証券化資産の規模は6兆円を大きく超えている。しかし実際にはその規模をはるかに超えた問題資産を保有している。結局、資産のロス率が問題となるんだが、証券化資産の場合、五〇%以上のロス率が当たり前だ。すると、表向きの数字だけでも3兆円以上のロスが出る。実際はそれを大きく超えているだろうから、自己資本がほとんど食われてしまうという話だ。
C 政府は金融機能強化法の予算規模を2兆円から突然、10兆円に引き上げると言い出した。あれは農林中金対策ということだ。
A しかし世間ではちょっとした勘違いがあって、農林系も公的資金の対象にするというと、JA(単位農協)の経営が悪化していて、そこに公的資金をぶち込むための方策だと思っている人がいる。もちろん経営が悪化しているJAがあってもおかしくないんだが、目下、火がついているのは農林中金だ。
B その農林中金が傘下の信連を引き受け先として増資をするという話があるけど、え? という感じだ。それってファミリー増資でしょう。つまり親会社が子会社を相手に第三者割当増資をするようなもの。そんな増資が許されていいのかという話だ。
C 金融機能強化法の復活問題をきっかけに、金融庁と農水省の関係が悪化している。金融庁はこの問題を利用して、農水省の所轄を外して、自分たちの完全監督下に農林系を置こうと画策している。それに農水省が反発しているわけだ。なんとも平和なことだが、実際には、それとは別の事情もある。
A どういうこと?
C 権限の綱引きの前に、どちらに責任があるかということだ。
B なるほど、農林中金が経営悪化した責任のなすりあいということか。
C そう。金融庁としては、監督すべき農水省がダメだったから、農林系がああなった。悪いのは農水省で、だから自分たちが100%監督するようにしないといけないという論法。チャンピオンベルトを獲るには、まず相手を倒さないといけないということだ(笑)。
B しかし、そんなことをやっている場合なのかね。(後略)


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【企業研究】新生銀行
外人社長「迷走経営」のツケ


(前略)
 新生銀行を再上場に導いた八城は05年に社長を退き、06年には会長職も辞して、ほどなく「中国建設銀行」の社外取締役に転じた。また八城を新生銀行に招聘したコリンズも07年3月に取締役を退任した。後任に就いたのは、オーナーであるフラワーズとハーバード大学時代の学友ポルテだった。八城の退任は、新生銀行を再上場させ、再生にひとつの目途がたったためとされたが、実際はどうだったか。このまま経営を続けるのはリスクが高いとみて、身を引いたのが本当のところではなかったか。
 ポルテに引き継がれて以降の新生銀行は迷走の連続だった。その極みは、大信販(現アプラス)を買収し、同社社長の杉山淳二を新生銀行の副会長(06年に会長)に迎えたことである。旧三和銀行で頭取候補の筆頭とみられていた杉山が、アプラスに飛ばされて腐っていたところに手を差し伸べたわけだが、やがて杉山はポルテと鋭く対立する。新生銀行元幹部はいう。
「杉山氏は三和銀行の企画担当役員経験者で、行政に顔が利くという触れ込みで会長に迎えた。ところがポルテ社長は役不足とみなしたようだ」
 その杉山は、寺井宏隆(後に新生銀行専務、08年6月に退任)をはじめ三和銀行時代の部下を10人近く引っ張り、本気で再生に取り組んだが、ポルテの無能さと横暴に愛想を尽かして、今年5月、突然退任してしまう。
 前職のモルガン・スタンレー時代に「コストカッター」としてリストラに手腕を発揮したポルテは、「瞬間湯沸かし器」と渾名されるほど性格が短気で、本店19階の社長室に日本人の部下を呼んではどなり散らしていたという。当然、英語しか話さない。日本に溶け込む気などさらさらなく、オーナーのフラワーズの友人ということもあり、「新生銀行に進駐したマッカーサー気取りだった」(新生銀行元幹部)という。
(中略)
 ポルテが社長に就任して以降、新生銀行の業績は低迷したが、一方で、資本力をものをいわせてノンバンクを積極的に買収した。前述のアプラス、中堅リース会社の昭和リース、中堅消費者金融のシンキなどである。いわゆる「コンシューマー・アンド・コマーシャルファイナンス」への進出である。
 しかし、この戦略は大きな躓きを生む。出資法と利息制限法のそれぞれの上限金利の間のグレーゾーン金利の適用について、最高裁が違法判決を出し、金融庁も貸金業法と割賦販売法の改正に乗り出したからだ。最高裁判決に基づく過払い金の返還訴訟が相次ぎ、ノンバンク市場は急速に収縮していった。07年3月期には、アプラスののれん代・無形資産の償却、利息返還損失引当金など1113億円、シンキの利息返還損失引当金146億円などのコスト負担で、赤字に転落した。さらに、最後の拠り所であるリテール部門の実質業務純益も赤字に転落した。それでもポルテのノンバンクビジネスへの傾斜は止まらなかった。
 ポルテが一方で力を入れたのは、投資銀行ビジネスだった。狙いは成長分野とみられた不動産市場へのコミットメントで、米ベアー・スターンズから証券化チームを引き抜き、不動産業向けノンリコースローン(非遡及型融資)や、自己資金にレバレッジをきかせて投資するプリンシパル・インベストメント業務を展開した。この中には、破綻したパチンコ大手ダイエーの資産流動化商品もあった。
 しかし、これら投資銀行ビジネスは、海外への投融資も含め、07年夏のサブプライム問題の顕在化から暗転。不動産市場の急落も重なり、収益の嵩上げどころか損失処理に追われる結果に終わった。(後略)


