さかなクン会見 全文紹介
きょう、東京海洋大学でおこなわれた、さかなクンの記者会見の全文をご紹介します。
さかなクンの真摯で飾り気のないお人柄がよく表れた会見でした。
<東京海洋大学 松山優治学長>
皆さん、おはようございます。
このたび富士五湖のひとつである西湖で、さかなクンと西湖の周辺の漁協のご協力でクニマスの生存が確認されました。本学は海洋生物、絶滅危惧種をできるだけなくす、できれば復活させたいという思いで研究していますので、そのひとつとしてさかなクンのお仕事は、大変われわれに勇気と教訓を与えてくれたと私は思っております。
田沢湖を教訓にして、是非海域・水域の保全に努める努力をするひとつの教訓を与えてくれました。さかなクンの地道な努力が「ある成果」を見せたと思っています。さかなクンにつきましては、本学の館山にあります水圏教育研究所に彼の研究室を持って研究していただいています。環境汚染の問題や温暖化の問題がございますが、各地で変わった魚、それまではそこに棲んでいなかったような魚、珍魚が最近現れることがあります。こういうことをさかなクンの全国的なネットワークを使って、集めていただいて研究しています。
これからの環境問題についても正しい認識、警鐘を与えてくれた。大変な功績で、日本全国に明るいニュースを、勇気と感動を与えてくれて感謝しています。
司会(同大学 刑部真弘教授)
では、本人の口から発見の紹介を。
【さかなくん】
みなさんきょうは素晴らしい機会をありがとうございます
今回のクニマスの生存確認にあたるまでのお話なんですが、京都大学総合博物館の中坊徹次教授におよそ10年前からお魚のことをたくさん学ばせていただいておりました。
そして今でも中坊先生と一緒に本を書かせていただいたり魚類学を学んでいるんですが中坊先生から秋田県の田沢湖に暮らしていたクニマスは絶滅してしまったので、「さかなクン、絵でよみがえらせることができるか」というお言葉をいただきまして、
「はい、先生、クニマスの標本描かせてもらえますか」、そして中坊先生の研究室で保管されている田沢湖の70年ほど前のクニマスの標本をじっくり見ながら描かせていただきました。こちらがその、液浸標本、オスの個体です。このオスの個体をじっくりひれの数を数えて、うろこの数も数えて描かせていただいたんですね。そして、横から前から後ろから背中側とおなか側、5面図を描かせていただきました。
このときに液浸標本なので目の輝きが無くなってしまって、体の色の輝き、あとはサケの仲間ですので、サケの仲間はかなり体がしなやか、やわらかくて輝く体をしているんですが、その液浸標本だとその輝きをみることができなくて、「中坊先生!このクニマスの輝きを出すにはどうしたらいいんでしょうか。いま悩んでいるんですけれども」といったら「そういえばクニマスと近い仲間のヒメマスを比較して、ヒメマスの輝きを見るのもとてもいいと思うよ」と、おことばをいただいきまして、「分かりました、先生!ヒメマスを手に入れなければ~ヒメマスにいろんなことが、きっと秘めますね、てへ」。(会場笑い)。ヒメマスを全国の漁師さんから送っていただきまして、
その中で山梨県の富士五湖の1つ、西湖の三浦さんという漁師さんが送っていただいたヒメマス、その箱が小さかったのですね、うおっ??小さな箱・・・ひょっとして切り身になっているかと最初思ってしまいました。
