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 (1)2002年度

 

 
 
 表1 美術商
 
順位 会 社 名 2002年度
売上高(百万円)
2002年度
申告所得(百万円)
前年対比
増減率(%)
所在地
1 アートコム 8032 1384 - 大 阪
2 アールビバン 10509 618 ▲52.5 東 京
3 アート・ビジネス・グローバル 1550 486 54.8 東 京
4 グランプリアート 5700 429 98.6 大 阪
5 ギャラリーぬかが 2500 207 97.1 東 京
6 オリエンタル・バザー 760 186 11.4 東 京
7 トップアート 4323 166 - 東 京
8 アート・アンド・アートギャラリー 900 165 42.2 札 幌
9 アール・プランニング 1065 115 ▲34.7 東 京
10 古美術下條 260 86 - 東 京
11 アートコレクションハウス 6403 56 ▲30 東 京
11 ギャラリー桜の木 492 56 ▲15.2 東 京
13 ロンドンギャラリー 270 53 - 東 京
14 偕拓堂アート 1200 51 2 岐阜県
14 越前画廊 450 51 - 大 阪
16 エムアンドアイアートシステム 3863 48 - 東 京
17 繭山龍泉堂 920 42 ▲30 東 京
1. 申告所得は、企業が税務署に決算ごとに申告する税法上の所得〈課税所得)のことである。
2. 対象決算期は2002年1月から12月までの間に到来した決算期末を最終日とする1年間である。
3. 前年対比増減率は、申告所得についてである。「▲」マークは、減少を表す。「-」マークは、前年の申告所得が欠損、あるいは4000万円未満の企業であり、比較することができない。(4000万円以上の申告所得の企業のみが税務署では公示される。)しかし、所得が伸長していることは確実である。
4. 売上高の「-」マークは、売上高が不明であることを示す。
 
 2002年度の美術商の申告所得順位である(表1参照)。

 基準としたのは所得額が4000万円以上であることで、その水準に達している業者は、わず17社しか見いだせない。

 ただし、個人営業は含まれていない。逆に他の商品とともに販売している商社や百貨店の美術品だけの業績は不明なので、それも別である。

 その範囲内のデータであるが、17社のなかで、通例における美術商と言えるのが幾つあるだろうか。ヨーロッパ絵画を主として扱う「ギャラリーぬかが」、そして古美術の老舗の「古美術下條」、「ロンドンギャラリー」、「繭山龍泉堂」のほかは、ほとんどすべてが大衆向けの量販店と通販店である。トップに俄然踊り出たのは、大阪の絵画、版画販売の「アートコム」である。
 
 表2 オークション会社
 
会 社 名 落札点数 落札総額
シンワアートオークション 4557点 40億6644万5000円
毎日オークション 11302点 16億1494万9000円
AJCオークション 2642点 12億6300万5000円
エスト・ウェストオークションズ 1432点 5億7936万1000円
アートマスターズ 333点 5億6636万円
ディスカバリーナショナルオークション 2917点 5億1185万7000円
J−CAPアート・オークション 2392点 3億149万6000円
ジャパンアートオークション 2289点 1億8213万9300円
モンソー・オークション 591点 1億2612万7370円
合 計 28455点 92億1173万9670円
※参考:「月刊美術」2003年2月号の集計による
 
 従来からの美術商はどうなっているのか、というとそのなかの相当数がオークション会社を組織して共同的に営業している現状である。主要オークション会社9社の2002年1月から12月までの業績は、表記した通りで、落札総額は92億1173万円に達する(表2参照)。

 それはあくまでも落札された作品の総額であり、手数料を収入とするこの業種の売上高でもなければ、ましてや所得でもない。
 
 表3 組合
 
順位 名 称 2002年度
売上高(百万円)
2002年度
申告所得(百万円)
前年対比
増減率(%)
所在地
l 東京美術倶楽部 979 65 62.5 東 京
2 東京美術商協同組合 150 42 ▲27.6 東 京
 
 業者間並びに公開オークション最大の場である東京美術倶楽部と東京美術商協同組合の業績を掲げておく(表3参照)。
 
 表4 私立美術館
 
順位 名 称 2002年度
売上高(百万円)
2002年度
申告所得(百万円)
前年対比
増減率(%)
所在地
1 (財〉長谷川町子美術館 500 225 ▲26 東 京
2 相田みつを美術館 1100 184 26 東 京
3 (財)東京富士美術館 - 156 ▲30 東 京
 
 もう一つ参考までに掲げるのは、私立美術館の決算であるが、所得額が4千万円以上に達しているのは、僅少の3館に過ぎなかった(表4参照)。入場料収入が激減している近年、当然のことと思われ、これらの館については、物品の販売が好調であることの結果と推定される。



 (2)2003年度

 


(A)美術商の申告所得

 例年発表している美術商の申告所得ランキングを今回は中止する。
 その理由は、2003年1月から12月までの間に到来した決算期末を最終日とする1年間の申告所得が4000万円以上という基準に立つと、挙げられるのはわずか12社という寡少さによる。
 その内、申告所得が1億円以上だったのは3社に過ぎず、最高の社にして約5億円だった。売上高についてみると、最高約55億円という社があったものの、その所得が6900万円という少なさであり、この点からも順位を決める意味が見出せなかった。
 以上の事実に基づくならば、この1年間の美術市場の不振は前例を見ないもので、今後の回復を待望する以外にないと言える。

