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[24623] Fate BASTARD night (fatexBASTARD)
Name: 無謀◆d7bb9f58 ID:f25f26c1
Date: 2010/12/03 22:30
この作品は、fateとバスタードです。
なにぶん無理な設定なので、最初が長いのですが、勘弁してください。
DSをマスターにしてみたらどうなるのかなと考えてやってみました。

バスタードの話が分かっている人は、成る程と思う所が、多々あるかもしれません。

話的には、DSが地獄を脱出した後の話です。DSが十賢者の箱舟の動力炉の作動で地獄を脱出した後かもしれない話です。漫画で4年間の空白があったので、その空白を利用して、物語を作っています。
地獄を脱出した後、ユダの痛みが七つしかない為に、地獄門がうまく機能せず、fateの世界に来た。という設定です。
そして、地獄から脱出して、傷ついた所を、キャスターが拾って
契約をするという感じです。

キャスターを気に入っていて、色んなSSが傷ついた、キャスターを拾うという話が多かったので、立ち位置を逆にして見ました。
キャスターが、助けられるのではなく、キャスターがDSを助ける。
これならうまくいくかなと思い書いてみました。
それでは、バスタードを知らないと少し分かりにくいかと思いますが
宜しくお願いします。


12/1 キジムナーさんに言われて、遭遇修正。台詞の精霊を大源と小源に変更。
12/3 某さんに指摘されて、題名の所を修正。



[24623] 地獄の門からやってきた。
Name: 無謀◆d7bb9f58 ID:f25f26c1
Date: 2010/11/29 01:15

[グウゥ・・・・・・」

そういい残して、不死身の魔人ダークシュナイダーは倒れた。
彼は、悪魔王たちから、ユダの痛みと呼ばれる、太陽の500万倍以上の質量を持つとされているエネルギーの塊を奪い
地獄の門を破り脱出したのはいいが、その際、地獄の門を脱出する時に莫大なエネルギーを使用した為に
DS自身、ユダの痛みに、魂と肉体を、砕かれ食い尽くされて、生きていくのが不可能な程、体力を削られていた。
本来、この「ユダの痛み」は、人間が使えるような物ではないのである。
神器「ユダの痛み」は、キリストを裏切ったユダの絶えざる魂の地獄を哀れんで、神が作ったとされるアーティファクトだった。
それは、たった一つで、銀河をも飲み込むブラックホールに匹敵する闇の力を無限に呼び寄せる暗黒の祭壇ともいえる力であった。
宝珠それ自体は、時空に空いた、小さな穴に過ぎないが其処から流入する力は、銀河系をも破壊しかねないほどの物でもある。

これを使うものは、恐るべき超破壊的な力を振舞う真の破壊者となれるが、これを取り込んでその力を使うものに、恐ろしい破滅をもたらすのだった。
魂、肉体、感情ありとあらゆる激痛、常人であれば一瞬の内に塩の柱ともなるほどの痛みが襲い掛かるのものである。
これを所持していた、悪魔達の王の地獄の魔王ですら使用を躊躇するほどの物だった。
これを使ったDSが、無事なのは、彼がひとえに四百年の長きを生きてきて、無限とも言われている、魔力を制御し使いこなしているからであった。
そのDSでも、七つものユダの痛みを、平行励起させて臨界点を突破し制御しなければ地獄の門は破れなかったのだ。
だが、七つものユダの痛みを、使った反動は大きく、リバウンドという形で肉体に現れ、DSの体は、右の肺が潰れ、内臓の臓器もいくつか損傷し聴覚も聞こえなくなっていた。
体の内側から、爆弾が爆発したかのような状態であった。
普通の、人間なら放っておけば物の数分で、死んでいるような状態である、だがDSは残された僅かな魔力で再生の魔力を使い、必死に出血を抑え生きようとしていた。




紫のローブを、羽織った深い、紫の色の髪をした女性は、部屋の中で叫んでいた。
彼女の名は、キャスターといい、聖杯戦争と呼ばれている戦争で聖杯から、呼び出された英霊の一人であった。

「いやぁああああ!」

キャスターの絶叫が部屋に響き渡っていた。
自分の着ていた、紫のローブを引き裂かれ、男の目に見えるのは、穢れのないような白い肌。
それが、いっそう男の欲情を刺激し興奮させた。

「いいじゃねえか、一回ぐらい」

がっついた様な仕草で男が、キャスターに迫る、男の出した令呪の命令は単純だった。

<俺の好きなようにさせろ>

そんな令呪の使い方では、曖昧な効果しかなく、魔術師としての令呪の使い方は在り得ないものだった。
おかげで彼女は少しの、抵抗力ぐらいは残していた。
だが、その僅かな抵抗は、目の前の男を更に興奮と狂気に駆り立てるだけのものだった。
嫌がる女を犯す。
それが、唯の人ではなく、英霊それも神話でしか登場しない夢物語の人物。
そんな、夢のような女を好き勝手にしていい。
男の口元が下卑たように、歪む。

(嫌!こんな事の為に、私はこの世に出てきたんじゃない!)

(どうして!私は唯・・・唯・・・!)

「嫌がって、泣き喚く女を犯すのも御ツなもんだな、クク・・・興奮するぜ」

「どうせ、あんたも処女じゃなくて、魔女だろ・・・だったら貞操を、色んな男に捧げてきたんだろ」

「一人や二人増えた所で、変わるもんじゃねえじゃねえか」

(この男!)

ギリッとキャスターが奥歯を噛み締めた。

パァン

男の頬が揺れた、キャスターが怒りの一身で動かした手が、男の顔を叩いたのだった。
だが、その行動は男の怒りを買っただけだった。

「キャ!」

パン

男の手がぶれて、乾いた音が、響き渡った。

「いいぜ、そんな、くだらない事が出来ないようにジックリ調教してやるからよ」

男が女の上に馬乗りに、なり、その白い柔肌を、蹂躙しようとした時
不意に男の胸に、短剣のような物が刺さった。

ゾブリ

「・・・え」

男は、気づくのに一瞬遅れた。
自分が何をされたのか分からなかったのだろう。

ズブズブっと

肉体に刃物が突き刺さっていく音だけが聞こえた。

「・・・・・・ハアハア」

「ゴフッ」

男は、口から吐血した血を、彼女の、紫色の法衣に吹きかけた。

「・・・この魔女・・め・」

「うるさい、もうあんたとは関係ないんだ!あんたなんかと!」

「・・・う・・うう・・」

彼女は泣いた。
嗚咽を漏らしながら、自分の両腕で体を抱きしめるようにして、
泣き続けた。

キャスターは、雨の中を彷徨っていた。
マスターを殺した以上、後は消え去るだけが彼女の運命だった。

(マスターを殺した所で、私の運命は・・・)

生きる気力も希望もない、それがキャスターの足取りを更に重くする。

(結局、聖杯を手に入れても何も変えられないのかもしれない・・・なら)

「もう、コレまでね」

自身の死を覚悟しようとした時、彼女の目に映ったのは、魔力を微かに持った人間だった。

(・・・人、こんな所に?)