最初本当に小さくてこの小さな箱に入っていると言うことは魚が折れ曲がって入っているのかなとも思いましたが、箱あけてみたら「うおっ!!う、うがっっ!」と(飛び上がりながら)かなりかわいらしい大きさなんですね、20数センチ、かわいらしい大きさと、それなのに色が黒いんですね。かなり真っ黒に近いくらいの色をしてまして。「あれ??ヒメマスってこんなに黒いかな~」とびっくりしました。でも、ヒメマスというとふだんは図鑑ではきれいな銀色に輝くおさかなというイメージがあったんですが箱を開けると小さく黒いお魚でそれにびっくりしました。
そして、マスを東京海洋大学の館山の研究室で描いたのがこちらの絵。(絵を示す)
このとき季節が3月と言うこともありまして、非常に寒かったんですが、寒い中研究室の中で描かせていただきまして、周りの先生方が「さかなクン、寒いだろう」とストーブもってきてくださったり、先生方が「この鉛筆削りがいいよー」といって、鉛筆けずりをもってきていただいて、感動しながら、それに不思議だなこのマスって思いながら絵を描いていました。このとき思っていたのが最初の小ささ、クロっぽいですが光をあてるときれいな深いオリーブ色に輝く感じですね。送っていただいた個体がそのとき4個体あったのですが、そのほとんどひれが欠けていました。特に尾びれの下がすり切れて無い状態でした。それを見たときに、サケの仲間が産卵をするときに産卵床という穴を掘るのですが、しっぽの部分を特に使って穴を掘るんです。メスが掘るんですが、かなりしっぽが切れていますので「ああー。これはー」漁師さんの網に入った切れたひれの傷ではない、かなり一生懸命体を使ってひれがすり切れて、んー、体もかなりやつれてしまっている、おなかもぺったんこだ、きっと産卵した後だろうなーと思いました。
そして、このマスの絵を描いて、次の日にマス標本を持って中坊さんのところに届けました。
「先生!きのう、漁師さんからおくっていただいたマスを持ってきたのですが、まずはあけてみてください、すごいんです」
そして先生が「ほう、どれどれ」と箱をあけたら、「おーっ、うーんっ、こ、これはー!!」。先生もめがねの奥がまんまるのお目目でした。(オーバーな動作)
これはびっくりしました。中坊先生もこんなマスは見たことのなくて、先生のあんな驚いた顔は私も初めて拝見しました。
そこから、「このマスはこの時期に産卵しているっていうのも不思議だーっ!」ヒメマスではないと思うというようなお顔がされて、そこから研究が中坊先生のご研究が・・・・(司会から話は短く、と指摘)
そのとき、オスの絵を描いた後にメスの絵を描く機会がマスが届いた次の日だったんです。先生に絵を描く時間を2泊3日、そのときに中坊先生が「さかなくん、この標本をもっとほしい、と。漁師さんにお願いできますか」「わかりました先生、頼んでみます」。それで西湖の三浦さんにお電話をしました。「三浦さーん、なんとかこのマスをもうちょっと送ってもらえませんか」「あーそうか、そうしたら網をしかけましょうねー」と言って、特別に網をしかけてくれたんです。
ちょうど次の日に網を仕掛けてくれて、わたしが帰る日が2泊3日の3日目の朝、中坊先生、きょうの午前着で三浦さんがとれたということで送ってくれました。おーほんまか。
先生、自分もみたいです。一緒にみれたらいいねえー。
でも新幹線の時間があったんですね、3日目、「先生、まだ来ないですねー」
新幹線の時間が刻々と、うーん、来ないなあー、先生どうしましょう、うあーっとうなっていたら、来ました。おーーーー、来たんですね。
