勝間和代のクロストーク

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患者本位へ、混合診療解禁を

2010年12月22日
 今回は政府の規制改革会議でも大きなテーマとなっている「混合診療」の問題を取り上げます。現在の日本の医療保険制度では、保険診療と保険外診療(自由診療)を併用する混合診療が原則禁止されています。私たちが治療を受ける時、保険の適用が認められていない保険外診療が診療内容に加わった場合、患者は保険外診療の分だけでなく、本来、保険で賄われる分も全額自己負担になります。

 一部の先進治療は「評価療養」や「選定療養」という制度で保険診療との併用が認められますが、大変限られた分野です。現在の制度は、私たちに保険の適用範囲内での治療にとどめることを期待しているわけですが、それで国民本位の制度と言えるでしょうか。

 厚生労働省は混合診療の解禁に慎重な理由として(1)医療格差の拡大を招く(2)保険治療範囲の縮小につながる(3)患者が医療事故に遭うリスクが高まる--の三つの懸念をあげています。具体的には(1)は混合診療が一般化すれば、経済力によって受けられる医療に大きな格差が生じるという理屈です。高度先進医療を行える病院とそうでない病院で提供するサービスに格差が生じるとも指摘します。(2)は混合診療が一般化すると、新薬や新しい治療法を保険の適用対象にするインセンティブが薄れ、多くの患者は結局、保険適用外の高い自己負担をしないと、満足な治療が受けられなくなる可能性があるとの意見です。また、(3)は安全性・有効性が確認されていない治療が横行し、患者に悪影響が及ぶというものです。そのうえで、厚労省は先進的な治療法の取り扱いについて、安全性や効果を確認した上で保険対象に加える手順を踏むべきだとしています。

 これに対し、混合診療の解禁派は、混合診療が認められれば、患者の負担が現在より減り、より幅広い層が充実した医療を受けられると反論。厚労省の理屈とは逆に、「医療格差は縮小する」と主張しています。また、混合診療で治療期間が短くなれば、医療保険の給付が節約されるとも指摘します。さらに、がんなどの生死に関わり、治療の時間が限られる病気の場合、患者は先進的な治療法が保険適用になるまで待つ余裕はないと訴えています。混合診療解禁の是非は裁判でも争われ、東京地裁は07年11月「保険外診療の併用により、保険対象の診療分まで給付が受けられなくなる根拠は見いだせない」と混合診療禁止に疑問を示しました。一方、控訴審の東京高裁は09年9月、国の混合診療禁止を適法とし、現在、最高裁で係争中です。

 このように意見は分かれていますが、私は混合診療の原則解禁を求めます。理由は、現在の医療保険制度が医師や患者の実態に合致せず、医療の発展を妨げていると考えるからです。外国で承認済みの先端医療や薬品が日本で保険の適用対象になるまでにはかなりのタイムラグがあり、患者本位になっていません。また、古い医療技術を使って長い時間をかけて治療するよりも、新しい医療技術で短期間で病気を治す方が保険医療全体のコスト節約にもなるはずです。病院は新しい治療法を導入し、切磋琢磨(せっさたくま)すれば、医療サービスの向上も期待できます。

 日本医師会は混合診療の解禁に慎重ですが、現場の医師には解禁賛成派も多くいます。高齢化が進む中、公的医療保険制度の見直しが不可欠ですが、中でも混合診療の解禁は最優先で検討すべきです。みなさんのさまざまな角度からの意見をお待ちしています。(経済評論家)

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コメント(1)

1 Commented by 林 繁雄 さん 2010年12月22日 13:13
 

国民の大半が貧しかった昭和後半までは「何時でも、何処でも、誰でも同じ内容の医療を受けられる制度」は必要でした。しかし、現在のように成熟した自由主義経済下では、支払う金額に応じてサービスに差がある方が公平ですし、医療技術などの進歩も格段に進むと思います。旧ソ連と米国の医療、どちらが優れているかは素人でも分かります。

 今のわが国で行われている護送船団方式の医療・医療制度は開業医のための医療制度であり、今や国民が信頼し真に必要としている医療を提供する障害ともなっていると思います。

保険財政破綻の前に護送船団方式の医療制度を改め、国民個々に「真に必要とする医療」を提供できる医療制度を構築すべきと思います。

 病院経営や混合診療の導入など医療に市場原理を導入することにより、医療に競争原理が働き、医師には患者に選ばれるため日々の努力が必要となり、日進月歩の医学・医療を学ぶ医師が増え、わが国の医療水準向上に繋がると考えます。

公的医療保険の意義が所得の低い人や病気がちの人も安心できることであることを前提として、今の診療報酬をより学問的、合理的に大幅に改善した上で、当面は患者が正しく評価・選択できる領域や予防医療を先進医療の対象として対応し、その後、一定水準以上の医療機関を対象として混合診療を解禁すれば、安全性などの確保は担保されると考えます。

むしろ、今の自由診療は野放し状態で、安全性が確認されていない治療法や医薬品、医療材料が安易に使われ、根拠に乏しい安全性が担保されていない医療を受ける恐れがあると思います。

今後は、医療の質の向上を目指しての市場原理導入により、より質の良い医療が適正な価格で提供できるような医療制度の構築が必要だと考えます。

問題は、日進月歩の医学・医療技術を学ぶことを避ける医療関係者が、比較され、選択されることを嫌い、市場原理に反対していることだと思います。

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