カツカツと
重い足取りで歩み寄っていくと、其処には、深い背の中ほどにまでの髪を生やした、宝石を思わせる様な銀の髪をした、男が倒れていた。

(微かに、だけど魔力が、感じられるわね・・・現界ぐらいなら何とかなるかもしれない)

キャスターは、男をうつ伏せの常態から、仰向けに変えた。
そこでキャスターは、自分が仰向けにした男に目を奪われた、完璧とも言えるその美貌に目を奪われたのである。
秀でた額、高く細い鼻梁、滑らかな曲線を描いて尖った顎へと続く頬のラインと唇
そのどれもが、やはり完全な造形美と呼ぶに相応しい男であった、男の年齢は、多く見積もっても二十~二十四ぐらいであった。

(なんて、綺麗な顔なのかしら、こんな男と契約するのも悪くないかもしれないわね・・・)

キャスターは、男の完璧とも思える唇に口付けをかわし、契約を交わした。
これで、暫くは大丈夫とも思ったが、安心したのも束の間だった。
男の体温が、低く、心臓の鼓動を殆ど感じられないのだった。
キャスターは直ぐに、男の凄まじいまでの怪我に気づいた、雨が降っていなかったらもっと早く気づけたのだが
更に、男に服が、黒い法衣の様なものもキャスターが、気づくのを遅れさせる要因の一つとなっていた。

(このまま放っておいては、死んでしまうわね・・・私ったらどうして、こう土壇場で運がないのかしら・・・)

気持ちを切り替えて、すぐさま階段の上にある寺に駆け込もうとしていた。
だが、男の体は重く、女性のキャスターにはきつい物があった。男の身長は長身で百九十センチ以上あり、体重は八十キログラムあるとは思えた。
強化の魔術を使えば、何とかなるのだが、それを使ったら男の命の天秤が、死の方向に傾く事は、彼女にも、分かっていた。

(なんて、重いのかしら、でもこれを登りきれば・・・・・・)

ようやく、寺の中に入り、玄関の入り口まで来て

「どなたか、いませんか!?」

「何用かな?」

眼鏡を掛けた、薄黒い茶色のスーツを着た、男が出てきた。
男の名は葛木と言った。

「部屋を、貸していただきたいのです、このままではこの人が死んでしまうの、お願いです。
宿を貸して下さい」

男は、少し警戒をしていたようだ、何せ黒い法衣を羽織った長身の銀髪の男とそれを肩に担いでいる
深い紫のローブの女が、現れたのだから。
一般人なら追い返してしまうような、格好だったからである。
だが、男はそんな事を気にせずに

「こっちだ、ついて来るがいい」

二人を、案内した。
キャスターは、男を布団に寝かせると、直ぐに服を剥ぎ取った。男の傷跡を見て少しおびえたようで
思わず、口に手を当てた。

「・・・酷い・・・これでどうして生きているのかしら・・・?」

キャスターの疑問は、当たり前だった。
何せ、男の体は、腹部からは内圧で臓腑が出ていて、右の肺には、砲丸のような穴が空いているのだった。
幸い貫通はしてないようだったが、それでも危険な状態には変わりはなかった。
魔術を行使して、男から魔力を奪い取れば、体力の低下で男は死んでしまうであろう事が、パスを繋いでいなくとも誰にでも、わかる事ではあった。
故に、聖杯からの知識のみで魔術もなしに手当てをするしかなかった。
魔術を一切使わないで、手当てをするなど、初めての事だった。
お湯を冷まし、傷口を拭いて、上半身を爆ぜたような傷口を、大雑把に縫合したに過ぎなかった。
治療というよりむしろ、死者の体を清めるつもりでやっていた。
その時点で、男がまだ死んでいない方が、キャスターには驚きであった。













・・・・・・
・・・・・・・・・


深海の其処を思わせる、重苦しく、静寂に支配された眠りであった。
二度と醒めることのない、常闇の深淵へと沈降していくかのような感覚がDS
の中に微かな警報を奏でていた。

「・・・・・・て・・・起・・・お願い・・・起きて!」

意識の奥底から、途切れ途切れの声が聞こえてくる、だが、それはくぐもり
安息に身を委ねようとする欲求にかき消されてしまいそうになる。
永遠の昏睡へと導く、さらなる奈落に沈みこむ直前に、DSの意識に
声が飛んできた。

「・・・起きて!」

その瞬間、魔人・・・・・・DSは覚醒した。
死神の手が迫る、奈落の其処からDSの意識は、光なき樹海から一気に浮上を遂げたのであった。

(・・・う・・・ヨーコさん・・・?)

初めに、感じたのは、彼が愛した女性の香りだった。
部屋の空気に乗り、彼の愛した女性の香りが、DSの鼻孔をくすぐった。

(いや、違う・・・ヨーコさんじゃねえ)

一瞬だが、DSの思い人の顔を、その香りが連想させた。
覚醒した、目を開けてよく見ると、紫の法衣を羽織った、紫色の髪をし尖った耳をした
エルフの皇女のような出で立ちをした、女性が其処にいた。
DSの深い蒼をした目が、その女性と交差し、DSが気が付いたのに気づいたようだった。

