日米両政府は14日、11年度以降の在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)について、現行水準(10年度1881億円)を5年間維持することで合意した。日本側は当初、総額の削減を目指したが、中国の海洋進出や朝鮮半島情勢など厳しい安全保障環境を踏まえ、日米同盟重視の観点から譲歩した。来年1月に両政府で同予算支出の根拠となる特別協定に署名する。日本政府は今年度内の国会承認を目指す。
合意内容は▽基地内で働く従業員で日本側が労務費を負担している2万3055人分のうち、バーやゴルフ場など娯楽施設で働く430人分の段階的削減▽日本側の光熱水費の負担割合(76%)の72%への段階的引き下げ--をする一方で、減額分を米軍関係者住宅の省エネ化といった環境対策などに振り向け、総額を維持する。
78年度に始まった思いやり予算は、99年度の2756億円をピークに減り続けてきた。米側は「安全保障環境の悪化」を理由に増額を要求したが、財政難に加え、民主党が野党時代、バー従業員などの労務費負担を問題視した経緯もあり、当初日本側は一層の削減を目指した。
しかし、北朝鮮による韓国哨戒艦沈没事件や韓国砲撃事件が発生。また中国の軍事的台頭への懸念もあり、日米同盟重視を鮮明にした。仙谷由人官房長官は14日の記者会見で、「5年間減らさず、中身は効率的、効果的に変えていく合意ができたことは、日米同盟深化のメッセージと受け止めていただけるだろう」と強調した。
思いやり予算を巡っては、日米間の特別協定(08~10年度)が11年3月に期限切れを迎えるため、両政府が来年度予算編成までの合意を目指して事務レベル協議を続けてきた。【西田進一郎、坂口裕彦】
毎日新聞 2010年12月15日 東京朝刊