 

(B)オークション会社の業績

 
 シンワアートオークション(2003年5月決算)
  売 上 高
12億2200万円(5.5%)
申告所得 2億8912万円
 毎日オークション(2003年9月決算)
  売 上 高 7億2400万円(20.7%)
申告所得 8683万円
 アートマスターズ(2003年4月決算)
  売 上 高 9億1900万円(29.8%)
申告所得 4381万円
 
  ( )内は前年対比率
  3社とも前年の申告所得は4000万円以下
▲TOP 

 (3)2004年度

 
 
   この年度は、一定の水準すなわち4000万円以上の申告所得のある業者を、公表されている範囲で調査すると、前年度の12社に対して、今回も17社が数えられたにすぎない。とは言え、一つの変化は、既存の概念での美術商の数が前回よりも増えた(復活した)ことにある。具体的には、2003年度は4社だったのが、最大に枠を広げると12社になった。これでも依然として少なすぎるとは言え、現状の率直な現れと考えて、敢えて発表することにした。別表1の通りである。

 今回、上記の美術商と区別して、新たに別表2を設けた。そこには外国版画の輸入を主とする業者、また複製品や新画の大量販売を行なう業者をまとめた。

 表2の第1位のアールブリアンは申告所得4億400万円で、前年比125.7%と盛り返している。しかし、この業者6社のうち、前年度に4000万円以上の申告所得があって、それとの比でプラスとなっているのは、ただ2社であるという全体としてのこの減退は、どうしたことだろう。

 留意されるのは、毎年のように首位かそれに近いトップクラスを占めていたアールビバンが、ここにないことである。2004年3月期の単独決算は、売上高78億7700万円、経常利益7億4100万円と依然高額だが、当期利益は5億2800万円の損失。しかし、2005年3月期は、売上高69億1000万円、経常利益4億8200万円、当期利益2億2200万円、連結決算では当期利益8億6900万円(前年比82.9%の増加)と好調。アールビバンは上場会社なので、現時点で、2005年3月期の業績が既に公表されている。

 今日の日本の美術市場は、美術商ではなく、美術オークションを中心に動いている。

 その最大会社シンワアートオークションの業績は、ホームページのIR情報によると、2004年5月期決算で、取扱高64億2121万2000円、売上高16億8081万6000円、経常利益3億1179万円、当期純益1億7466万2000円と発表されている。その前年が取扱高50億1206万8000円、売上高12億2269万7000円、経常利益2億3112万5000円、純利益1億2277万円だったから、相当な伸長と言っていい。しかし、2000年以降、高額作品も現れて、出品数と取扱高は増加しているにもかかわらず、平均単価は2000年並びに2001年に及んでいないことを付記しておく。この会社も上場されているので、2005年5月期の業績が7月に発表された。売上高19億4000万円(15.4%増)、経常利益4億1000万円(31.7%増)、当期利益2億3500万円(34.9%増)である。

 毎日オークションは、2004年9月期の決算では、売上高8億6500万円、利益1億3120万円、申告所得2億1971万8000円(前年比153%の増加)である。売上高について見ると、シンワアートオークションの約半分であるとはいえ、この社もまた勢いを増している。AJCの2004年7月期の申告所得は1億3400万円。

 表1 美術商
 
順位 会社名 2004年度
売上高(百万円)
2004年度
申告所得(百万円)
前年対比
増減率(%)
所在地
1 壷中居 800 87 -  東 京
2 アンザイアートオフィス -  73 -  東 京
3 偕拓堂アート 1500 70 -  岐阜県
4 ギャラリーぬかが 2300 66 -  東 京
5 繭山龍泉堂 900 55 -  東 京
6 水戸幸商会 -  48 -  東 京
7 たづアート -  45 -  京 都
8 鐡斎堂 1100 43 -  京 都
8 ロンドン・ギャラリー 360 43 ▲24.6 東 京
10 東京田中利美術 -  42 -  東 京
10 ギャラリーさかい -  42 -  東 京
12 早川画廊 -  41 0 大 阪

 表2 その他
 
順位 会社名 2004年度
売上高(百万円)
2004年度
申告所得(百万円)
前年対比
増減率(%)
所在地
1 アールブリアン -  404 125.7 東 京
2 アート・アンド・アートギャラリー 850 153 -  札 幌
3 アートコム 2842 104 ▲(※) 大 阪
4 アートコレクションハウス 5881 103 30.4 東 京
5 トップアート 4101 94 ▲1.1 東 京
6 ギャラクシー・アート -  47 -  東 京
 
1.対象決算期は2004年1月から12月までの間に到来した決算期末を最終日とする1年間である。
  例えば、2004年3月期決算の企業であれば、2003年4月から2004年3月までの業績である。
2.(1)2002年度の表1の凡例も参照のこと。
3.アートコムの申告所得は前年度より明らかに減少しているが、前年度が変則的に半期決算だっ
  たため、減少率は計算できない。
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