「よかった・・・目が覚めたのね」

心なしか、女性の目尻には涙が浮かんでいるように見えた。

「あなた、ここに連れて来てから、三日三晩ずっと眠っていたのよ、本来なら
死んでいるような怪我をしていたのに、目が覚めただけでも奇跡だわ」

キャスターは、一般人から魔力を吸い取り、魔術でDSの体を直そうとしたが、何故か、聖杯から出現しサーヴァント随一の魔力を
持っているキャスターの魔術でも、DSの怪我は治らなかったのである。
それも、そのはずDSの傷ついているものは、魂であり、それを直さない限り彼の怪我は治らないのだった。
いくらキャスターが、肉体レベルの治癒の魔術を施したとしても、DSの傷ついた魂を直さない限り、肉体は回復に向かわないのであった。
それで、キャスターは、DSの体が物質界以上の怪我をしているか、何らかの呪いの様な物と考え、魔術による治療ではなく
時間によって、彼の傷が癒えるまで、介護する事にしたのだ。
本来なら、このDSを殺して他のマスターを探した方が合理的ではあった。聖杯戦争に勝ち残る為にはこんな半死人の
看病をしながら戦わなければならないとしたら、どんな英雄でも、勝てる見込みはないのだが、
おかしい事に不思議とキャスターは、DSを殺す気にはなれず、自分の新たなマスターになるかもしれないDSを
魔術師としての彼女の勘が、何かあると感じ取ったのだった。
加えて、殺すのが惜しいほどの美形でもあり、キャスターはせめて彼が回復するようになるまで見取ると決めたのだった。
それが、功を制したのか、三日三晩つきっきりで介護してようやく、実がなったのだ。

「・・・?」

(・・・ここは何処だ?)

もどかしそうに首を動かしながら、何かを訴えるような仕草でDSは、キャスターをみた。

「駄目よ、まだ動いたら、あなた内臓の臓器もいくつか損傷していたし、
胸には、デカイ穴が空いていたんだから」

キャスターは、DSの体に、手を触れて、優しく撫でた。
ビクンっとDSの鋼の肉体が、脈を打ったかのように、キャスターの手に反応した。

「それじゃ、私は、何か食べ物でも、作って貰うわね」



(外だ、外に連れて行け・・・)

「・・・」

DSの目が彼女を見た。

ガッ
DSの力ない手が、キャスターの服の裾を掴んだ。
残った手で、DSはもう片方の手で、外を指していた。

「外に出たいの?」

コクッ

「貴方、生きてるだけでも、奇跡って分かっているのかしら?」

「・・・・・・」

DSは、片方の肺が、潰れて、聴力も殆ど、聞こえなかったが
キャスターの言わんとしている事は、分かっていた。

(外だ、外に出せ、まずは現状の把握だ)

DSは、地獄から脱出したばかりで、外の世界が、気になっていた。
何よりも、世界が、天使という高次元の存在によっての未曾有の破壊でどうなったのか見るのが先決であった。

DSの、蒼玉の目が、キャスターの目を見つめる

――外に、出せ!――と

「駄目よ、まだ寝てなさい」

(うるせえ!まずは外だ!外に出せ!)

DSは、キャスターの服の裾から、手を掴んでいた。

「ちょっと、放してほしいわね」

「・・・・・・」

DSは放す気はなかった。
残った体力を振り絞り、キャスターの手を摑んでいるのだ、キャスターがその気になれば、すぐに振りほどけただろう。
だが、キャスターは諦めたようにため息を吐いて

「・・・ふう、わかったわ、私の負けね、その代わり少しだけよ」

キャスターは、DSの体を起こして、肩に担いで、寺の外へ連れ出した。

「本当に、重いわね貴方、一体何を食べているのかしら・・・?」

「・・・・・・」

DSは、肺を損傷している為に喋る事が出来なかった。
キャスターとDSは、柳桐寺の外に出て行き、町の景色を見渡していた。

「どう、満足した・・・?」

「・・・」

(馬鹿な、天使はどうした、地獄の門は開いた筈だ、悪魔は何処に行きやがった!?)

DSの表情は驚愕に満ちていた。
前人未到の大破壊が起きて、失ったとされる旧文明が其処にはあったのだ、
DSの世界にいるもの達ならば、誰もが驚愕していただろう、しかもその破壊をした
現界して受肉しているはずの天使や悪魔がいないのだから。

「ちょっと、貴方ねえ!」

「・・・」

「ハー」

キャスターは溜息を吐いた。

(ここは、俺の知る世界じゃねえ!)

「キャ!」

ドサっ
という音ともにDSは意識を手放した。

「なんなのよー!もーう!」

周囲にはキャスターの叫びが、木霊していた。








感想  

色々と突っ込む所があると思います。
矛盾点は指摘してくれると教えて欲しいです。
頑張って書きますので、
次の話は、多分一週間以内だと思います。








[24623] 遭遇
Name: 無謀◆d7bb9f58 ID:f25f26c1
Date: 2010/12/01 20:22
DSは、黄泉の眠りに入るほどの魔力を、失いながらも、徐々に魔力を回復させつつあった。
ここ柳洞寺が、霊脈に優れた土地であって、DSがその霊脈から、失った魔力や、傷ついた魂を急速に癒していたとしても
未だDSが全快になるには程遠く、体を十分に動かす事も困難であった。

既にDSはキャスターが、人間では無いことに、うすうす気づいていたが、それよりもまず
体力の回復や魔力の回復に突き止めることが、先決であった。
DSの体は、全身にリジェネレーション<再生>の呪文が掛けられており、魔力さえあれば
即座に体を蘇生させる事が出来たが、今のDSの状態は、そうではない
DSを聖杯に置き換えれば、話は分かり易い、DSは呪文や魔術を使うとき、この聖杯の中に入ってる
自身の無尽蔵に近い魔力を変換して、禁呪や魔術を一瞬で使用して呪文を詠唱しているのだ。
だが今は、聖杯というDSの魂の器が、砕けているのだから、いくらDSが、魔力を行使しようとしても、できるわけがなかった。
普段なら、真祖や使徒にも匹敵するほどの体の再生能力が、今の状態では蝸牛<カタツムリ>
ぐらいしかなく、今は何もできず、介護を受けて、ただ刻が、傷を癒してくれるのを待つのみであった。

DSからしてみれば、誰かの世話になるという事は、恥辱ですらあった。
DS自身、何者にも犯し難い孤高の存在である、他を寄せ付けず、絶対無敵の不死身の魔人として世に君臨してきたのである。
その自分が、寝たきりで介護を受けているのである。
だが、強者が正しいという、DSの概念からすれば今のDSは間違いなく弱者であり、誰かの世話にならなければ
生命の存続も危ういのである。
なので、仕方なくキャスターに体を預けて彼女の世話になったいるのである。

