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宮城県児童ポルノ規制強化を検討 「単純所持も駄目」に賛否

 宮城県が児童ポルノの「単純所持」を禁止する条例制定の検討を始めた。独自の「規制強化」に、学識経験者や保護者らの賛否は分かれている。法律家の間では、警察の捜査権が拡大することを懸念したり、表現の自由への侵害を危ぶんだりする声も多い。一方、子どもの人権問題に取り組む関係者や保護者らは、性犯罪の抑止へ向けた一定の効果を期待する。

 東北大大学院の吉原直樹教授(社会学)は「時代は閉塞(へいそく)状況にある。市民の不安に乗じ、当局が規制を強めようとしているのではないか。地域も相互監視を強め、外と内から監視社会に進む可能性がある」と、宮城県の動きに警戒感を示す。
 都道府県で初めて単純所持を禁止したのは奈良。奈良市で2004年に発生した女児誘拐殺害事件を機に05年7月、「子どもを犯罪の被害から守る条例」を制定した。
 奈良県警は同年11月、13歳未満の女児を撮影したポルノDVD1枚を自宅に所持していた疑いで無職男性を書類送検。単純所持容疑での摘発はこれまで11件に上る。
 児童買春・ポルノ禁止法は単純所持を禁止していない。奈良県警は「検察庁と協議し問題ないとの結論を得た」と説明するが、「『法律の範囲内で条例を制定する』と定めた憲法に違反する疑いがある」との見方も根強い。
 児童ポルノ禁止法改正の動きに詳しい山口貴士弁護士(東京)は「過去の映像作品などが警察に『児童ポルノに該当する』と判断され、廃棄されることにもつながりかねない」と、表現の自由が制約される恐れを指摘。
 条例の規制対象が、児童ポルノ禁止法を準用し「性欲を興奮させ刺激するもの」などと定義された場合、「基準が曖昧で、取り締まる側の主観に左右される」とも強調する。

 宮城県PTA連合会の小平英俊会長(45)は「児童ポルノは当事者の子どもに一生消えない傷を残す。児童ポルノ自体をなくす議論が重要」と述べ、子どもの権利保護の視点から規制強化に向けた県の取り組みを評価する。
 NPO法人チャイルドラインみやぎ(仙台市)の小林純子代表理事(59)は、電話相談活動を通じ、子どもたちが性暴力の標的にされる現状に心を痛めてきた。
 小林さんは「表現の自由との関係もあるが、場合によって所持規制は必要」と理解を示しながら、「児童ポルノは大人の問題。いくら締め出してもどこかには温存される」と話した。
 先進国は児童ポルノの根絶に向け、既に各国内で単純所持の禁止規定を設けている。容認しているのは主要8カ国(G8)では日本とロシアだけで国際的な批判も強い。
 「ポルノ画像はインターネットで海外に流出する。世界の大勢に合わせたルールづくりが必要」
 尚絅学院大の森田明彦教授(子どもの権利論)は、国内の遅れた対応を批判し「単純所持は規制すべきだ。法的に容認していること自体がおかしい」と言い切る。
 同時に「処罰に特化すると、管理社会化を危ぶむ意見との対立を生み、無用な争いになりかねない」とも指摘。規制とは別に、被害予防に向けた適切な性教育などの必要性を訴える。


2010年12月24日金曜日


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