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減反やったのに…富山に高い削減率目標、怒るコメ農家

2010年12月23日

 農水省が発表した来年のコメの生産数量目標で、北陸3県では富山だけが全国平均を大きく上回る削減を求められた。削減率の高い都道県には激変緩和措置が取られるが、国の見通しの甘さがコメの需給調整を難しくしており、農業者から政府に対して「目指す農業が見えない」と不満の声が上がっている。

 発表によると、全国の2011年産米の生産数量目標は795万トン。今年の813万トンを20万トン近く下回り、全国で合計4万ヘクタールを減反しなければならない。削減率は2.2%で、北陸3県では富山が全国平均を大きく上回った。富山県では今年も県や市町村を挙げて減反に取り組み、生産数量目標をほぼ達成した。これまでは目標を達成すれば優遇され、達成できないとより厳しい数量を課されるペナルティーがあった。

 だが、戸別所得補償制度の導入に伴い、政府はこの措置を撤廃。そのため県や市町村は反発した。入善町議会の12月定例会では、町幹部や町議から「転作の増加はもはや限界に達している」「正直者がバカを見た」などと怒りや悲鳴の声が上がった。

 今月9日には石井隆一知事が同省を訪れ、県内農家の怒りの声を伝え改善を求めた。その結果、同省は削減率の大きい18都道県からは備蓄米として優先的に買い取り、「産地資金」を多く配分する激変緩和措置を取る方針をまとめた。

 この方針に、同町農水商工課は「とりあえず安心した」と胸をなで下ろす。だが、不公平感はぬぐえず、「真面目に取り組む県が納得できる制度にして欲しい」と話す。

 米余りが続き農家が経営に苦しむ背景には、これまでの農政の見通しの甘さがある。

 コメの自給率は1960年には100%を超えた。一方で、1人当たりの年間消費量は62年の118キロをピークに大きく落ち込む。だが、国は食糧管理制度(95年に廃止)のもとで、80年代半ばまで生産者からの買い入れ価格を引き上げ続けた。

 米余りが顕著になった70年には減反政策を始めたが、買い入れ価格は高止まりしたまま。その陰で、競争力を付けるために農家の大規模化を図る改革や、消費を増やす取り組みはなおざりにされた。

 戸別所得補償制度の導入や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加検討など、目まぐるしく政策を打ち出す民主党政権に対しても一貫性を疑問視する声は強い。

 JA富山中央会の山瀬洋明・農業対策部長は「農業の強化を掲げながら、輸入を加速させるTPP参加を目指すなど、農業をどうしたいのか分からない」と批判する。(井上潜)

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