また、キャスターが、DSから供給されている魔力は、DSという魔力の器から、
漏れているのを貰っているだけであり、無限に近い魔力を持っているDSからしてみれば、大海から、コップで水を掬うような行為であった。
いくらDSが、達人、魔人の領域にあったとしても、今は活動時間の殆どを、傷を癒すために
半瞑想状態に費やしていた、故に起きている時間は、殆どなかった。
だから
キャスターが、DSと契約したという事については、知る筈がなかった。
キャスターが、魔力を行使すればDSならば、すぐに気づいたが、キャスターもDSの危うい状態に気付いており
魔力は、現界するのみに絞っていた。

また、DSが目を開けると其処には、自分を助けたと思われる、彼の愛した女性の香りを漂わせる女が其処にいた。
彼、DSは動けない体でも、彼女だけには気を許していた。
今はもういない、その匂いが鼻孔に入るだけで落ち着くのであった。







キャスターは、かなり疲れ果てていた。
自分が、助けた男は、虫の息で、しかも目覚めたと思ったらすぐに倒れる。

(何をやっているのかしら、私は)

キャスターは、自分のやっている事が、よく分からなかった、何故、この銀髪の男を助けて介護しているのかと
だが、彼女に残った良心と魔術師の直感が目の前の存在を見捨てるべきではないと告げていた。
また、DSはキャスター以外の人間が食事を食べさせようとしても、絶対に口にせず
意識は無いのだが、彼女以外の人間に、体を触れられるのを嫌がっているような気がした。
狼王ロボが、恋人であるブランカにしか心を許していない様に見えた。

(だとしたら貴方を瀕死にしたのは誰なのかしら・・・?)

キャスターは、DSが、昼夜を問わず、覚醒するために、いつも彼の傍にいなければならなかった。
包帯を替えたりと粥を、食べさせたり、何故か色々と世話を焼いていた。
一方、DSもそんな些細な事でも、今は重要だった。
傷を縫い合わせた事で、大気中に漂う病原体が、体内に入り腐敗を促進させるのも防いでいたし。
何より、彼女の献身的な介護が、回復に結びつける要因となっていた。






「貴方の怪我は、一体なんなのかしら、私の魔術でも直せないなんて、狼さん・・・」


スッと
キャスターの柔らかな冷たい絹のような手がDSの肌に触れた。

その手に反応したかのようにDSが唐突に目を覚ました。
そしてDSの蒼玉の瞳が、キャスターの蒼の瞳の輝きに見出されたかのように
キャスターを見つめていた。

「もう、起きてるなら、起きてるって、言って欲しいわね」

驚いたキャスターがその台詞を言った後に、彼<DS>が、喋れない程に気付いた。

「そうだったわね、貴方喋れないんだったわね」

そう、DSは肺が損傷している為に喋れないのである、DSが突然起きて、脳が少しパニックを起こし為にでた言葉であった。
だがDSの体は順調に、回復し、肺も直り、復元した声帯機能は短時間程度の会話なら可能になっていた。
また、呪文の詠唱も一発、二発程度なら、何とかなっていた。
しかし、殆どの時間を昏睡してすごしていた事と、口を聞く必要もなかった事と、
会話に使う体力も惜しいので、だんまりを決め込んでいた為に
話すキッカケが掴めないでいたのである。
また、キャスターと会話するのが何となく躊躇われたこともあって話すことが出来なかったのである。
しかし

「おい」

「!!」

「あら、あなた、ようやく喋れるようになったのね、いつ会話できるようになるのかと
考えて不安になったりしたけど・・・・・・ともかくよかったわ」

「それじゃ、私が世話になってる、寺の皆さんに伝えてくるわね・・・」

キャスターは、踵を返し
パタパタパタと
部屋を出て行こうとした。

「待て!」

急いで、部屋を出て行こうとしたキャスターをDSが鋭い静止で押し止めた。

「何で、俺を助けた・・・」

DSの理由は、当然である、DSの知ってる人間は、利己的で、猜疑心が強く打算で動き
倒れている人間がいても、無関心を決め込むのを知っていたからである、助けたとしてもそんな人間は稀であるのだ。

(ならば、何故、俺を助けたんだ・・・?今にも、消えそうな魔力量しかない女が俺を・・・)

その問いに、キャスターはDSがパスを繋いでいる事に、気付いていないのではないかと考えた。

「貴方が、倒れていたからよ・・・」

「違う、俺の知っている人間は、普通そんな事しねえ・・・伊達や酔狂だとしてもそいつは自分に余裕があるやつだけか、
権力があるかのどっちかだ、お前は、今すぐにも消えそうな存在の筈だ・・・その自分で精一杯の奴がどうして俺を助けたんだ」

DSは、一瞬だけだが、キャスターを自分の技能の一つでもある魔眼で見た。
それで彼女の、生態エナジー<魔力量>が、ごく僅かしかない事に、気づいたのである。
最もその為に、DSはキャスターがサーヴァントだと気づかなかったのであるが・・・
普通、自分が生き残るのが大変な人間は、DSという大きな荷物を背負うとはしない筈である。
故にDSの、脳はキャスターが自分を助けた理由が分からないのだ。

(隠しててもしょうがない・・・か・・・)

キャスターは、DSが気付いていないなら、気付いていないで話さずにしようとした。
今だ、殆ど体を動かせないDSを負担に掛けまいとせず、言わないようにしていたのである。

「!!」

キャスターが、何かの気配を察知したようである。

「その話は、後にするわ、私は少し用事があるから出て行くわ」

「待て!」

DSの静止の言葉も聞かず、キャスターは部屋を出て行った。
不意にDSは、異変を察知した。

(なんだ・・・?この寺の周囲の精霊が騒いでやがる)

「何か、やな予感がしやがるな・・・」

「!!」

「誰かが、俺の体から、魔力を消費してやがる」

DSは、ようやく気付いた、自分と契約を行使している存在に、その存在が誰であるかも
すぐに感づいた。彼の直感のような物は、うすうすキャスターと自分との関係を気づいていたが、杞憂だと思っていたのであった。
今は、確信に変わった。
DSの直感はキャスターの危険の警報を鳴らしていた。

