定期路線がゼロとなった広島県営広島西飛行場(広島市西区)は、広島市が市営で存続させる方針を決めた。27日には秋葉忠利市長が県庁を訪れ、県と市共同でのヘリポート化を提案していた湯崎英彦知事に正式に伝える。ただ、存続に向けた課題は多く、市が目指す東京線復活のめどは立っていない。市議会には存続への異論が強く、市営化への道筋は不透明だ。
西飛行場はこれまで県と市が折半で管理運営費を負担してきた。昨年度の運営赤字は4億7500万円。市営化すれば単独で負担することになる。市は、来年度の管理運営費を3億〜3億5千万円と見積もる。将来的には2億円台に減らす予定だが、財政難の市には重い数字だ。
秋葉市長は27日に湯崎知事と会談し、市営化の結論を伝える。その後、事務レベルで県の負担や県が大部分を所有する飛行場用地の貸与を調整する。市はヘリポート機能の部分は相応の負担を求めるとみられる。
さらに、市にとって管理運営費以上に重い負担なのが滑走路の改修費。2012年秋から建設が始まる広島南道路の橋が1800メートルの滑走路の北端を横切るため、340メートル短くなる。
誘致を目指す小型ジェット機が発着するには北端を約3メートルかさ上げし、滑走路に傾斜を設けて延ばす必要がある。費用約40億円を見込むが、市の想定スケジュールでは、東京線復活の見通しがないまま工事を進めることになる可能性が高く、議論を呼びそうだ。
市が、117万都市の中枢性向上策の切り札に位置付けるのが東京線の誘致だ。広島経済同友会が存続を市に要望したのも、市中心部に近い立地の良さが理由。ただ、現時点で13年度に配分が決まる羽田空港の発着枠に食い込めるかどうかは分からない。
市は水面下で航空事業者候補としてフジドリームエアラインズ(静岡県牧之原市)と接触しているものの、同社広報は「日本航空の地方路線撤退で全国の自治体から打診は多い。着陸料減免など誘致への熱意も参考にしたい」と説明。広島市は交渉相手の一つとの姿勢である。
県と市の移行協議が順調に運べば、来年2月に開会する予定の両議会の定例会で、県は西飛行場条例の廃止議案を、市は飛行場の設置管理条例案を提出する。関連予算案も含めて可決されれば、県と市は航空法に基づき国土交通省に承継を許可申請する。市は年度内を目標にする。
【写真説明】広島市が市営で存続する方針を決めた広島県営広島西飛行場
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