三浦さんから届いた箱をあけてみると、「いた!」黒いマスが入っていました。
そしてそのうちの一匹は卵を持っていたんですね。びっくりしました。
サケの仲間なのにいくらの赤い色ではなく、黄色い卵の色をしていました。
なるほどー。赤い卵をもたない、サケの仲間。
びっくりしたんですが、秋田県の田沢湖の漁師も、クニマスの色はもともとわりと淡い色をしていたということで、身の色も卵の色もそういったところも、ひょっとしたら一致する特徴なのかなと思いました。
司会)もういいですか?会場からご質問を。
問)大変面白く聞かせていただいたんですが、秋田でクニマスを里帰りさせたいと言うことでプロジェクトが立ち上がりましたが、さかなクンはこのプロジェクトについてどう思われるかということと協力するお考えはあるか。
【さかなくん】
人の手によって絶滅してしまったお魚なのですが、そのもともと田沢湖に暮らしていたお魚が遠く離れた西湖で確認されたと言うことで、驚いておるところなんですが、クニマスが人知れず、生き延びていたという感動がございますので、田沢湖に再び、里帰りすることを願っております。もし自分も協力させていただけること、参加させていただけることがございましたら、参加させていただきたいと思っております。
問)秋田側から要請はありますか。
【さかなくん】
秋田県の皆さんから、特に田沢湖周辺の漁師さんや市長さんからもお手紙をいただいたんですが、「涙が出るほどうれしかった」とはい、お喜びのお言葉をいただきました。
ちょうどあさって皆様とお会いできる機会をいただいておりますので、すごく楽しみにしております。
問)天皇陛下が記者会見でさかなクンのことについても触れられておられましたがそのことについてはいかがでしょうか
【さかなくん】
本当に感慨無量です、ものすごく幸せな気持ちでいっぱいです。
問)改めてこのような大きな発見に関わって率直なご感想をお願いします。
【さかなくん】
今回、もともと京都大学総合博物館の中坊教授にクニマスを描かせていただく機会をいただきまして、そこからたくさんの漁師さんにご協力いただいて、会社の皆様、大学の皆様にご協力をいただきまして、私が客員准教授をさせていただいております、東京海洋大学の皆さまに絵を描かせていただく場所や機会をいただきまして、最後のクニマスに出会う機会を得ましたので、たくさんの皆様のおちからによって 、また自然の条件も一番いいタイミングに巡り会えたんだなとうれしく思っております。すべてが、タイミングというか、いい機会にばしっとそろったのではないかと思っております。
問)昨日の天皇陛下のご発言なんですが、さかなクンさんはどちらでお聞きになっていたのかということと、
【さかなくん】
もう、さかなクンで結構です。(笑)
問)ご自身の名前を呼ばれた瞬間どう感じられたか
【さかなくん】
大変おめでたい天皇陛下のお誕生日と言うことで朝の5時から各局のみなさまのニュースを拝見しておりました。まさか、天皇陛下のおことばからクニマスのお話、そして、まさか私の名前まで申していただけるとは夢にも思っていませんでしたのでほんとうに感慨無量です。たいへんうれしいきもちでいっぱいです。
会社のテレビで見ておりました。
問)ギョギョとはなりませんでしたか
【さかなくん】
ギョギョー。はい。あまりにも、うれしくて固まってしまいました。うあーうあー
ありがたやー(固まる様子を再現)
問)何秒くらいフリーズされたんですか
【さかなくん】
フリーズ?