「俺が行くまで、くたばるんじゃねえぞ」

立つのもやっとの体を起こして、キャスターの元に行こうとしていた。

ズリズリズリと

「このポンコツの体がぁ・・・少しだけ言う事を聞きやがれ・・・」












「よー、あんたはいかにもキャスターって感じだが」

柳洞寺の階段の下で
全身を蒼で包んだ、男がキャスターに向かって問い詰めた。

「隠しても、無駄ね・・・そういう貴方はランサーかしら?」

階段の上で、ランサーとマスターの二人を見下ろして、キャスターが立っていた。

「いかにもそうだが」

「構わないよな、バゼット?」

ランサーは、後ろにいるベージュの色をしたショートカットの男装の麗人に尋ねた。

「ええ、敵は、全て排除する方向でお願いします、しかし今回は偵察という事を忘れないで下さい」

「そういう事だ、あんたに恨みは無いが、運が悪かったと思って諦めてくれや」

途端にランサーが、紅い槍を出して、突進してくる、
地面を、跳ねたかのような速度で、ランサーが襲い掛かってきた。
カタパルトで射失したかのような勢い、静止の状態から一気に爆発的な速度に達したかのような突進
並みの人間では、コレには反応できないであろう、機先を制す初手であった。
だが、キャスターも黙って、やられはしなかった。
マスターから引き出せる、魔力を最大限使い、ランサーに仕掛けた。

「―――――――死になさい、Φλ?γα(火炎)」

たった一言。
それだけで発動する大魔術。
これこそキャスターの保有スキルである、高速神言。
どれほどの魔術であろうとキャスターは、たったの一言で詠唱を完了する。

言葉の意味通り、襲い掛かる業火。
対象を焼き尽くす為に放たれたそれは、唯の人間が受ければ骨しか残らないであろう一撃。
その一撃だけでよかった。
最初の一撃で、全力を放ち機先を制する。
これが、キャスターの考えられる最善の策であった。
最初に有利に進めておいて、交渉に持ち込むこれは彼女の賭けでもあった。

「あらもう終わりかしら、ランサーも大したことないのね」

「キャスターか、楽に終るかと思ったけど、中々どうしてやるじゃねえか、楽しくなってきやがったぜ」

「ねえ、ランサーのマスター?」

「何でしょうか?」

「今回は、様子見のつもりで、仕掛けたのなら、これでお互い止めとくわけにはいかないかしら・・・?」

「あなたも偵察で、来ただけなんでしょう、サーヴァントは七人まだ揃っていないしここで潰しあうのは愚かな事ではなくて?」

「・・・・・・」

キャスターの提案に戦いが止まり、しばしの沈黙が流れる。
実際、キャスターにとっては、さっきの一撃が限界であった。これ以上、魔力を放てば、マスターの生死が危うくなるからである。
それに、向こうも、サーヴァントが七人揃っていないので無理はしないだろうと踏んでの、駆け引きだった。
もしキャスターが、真っ当なマスターに引き当てられていればこんなギャンブルなどせずに、この柳洞寺に陣を張り火炎や
雷撃の魔術を好きなだけ撃てただろう。
だが、無いものねだりをしてもしょうがない
<サーヴァントはマスターを選べない>のである、どんなクズだろうがゴミだろうが令呪がある限りしたがわなくてはならない
それが聖杯戦争のルールで、あった。
 <たら> <れば>の話をしても仕方がないのである。
今は、このギャンブルに懸けるしかなかった

負ければ 死

勝てば  生

分かり易い、ギャンブルではあるが、キャスターは、標高、数千メートルのつり橋を渡っているかのような気分だった。
相手のマスターが、考える時間が、無限にも感じられるひと時であった。

「拒否します、キャスター貴方をここで殺して、この地を拠点とすれば、我々はこの後、かなり有利になれると思います、ランサー!」

「イエス、マスターってか」

キャスターは、自分に迫ってくる、ランサーを走馬灯のように見つめていた。
自分は精一杯やったのだ、そこに悔いはなかった。
現状で、考えられる最善の手はうった、唯・・・賭けに負けた、それだけだった。

(最後に、あの男の、顔が・・・思い浮かぶなんて・・・フフ・・・所詮、マスターを一回でも失ったサーヴァントが長生きできるはずは無いものね・・・)

キャスターは、生を諦め、紅い魔槍に貫かれるのを覚悟した。
その瞬間だけ、最速と謳われているランサーの動きが、やけに遅く見えた。

(死ぬ前に、景色がゆっくりになるなんて、なんて残酷なのかしら・・・)

そう、生きる事に苦しんだ彼女にしてみれば、死ぬ前の時間がゆっくりになる事など残酷な事でしかなかった。
その所為か、キャスターは後ろの声に、彼女は反応できた。

「伏せろ!女!」

自分が助けた、半死半生の男の声が、後ろから突然聞こえたのである。

「漆黒の闇の底に燃える地獄の業火よ
我が剣となりて敵を滅ぼせ 爆霊地獄!(ベノン)」

その言葉と共に、圧倒的な破壊酵素がランサーを襲った。

「!!」

DSが使った呪文は混沌の領域の門(ゲート)を敵の周囲に解放し、その領域から
生物を食らう邪悪な物質を呼び出す魔術であった。
コレを食らった物は、細胞が異様な速度で変質、分解して
一瞬で塵に還る程の威力である。
事実ランサーの体は、所々が焼け爛れたような、後があった。
だが、ランサーも最速の英霊ギリギリのところで爆霊地獄<ベノン>を回避していた。

「今の魔術は」

英霊と呼ばれている魔術師のクラスのサーヴァントのキャスターでも見た事がない、魔術であった、コレを実行できそうなのは
キャスターは、唯一人、思い当たる節があった。

「ちょっと、貴方、何で出てきたのよ!」

やはり、キャスターが助けたDSだった。
DSが、キャスターを押して後ろに下がらせ、眼前のパゼットとランサーに目をやる。
同様に、パゼットとランサーもDSを見据えた。
そして、DSの使った、魔術は封印指定の執行者でもあるパゼットでも見た事がなかった。
ランサーも同様に、目の前の黒い法衣を羽織った、銀髪の男が只者ではないと察知した。
それが、二人をうかつに近づけさせずに警戒させていた。
キャスターとDS、パゼットとランサーの四人の間に重たい沈黙が漂っていた。