Yl_pin.gif (1016 バイト)社会・文化
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「日韓海底トンネル」に潜む魑魅魍魎
北朝鮮に経済協力する「麻生」の親密会社


(前略)
今年10月10日、ソウルに韓国の全国経済人連合会会長の趙錫来ら韓国経済人15人、日本からは日本経団連会長の御手洗冨士夫、トヨタ自動車会長の張富士夫ら12人が集まり「日韓ビジネスサミット」が開催された。その席で「錦湖アシアナグループ」会長の朴三求は、日本側に海底トンネルの必要性を強く訴えた。
「韓日海底トンネルが韓中海底トンネルと繋がれば、東北アジア全体はもちろん、今後、欧州とも連結され、ユーラシア大陸を横断する大動脈が完成する」(『朝鮮日報』10月11日付)
 日韓海底トンネルは、単に日韓のアクセスがよくなるだけでなく、韓国と中国の間にも同様の構想があり、それと繋がることでユーラシア大陸を横断する大動脈が完成するというのだ。そうなれば、確かに日本側の懸念のひとつは解消される。
 日本側はこれまで、「北朝鮮が改革開放路線に転換し、韓国と北朝鮮の鉄道が連結されれば、シベリア鉄道を通じて欧州とつながる。日韓トンネルが完成すれば、日本から欧州まで陸路で連結する」と期待してきた。だが北朝鮮の改革が進む気配は一向になく、構想は幻想でしかなかった。
 しかし北朝鮮を迂回するルートがあれば話は変わる。そのためでもあるのか、10月20日、福岡市に同市と釜山市の両市長や経済人が集まり、「超広域経済圏」形成のための「経済協力協議会」を設立している。その会の参加者からも「日韓海底トンネル」の必要性が叫ばれ、韓国の国会でもハンナラ党議員から、検討の必要性が訴えられた。これに対し、大統領府の秘書室長が前向きな答弁をしている(『朝鮮日報』11月3日付)。
 一気に沸騰してきた感のある日韓海底トンネルだが、顔をしかめる向きもある。元首相の安倍晋三から「百害あって利権あり」と罵られた「日朝国交正常化推進議員連盟」(会長・山崎拓)だけではない。「新潟は面白くないでしょう」と事情に詳しい関係者はいう。
 今年9月、日韓中露の4カ国は、新潟港とロシア・ウラジオストク近郊のザルビノ港、韓国・束草港などの間に新航路を開設することに同意した。10月中に試験航海を終え、09年から本格稼動する。新潟港―ザルビノ港の新ルートは、中国とシベリア鉄道を通じて欧州へのルートにもなるため、「新潟港は活性化するし、新潟の建設会社にとっても港湾整備やインフラ整備の仕事が舞い込む」(同)と期待されている。
 新航路は別名「黄金のルート」と呼ばれているが、日韓海底トンネルが完成すれば、貨物の量は減少し、その価値は、黄金から銀、もしくは銅になりかねない。
 民主党代表の小沢一郎の夫人は、新潟の建設会社、福田組の令嬢で、現在でも福田組の大株主。そのため、「小沢代表は日韓トンネル構想を苦々しく思っているだろう」と囁かれている。
 今年3月、九州出身の議員を中心に「日韓海底トンネル推進議員連盟」(代表・衛藤征四郎)が結成された。九州出身の議員がこのプロジェクトに熱心なのは、もちろん地元経済の活性化のためだ。
 福岡が地盤の首相・麻生太郎もそれは同様。麻生は政界に転身するまで麻生セメントの社長を務めていたが、トンネル工事に伴うセメント需要の急増は、今は弟の泰が社長を務める家業の助けにもなる。
 麻生にすれば、地元の活性化、セメントの利益、政敵である小沢への牽制と一石三丁の妙手であるばかりか、もしかすると、巨額の受注にあずかるゼネコンから「感謝のお印」が舞い込むかもしれない。
 麻生セメントは2004年、社名を「麻生ラファージャセメント」に変更した。世界最大のセメント会社、仏ラファージャ社が資本参加したためで、出資比率は麻生側が約6割、ラファージャ社が約4割。実はこのラファージャ社の資本参加をめぐって、これは後述するが、麻生はセメント業界から「首相は二枚舌の男」と陰口を叩かれている。(後略)