問)固まったと言うことですが
【さかなくん】
あ、フリーズは固まるという意味だったのですか。フリーズドライ、固まる、乾燥、ほう。おそらく、15秒から20秒くらいは固まっていたと思います。ひょっとしたら数十分かも知れません。
司会)だいぶですね、「さかなクンさん」と呼ばれて動揺していますので、できればこれからは「さかなクン」と呼んであげてください。
問)さかなクンという親しみやすい存在があったからこそ、ひとつの大きな成果がより多くの人に伝わることができたと思う。わたしたちの仕事も研究成果を色んな人に伝えることが仕事だと思う。さかなクンのこれからの展望、伝えたいメッセージを。
【さかなくん】
もともとお魚を好きになったのは、生まれてはいはいしているころから、絵を描くことがすごく大好きで夢中になっていたと母親から聞いていたのですが、お魚を大好きになりまして、今は大好きなお魚を見たときの感動を「うれしー」という気持ちを描かせていただいているのですが、これからもお魚に出会った感動をお魚からいただくメッセージをまず、残すという形で、絵をこれからもどんどん描いていきたいです。またお魚たちからいただく感動はやはり、川や湖、お魚たちが暮らしている環境を見ないといったい、魚の世界で何が起こっているのか、魚の魅力は何なのか、そういったことに気づけませんので、これからもどんどんフィールドに足を運んで、皆さんのところにもドッボーンってもぐってブクブクーって色んなお魚に出会って、お魚の旅をしていきたいのですが、やはり次世代を担う小さな小さなお子様たちにも、どんどんフィールドに出て自分の輝き、お魚のすばらしさ、もちろん、草も花も動物たちもみんな一生懸命に生きていますので、そのすばらしさに気づいて、その中から「あ。これは何だろう?あ、これはどうしてこんな色をしているんだろう?なんでこんな香りがするんだろう?」色んな不思議を疑問を持っていただいて、それを本で調べたり、たくさんの研究者の先生方に教えていただいたりするのも大事、実際、外に行って見て、学んで、わくわくして、さらにもっともっと好きになっていろんなものを見てみたいという気持ちを小さなお子様に持って頂きたい。自分も機会をいただけましたら小さなお子様と一緒に学ぶチャンスをいただけたらと思います。
問)クリスマスイブですが、きょうのご予定は?
【さかなくん】
えー自分ですか?学長先生ですか?
問)いや、さかなクンの。
【さかなくん】
わたしですかー、わたくしは、きょうは、ええっとー。。。
あのー撮影がひとつ入っていまして、このあとは・・・
司会)予定なかったらご一緒しましょうか
【さかなくん】
ほんとうですか!先生!よろしいんですか?皆さんもどうですか??
司会)さかなクンは動揺しているのでそろそろ終わりにしたいと思いますが、クニマスの生存確認にいたったさかなクンの好奇心、わたしは彼を客員准教授に任命したときに、思ったのは、答えのない問題に、チャレンジするさかなクンの姿勢。これは非常に大きいものがあります。こういうところを子どもたちにメッセージとして伝えて欲しいなという気持ちでお願いをした経緯があります。最後にちょっとだけ子どもたちにメッセージをお願いします。
【さかなくん】
わたしの一番のあこがれがこの東京海洋大学。ほんとうにお魚を好きになるきっかけといいましょうか、もともとタコが大好きで、タコやイカ、水生生物の偉大な研究者がこの大学の大先生でいらっしゃって、自分もいつかは、その先生のいらっしゃるこの大学で一生懸命、お魚の勉強をさせていただきたいという思いがちっちゃいころからありまして、その夢が、海洋大学の客員准教授にわたしを任命して頂きまして、ほんとうにいまうれしくて、小さなお子様にお魚の魅力を伝える機会をいただいているのですが、その中で、小学生の皆さんが手紙を書いて持ってきてくれるんですね。うれしいな、どんなこと書いてくれているのかなと思って読んでいると「ううっ、僕はさかなクンのようにさかなが大好きです。将来はさかなクンがいる東京海洋大学に入りますので、そのときまでさかなクン、海洋大学にいてくださいね、うーーん、うれしい、ほんとうにうれしい子がいますね。
司会)さかなクン、きょうこれ(手書きのクニマスの絵)寝ないで描いてきたんですよね。
【さかなくん】
はい、きょうですね。皆様のお手元にお持ち頂いていますが、絵で親しくさせて頂いている片岡鶴太郎さんにいただいた筆と墨で描きました。クニマスが笑っている絵です。「みなさまと一緒に静かに見守り、生き物の命のつながりをしっかりと学びましょう。国鱒」と描かせて頂きました。ほんとうに皆様と一緒に生存が確認されたクニマス、暮らしている環境を壊さずに、命のつながりや自然の素晴らしさを学んで吸収させて頂きたいと思います。みなさま。これからもよろしくお願いします。
(以上)
投稿者:かぶん | 投稿時間:16:09
| カテゴリ:取材エピソード
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