「あんたが、マスターか?俺の対魔力を破るなんて中々だな」

最初に静寂を切ったのは、ランサーであった。

「さてと、どうするよパゼット?見たところ敵のマスターはフラフラのようだが、いいのか
このままやっても?」

事実、DSは立っているのもやっとな様子であった。

「少し待ってください、相手のマスターの出方を見ます」

「・・・・・・」

DSの体は、後、一発ぐらいの呪文の耐えれる事はできた。
問題は、その一度の呪文の詠唱であの二人を、消し去る事が出来るかという事であった。
あの二人は、生半可な術では、倒せないとDSの、明確な頭脳は即座に判断した。
問題なのは、DSが精神の器に蓄えつつある魔力の回復量と、生命維持の為の消費量とが未だ際どい
均衡を保っていることだった。
魔眼を使うことも、危ういこの状態で、ランサーとパゼットの二人を倒す、高等な魔術の使用を行使すれば、
その天秤は確実に負の側に傾き、一滴一滴を浮かすように僅かに貯めた魔力の蓄えは瞬く間に食いつぶされ
その傾きは止めようもなく加速度をまして、バランスを失ったDSの命は一気に、消滅への落下放射線を辿る事になりかねないのだ。

それを正確に理解しながらも、目の前のDSを助けたキャスターを見捨てるなど持ってのほかだった。
契約をしていて、DSの魔力を吸っていたとしても、DSから見れば、そんな些細な事はどうでもよかった。
DSを助けて、世話を介護をしたという事実は曲げようがないのだ。

誇り高き魔人は即座に覚悟を決める。
パゼットとランサーの二人を殺し、残った魔力の全てを、キャスターに分け与える。
これで、後ろにいる自分を助けたキャスターは何とかなるだろうと考えた。
少なくとも、生死の決定権は自分にあった。
自分を助けた女を、助けて死ぬのならば、異世界でのたれ死ぬのも悪くないと考えた。
凄絶な笑みを浮かべ、取り返しの付かぬ呪文喚起を始めた。

「ブー・レイ・ブー・レイ・ン・デー・ド
   血の盟約に従いアバドンの地より来たれ・・・・・・」

DSが、異世界のチャンネルを開き精霊に働きかけ、
最後の詠唱を発動させようとした時

「駄目ーーー!」

パゼットとランサーとDSの間に迫る影があった。
キャスターであった。
DSの使う魔術の、気配を察知し、DSの詠唱する魔術の直線状に割って入ってきたのであった。

「貴方の、使う魔術がどんなものか分からないけど、それだけの大源<マナ>と小源<オド>を行使する魔術をそんな体で使用すれば
確実に死ぬわよ!」

「どけ」

「どくわけないじゃない!」

「もう一度だけいう・・・どけ!」

DSが、キャスターに向けて言った。
それが、DSにできる最終通告であった。

「俺は、あいつらを殺す、最も死ぬ気はないが、黙って殺されるつもりもない」

「運が良ければ、相打ちぐらいにはできるだろうがな・・・・・・」

「!!」

その言葉に、キャスターは確信した、この男は本当に死のうとしていると
敵と相打ちになったら、なったでそれで良しと思える人間なのだと
己の命を、顧みない男なのだと。
男の受けた、傷が呪いの類ではなく、戦いによって受けた傷なのだとキャスターの聡明な頭はすぐに理解した。
キャスターが、パゼットとランサーの二人に向いて、即座に提案をしようとする。

「貴方達も、分かっているとは思うけど、うちのマスターは、貴方達と相打ちを狙っているわ・・・それを理解した上で
ランサーとそのマスターに聞くわ、貴方達はここで相打ちになっても構わないの?」

「・・・・・・」

ランサーとバゼットが目を交わし逡巡する。


「ここは退きましょう・・・」

「パゼットいいのかよ・・・」

ランサーが残念そうに言う。

「見たところ彼はかなりの魔術師です、先程あなたが食らった魔術・・・それは英霊でもダメージを食らうものでした」

「それだけの魔術を行使できる男が、自身の命を燃焼させて魔術を行使しようとしている、恐らく英霊でも倒す事が可能なのかもしれません・・・・・・
本来、我々が此処に来たのは、偵察だけです、サーヴァントのクラスが分かっただけでも良しとすべきです」

「しょうがねえな、わかったぜ」

残念そうに、紅い魔槍を帰し、パゼットとランサーの二人は去っていった。








うんちく   >:<


暗黒魔術/Dark Art 魔道物理と呼ばれる理論の元に成り立つ魔術で、言葉(呪文)と図形によって物理現象を引き起こす魔術。
失われたと言われるこの魔術を再構築したのは、他ならぬDSでもある。

爆霊地獄(ベノン)
Type:Dark
Spell:ザーザード・ザーザード・スクローノ・ローノスーク
   漆黒の闇の底に燃える地獄の業火よ
   我が剣となりて敵を滅ぼせ 爆霊地獄(ベノン)
混沌の領域の門(ゲート)を敵の周囲に解放し、その領域から
生物を食らう邪悪な物質を呼び出す呪文。暗黒に属するものは
一般的に生命に対する激しい憎悪に満ちており、この呪文の効果と
威力もそれを如実に顕している。
呼び出された「破壊酵素」は肉体の新陳代謝(異化)を異常加速させ、
敵の細胞を急激な速度で変質・分解し、再生が困難な程にまで
塵の如く破壊し尽くし、その後空気に触れることで壊れ消滅する。
凄まじい破壊性の呪文であるが効果範囲外には全く影響が無く、
味方を巻き込む危険性は無い。

威力 (-B~-A)
四天王のカルでも防げない威力である為に作者はこのくらいが妥当だと
考えている。


感想

一話一話が、長い気がします。
一応書いた後は、原稿を二度三度チェックしていますが、それでも
矛盾点、分からない点があったら、感想に書いて下さい。
この物語は、最初が一番難しいです。
ボロボロのDSとそれを介護するキャスターのイメージが
難しいからです。
戦闘描写やDSが暴れまわるイメージならすぐに掛けるのですが・・・
まあ、頑張って書いていこうと思ってます。
次の投稿は、多分一週間以内だと思います。
では、また。















[24623] 異世界の魔人
Name: 無謀◆d7bb9f58 ID:f25f26c1
Date: 2010/12/22 01:29
ランサーとバゼットの二人が去り、極度の緊張が解けて、脱力感と倦怠感がキャスターとDSの二人を襲う
その中で、膝を地に折り曲げて、大地に屈したのは、半死人のDSであった。

(ち、今の、俺様じゃあ、ここら辺が限界か・・・・・・)