Yl_pin.gif (1016 バイト)連 載
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平成考現学】小後遊二
究極の景気刺激策      


 中国、アメリカなどが大型の景気刺激策や減税を打ち始めた。「新ニューディール」なる言葉も生まれ、1930年代の大恐慌以降の経済政策が一斉に見直されている。
 日本は、90年代のバブル崩壊後に財政出動を中心とした景気刺激策を繰り返し打ったが効果がなかった。「変動相場制の下では財政出動の効果はない」とするマンデルとフレミングの研究などを無視して景気回復を狙ったが、やはり教科書通り、何の効果もなかった。その後、ゼロ金利にしたり、マネーサプライを潤沢にしたりしたが、やはり効果はなかった。2004年から始まった中国特需により、かつての構造不況業種の業績が回復し、あたかも「小泉改革の経済効果」という錯覚が続いた期間もある。しかし、アメリカ発の金融危機で中国特需が終わると、この「バイアグラ効果」も萎んでしまった。
 日本は世界でも珍しい貯蓄過剰の国家となっている。GDPの3倍にあたる1500兆円にも及ぶ個人金融資産がある。問題は、これが死蔵され市場に出てこないということだ。理由は、その大半が高齢者によって所有され、「欲しいものがない」「いざというときのための蓄え」となってしまっているからだ。たとえその1%でも「買い出動」すれば15兆円。「麻生ばらまき選挙対策費2兆円」の何倍もの景気刺激効果がある。
 日本人の平均寿命が延びたので、たとえば85歳で死ぬ人が遺産を60歳の息子に相続させたとしても、この息子たちも貯蓄過多の世代となる。日本では相続が需要を生まない理由が2つある。1つはまさにこの点で、思い切って孫への生前贈与をやるくらいでないと、キャッシュ不足世代に引き継げない。
 もう1つは相続税率の高さである。基礎控除などいろいろな条件はあるが、限界相続税率は70%で圧倒的に世界一である。これは懲罰的なもので、たとえ生前贈与したとしても、いざお爺ちゃんが死んだときの精算のために取っておかなくちゃ、ということで、あまり使われないのが現状である。
 いま世界では相続税のない国が増えている。スイス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、スウェーデン、イタリア、マレーシアなどである。また相続税廃止が俎上に載っている国としてイギリス、フランス、ドイツが上げられる。EUでは税率の低い国に移住してしまう輩が増えているので、税制をシンクロナイズ(同期)しないと国家は被課税体そのものに逃げられる危険性があるからだ。
 アメリカは2001年から段階的に相続税の最高税率を下げ、かって60%であったものが今は45%になっている。計画によると、2010年には相続税率を0%とし、その後また次第に増やしていくとしている。実はこの「ブッシュ・プラン」が不況に苦しむアメリカの救世主になるかも知れない。というのは、多くの金持ちが息を潜めてこの年まで相続を待っているからである。あと1年半もすれば大量の資金がハングリーな若い世代に移り、彼らが低迷する住宅や自動車市場などを突然活性化させる可能性があるからである。
 このような刺激で需要を喚起することは必ずしも好ましいことではないが、日本に限っていえば、この案を導入する以外に眠れる個人金融資産を市場に誘い出す方法はないだろう。そう、日本もまた数年後の1年だけ贈与・相続の税金を廃止し、今の基礎控除額5000万円を1億円程度にし、高齢者が安心して若い世代に贈与・相続できれば、盆と正月が一緒に来たくらいの好景気となる。彼らはカネも希望もまったくない状況を強いられており、ここには強い需要があるからだ。1500兆円の3分の1が若い世代に移れば500兆円。それが住宅などの固定資産に移行するだけで、この国の新ニューディールは起爆する。税金を使わず、国債も発行しない「心理経済学」をうまく使った政策だ。要するに、いろいろマクロ的にやるよりは、一点を狙って一発撃ち込めば、日本経済も「通じの悪かったパイプの詰まりが一掃される」という快感を味わうことができる。


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