2010年11月26日

水嶋ヒロ「KAGEROU」出版! ポプラ社が「初めての責任販売」に踏み切る「ワケ」

P117063310月にポプラ社小説大賞を俳優の水嶋ヒロが受賞したことは、ご存じの通り。

「水嶋ヒロ」としての投稿を「隠しての受賞」ということで、ずいぶん話題になった。

そのポプラ社だが、彼の受賞作「KAGEROU」で、同社初の責任販売に踏み切るという。


業界の方なら今さら言うまでもないが、書籍の販売形式は、責任販売でなく委託販売がほとんどだ。


委託販売とは、言ってみれば書店の「場所貸し」のようなもの。売れれば書店にマージンが入る一方、売れ残りは返本(返品)すれば書店は1円も負担しないで済む(店舗運営資金はもちろん必要だ)。

これに対し責任販売とは、書店が身銭を切って書籍を購入し、売れ残れば損失を書店が被る形式。売れ残りリスクが出版社から書店に移る分、書店が手にするマージンはこちらのほうが大きくなる。


なぜ委託販売がほとんどかというと、総合的な利点が多いから。文化的な意義としては、書籍の多様性を担保できる(あまり売れない本でも出版できる)。功利的な意義としては、書店の仕入れ資金の問題とか。


ではなぜポプラ社は、売れるのがわかっているのに「自社の取り分が減る」責任販売を取り入れたか。

――これは、やはり「返本が怖い」からだろう。

つまりは超話題のベストセラーになると「ポプラ社が判断している」ということだ。


実際そうなるかは不明だが、ベストセラーの恐怖は以前ハリーポッターの静山社で考察したので、よければそちらを見てほしい。

「なんでIQ84で新潮社が責任販売にせず、ポプラ社はKAGEROUで責任販売にするのか」という点だけ書いとけば、それはやはりポプラ社が企業として小規模なので、リスクを負い切れないからだろう。

返本が大量に来れば、もたない可能性がある。

その意味で静山社と同じだ。

editors_brain at 07:00│Comments(2)TrackBack(0)この記事をクリップ!マスコミクリップ 

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この記事へのコメント

1. Posted by kajie   2010年11月28日 10:37
4 新潮社とポプラ社のベストセラー配本の違いを企業規模の違いのみで捉えないほうがいいのでは?と思いました。
「1Q84」の場合は、書店から大量に注文が来ても、POSデータ見ながら配本を絞り、徐々に出して行っても大量に売れる見込みが立ちそうです。
一方、水嶋ヒロ本の場合は、やはり瞬間的な話題で盛り上がっており、短期でドカンと店頭に商品出して盛り上げたい、という意図があるのじゃないかと思います。そうすると、書店の過剰発注に対応するためには責任販売制、という選択になったのでは。
どちらが良い悪い、という話ではなく、考えかたの違いでしょうね。
2. Posted by tokyo editor   2010年11月29日 12:58

kajieさんこんにちは。

おっしゃるとおりです。

あと、新潮は過去にベストセラー出版経験および村上春樹本経験豊富ですから、販売の動向を事前に読め適切な初版部数設定を読めた&重版方法をよく知っていた、などという点もありそうです。

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