「・・・クソ・・・」

ドサっ
その音ともに大地に、その体を預けたのはDSであった。
DSの意識は、極度の緊張が切れた所為と、地に伏した衝撃の所為で、途切れてしまった。
それも当然である、全身の筋肉が蠕動し収縮して息をするのもやっとの状態で魔術を行使したのだから当たり前の代償であった。
慌てて、彼のサーヴァントである、キャスターがダッと駆け寄る。

「ちょっと、マスター!」

大事に至っていないかを確認すると、安堵したかのように一息付いた。

「よかった、気絶しているだけね」

取りあえず、いくらなんでも、地面にこのまま寝かしたままにするわけにもいかず
彼女は、四苦八苦しながら、DSを彼女らが、宛がわれた客室に戻すのだった。




・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

DSが気が付くと、布団に寝かされている事が、分かった。
目を開いて見ると、目の前には、あのお節介焼きの女、キャスターがいる事が分かる。
キャスターは、DSが気が付いたのを見て、何か話そうと思っていると思いこちらを見つめていた。
DSは、眉を潜めて逡巡した。
自分が異世界の人間だと、話しても良いものかと、だが隠してても始まらない、ラチがあかないのは
気に食わない性格でもある。
罰がわるそうに、DSはキャスターに話しかけた。

「いいか、女、よく聞け、俺はこの世界の人間じゃねえかもしれねえ・・・」

キャスターは、DSの言った言葉が一瞬よく分からず。

「・・・え・・・どういう事かしら?」

と聞き返していた。

「言葉どおりの意味だ・・・俺は、未来かそれとも別の世界から来た人間かもしれねえって事だ・・・自分で言ってて信じられねえかもしれねえがな・・・」

「・・・平行世界」

キャスターは、両眉を吊り上げて、驚き驚愕していた。
平行世界の干渉、又は移動、それは第二魔法に他ならないからだ、魔法に匹敵する魔術を駆使できる彼女でもそんな事は不可能だった。
男の話を真実とするならば、この男に自分の事を話して、協力してもらえるかどうか分からなかった。
そんなキャスターの、様子を察したのか

「どうなんだよ・・・俺様の話を、信じるのかよ?」

DSが、尋ねてきた。
DSは、キャスターの様子を、自分の話を疑心疑惑かと思っているのだった。
だが、キャスターは、その事について悩んでいるのではない、自分の事を話しても良いのか、その一点について悩んでいるのであった。

「ええ・・・・・・にわかには信じがたい話だけれど・・・信じるわ・・・貴方がさっき行使した魔術は、神代の時代にいた、この私も知らないものだったわ・・・」

「さあ、俺様の事は、話たぜ、次は手前の番だ、答えてもらうぜ、手前が何で、俺様から魔力のパスを繋いでいるかをな?」

DSは、自身の魔眼で、キャスターを見つめた、瞳の色が、蒼から真紅に変わり更に、猫科の猛獣を思わせる金色に変色する。

(凄い、迫力ね・・・)

その瞳には、有無を言わせない、迫力があった。
初めキャスターは魔術を行使してDSを操り人形に仕立てあげようとも考えたが、DSの精神防御や幻術、幻覚に陥らせないプロテクトは
幾重にも幾層もの防壁を張っており、コレを破るのは、どれだけの魔術や魔法を駆使しても不可能だった。
それもその筈である、DSが最も嫌う行為は、自身が操られる事である。
DSは、他人、第三者によって操り人形になるぐらいなら死を選ぶか、それか、その糸を振りほどき、操っている者を食い千切るだろう。
例えそれが・・・神であったとしても・・・それがDSという男でもあった。
半死人状態でもありながら、精神には完璧と思える程の防壁を張っていたDSを褒めるべきであるのだろう。
キャスターは、パスを繋いでいる事に気づいている、DSについて最早、隠し事をしてもしょうがないと感じた。

「ええ・・・実は私は・・・」

キャスターは、話した。
自分は、聖杯戦争によって呼び出された七つのクラスの内の一つ、キャスターである事を、
ランサー、セイバー、アサシン、アーチャー、バーサーカー、ライダー、キャスターの
七人の英霊を召喚して、戦い合わせて、残った一人のマスターとサーヴァントが聖杯を手にするのだと。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
それを聞いたDSは暫く、考えて呟いた。

「・・・うさんくせえ話だな」

その台詞を聞いたキャスターは、ポツリと呟いた。

「そう・・・やっぱり」

(・・・信じてもらえないか・・・当然よね・・・こんな荒唐無稽な話・・・信じる方がどうかしてるわよね)

彼女の頭の中を、落胆と諦めの、二つの負の感情が一気に押し寄せてくる。
当然である、もしかしたらと思い、話をしてみたが、結局信じてもらえなかったのだ。
期待していただけに、その落胆も凄まじいものであった。

(・・・私は・・・コレからどうすればいいのかしら)

絶望にも匹敵する感情がキャスターの頭の中を占めようとする時に、DSの声によって阻まれた。

「女・・・勘違いすんじゃねえぞ・・・俺様が言ったのは、この戦争事態が怪しいって言ってるだけで・・・手前の話を信じてねえわけじゃねえ」

その台詞を聞いて、キャスターに顔が陰から陽に変化する。

「それと・・・もう一つ聞きてえ事がある・・・今まで聖杯戦争は何回ありやがったんだ?」

不意に思考から戻った、キャスターがDSの質問に答える。

「今までに、四回聖杯戦争があったわ」

「その、戦いの中で、聖杯を手に入れた奴は、いやがんのか?」

キャスターは、聖杯から送り込まれてくる情報を元に答えた。

「・・・居ないわ・・・今回で五回目になるけれど聖杯を手にいれた勝者は過去には一人も居ないわ」

(ますます持って、うさんくせえ話だぜ・・・)

DSは、思考を巡らせる、彼は誰かに命令されて、戦いをするほど気に入らない事はなかった。
DSが戦いをする時は、全て自分の意思であり、其処に第三者や他人が介入する事は許されなかった。
聖杯戦争と言う戦いを仕組んだ者が居るならば、その戦争の様子を外部か内部から見ているか、介入している人物が居るはずである。
少なくとも、この戦いには、人為的に捏造した何かか、この聖杯戦争という事に関する根幹か真実が隠されてる筈である。
それを、紐解かなければ、聖杯は手に入らないだろうとDSは、考えていた。

(それを、探し出すのが先決だな、クックック・・・俺様を操って戦争をしようなんて千年早いんだよ・・・俺様の体が直った暁には見てろよ
誰が操ってるかしらねえが、死ぬほど後悔させてやるぜ・・・クックック・・・アーハッハッハ!)

