韓国:北朝鮮へコメ支援 李政権で初

2010年10月25日 21時14分 更新:10月25日 23時33分

 【ソウル西脇真一】韓国の李明博(イ・ミョンバク)政権は25日、北朝鮮へのコメ支援に乗り出した。水害被害に対する「人道支援」名目で、08年の李政権発足以降、政府が関与した北朝鮮への初めてのコメ支援となる。北朝鮮は最近、経済苦境を背景に韓国に対話攻勢をかけている。韓国はこれに応え、今年3月の韓国海軍哨戒艦沈没事件に伴い高まったような軍事的緊張を再び招かないよう、コメを戦略物資として使った格好だ。

 韓国は、北朝鮮に対する融和政策を進めた金大中(キム・デジュン)元政権、盧武鉉(ノ・ムヒョン)前政権の時代は年間30万~40万トンの大規模なコメ支援を続けていたが、保守派の李大統領は封印してきた。

 今回の支援はコメ5000トンに加え、カップめん(300万個)やセメント(1万トン)なども含まれ、総額は100億ウォン(約7億円)相当となる。

 韓国中西部の群山港で25日、出港式が行われた。この日は悪天候で出航は見合わせたが、11月中旬にかけ、中国遼寧省丹東を経由して順次、水害被災地の北朝鮮北部、平安北道(ピョンアンプクド)新義州(シンウィジュ)などに届ける。

 南北関係は沈没事件で断絶状態に陥ったが、北朝鮮は8月以降、対話姿勢に転じた。今月末からは約1年ぶりに南北離散家族の再会事業も行われる。

 北朝鮮の今夏の水害を巡っては、韓国側が8月、大韓赤十字社を通じ支援意思を朝鮮赤十字会に伝えた。当初反応はなかったが、9月になり支援を求めてきた。

 北朝鮮の変化の背景には、金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継体制を固めるためにも「韓国の経済支援は不可欠」と判断したことがあるとみられる。

 一方、韓国は来月ソウルで開催される主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)という「晴れ舞台」を控えている。任期の後半期に入った李政権は、朝鮮半島情勢の安定化に向け、「人道支援」に限定して北朝鮮の求めに応じた形だ。

 ただ、韓国はこの10年間で国民1人当たりのコメ消費量が大きく減少した。豊作も重なり、10月末で138万トンの余剰米が見込まれ、市場価格の下落も続いている。このため国内では今後、「南北関係改善の突破口」と「余剰米対策」の両面から、大規模なコメ支援の再開を求める声が高まる可能性がある。

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