その光景を、想像するだけで楽しくなってくる、胸に深い愉悦が沸き起こる、知らずDSは深い残忍な笑みを浮かべていた。
この戦争で、もし自分を利用しようとする者がいたならば、ズタズタにして引き裂いて、泣き叫び許しを請う迄、痛めつけるつもりであった。
そう、人形使いを気取っている輩を徹底的に粛清するのだ。
これほど楽しい事はない、操っていたと思う人物に、殺されるのだ、特にDSは、絶頂の只中にいる人物を、地獄の底に突き落とすのが大好きだった。
コレを思い描くだけで、体に活力が漲るというものである。

「・・・クックック」

知らずDSの口からは笑いが零れていた。

「いいぜ取りあえず、女、手前には借りがあるからな、それを返すまでは協力してやるぜ・・・元の世界に帰る方法はその後で考えるから気にすんな」

DSは、聖杯を手にいれる為、そして借りを返す為に、協力するといった。
聖杯を手に入れれば元の世界に返れるかもしれないという理由と、キャスターに借りを返す。
それに、DS自身、聖杯に興味があるからだ。

「マスター貴方は聖杯には、興味は無いのですか?聖杯を手に入れれば元の世界に帰れるかもしれないというのに・・・」

キャスターは、当然の疑問を聞いた。

「いや、それよりも手前に借りを返すほうが、俺様にとっては先決なんだよ、聖杯はその後でも、手に入れればいいだろうが、」

キャスターは、そのDSの言葉に嘘は無いような気がした。
聖杯より、借りを返すほうが先決だと、普通の人間ならば、元の世界に帰る為に聖杯を欲する筈なのだ。

「変わった人ね・・・貴方・・・」

確かに、この男は変わっているかもしれない。

「それは、違うぜ女、変わってるのは俺様じゃなく世界が俺様に付いて来れねえだけの話だ・・・」

その台詞を、恥ずかしげもなく、真正面からいうDSに、彼女は両目を大きく見開き

「本当に変わってるわね・・・それと、私の事を、女と呼ぶのは止めて欲しいわね」

「何だよ、名前なんてどうだっていいじゃねえかよ」

DSの言うとおりである、本来、サーヴァントとマスターの関係は主人と使い魔のような物である
其処に、情が入る余地は、普通無いのであるが、キャスター事、彼女はそれを嫌った。

「良く無いわね、少なくとも私にとっては・・・」

それは、彼女の英霊としての誇りでもあるプライドがそういわせたのか、それは彼女にも分からなかった。
だが、それが、キャスター事、自分の真名を言わせるキッカケをDSに与える口実にもなった。

(そういえば、アーシェスも自分の事をネイと呼ばれるのは嫌がっていたやがったけな、カルには絶対言わせるなと
そう呼んでいいのは俺だけだと)

DSは、今は居ない、四天王でもあり娘でもあるアーシェス・ネイと己の半身でもあるカル・スの顔を思い浮かべた。

「・・・しょうがねえな、それじゃ、手前の真名を教えろ」

キャスターは、少し考えた以前のマスターの事が脳裏に浮かぶ

(何で、今になって、前のマスターの事なんかが・・・)

忌まわしい記憶が、思い浮かぶ、その記憶に彼女は奥歯を噛み締める
ギリッと

(彼は、前のマスターとは違うはずだわ、そうよ、そうに決まっているわ・・・)

前のマスターと、DSを比べる事は、DS対する冒涜でもある、彼は、前のマスターなんか知る事はないし
異世界の人物なのだ、魔術師の腕を比べるならともかく、人物を物差しで計ろうとしていた。
だが、自分の真名を言った瞬間、彼は落胆するのではないか、キャスターはそんな不安に襲われたが、
自分の真名をいう事は、最早、隠す事もできないし、どうしようもないだろう。
それに、もしかしたら異世界から来た、DSは自分の事を知らないかもしれないその事が、キャスターに真名を言わせる
後押しともなった。

「・・・私の名は、・・・メディアと言います」

「・・・メディア・・・メディア」

その名前をDSは、復唱していた。
DSは、必死に記憶の引き出しを、探していた。
どこかで聞いた事のある名前だった。
古代魔術<ハイ エイシエント>の文献か、旧世界の文献だったか・・・伊達に四百年以上生きてはいない、彼はその間、闘争の為だけに生きて
己の力を高めてきたのである。

(・・・メディア、確か古代ギリシャ神話の中に、そんな人物がいたような気がするぜ・・・此処は、一つ探りでも入れてみるか?)

「・・・もしかして、コルキスの王女か・・・」

「え、貴方、私の事を知っているの・・・」

「ああ、知ってるぜ」

もしかしたらと思い、DSは、ハッタリで言ってみただけなのだが、当たりだったようだ。

「そう、知っていたのね・・・」

メディアは、もしかしたら知らないかもと思い、真名を告げたのである。
そんな事、DSが調べればすぐ分かる事であるのに、メディアは自分の愚かさを呪った。
だが、次の台詞はいつものメディアを魔女と罵倒する言葉ではなかった。

「コルキスの王女メディアか・・・いい女じゃねえか、こんな女を捨てるなんて勿体ねえ事しやがって、
メディアか・・・気に入ったぜ、特別に俺様が、名前で呼んでやるぜ」

メディアは、まさかこんな事を言われると夢にも、思わなかった。
魔女呼ばわりされるかと思ったのだが、しかも褒められるとは考えてもいなかった。
メディアは、嬉しく、何か胸のつかえがとれた感じだった。

「それと、俺の事を、マスターって呼ぶのは止めろ、俺様の事はDSか美しいDS様と呼べ」

この男は、本気で言っているのだろうかとメディアは考えた。

「・・・・・・わかったわ、DS」

「・・・いいかメディア、後数日もすれば俺様の体は、完全に回復する、期待して待ってやがれ・・・」

そういい残して、DSは眠りに付いた。
やっと起き上あがれるような体で、長話に付き合わせたのだ。
それも、無理からぬだろうと、話をする為に、相当無理をしていたのだろうとメディアは思った。

(少し、楽しみが増えたわね)

後、数日の我慢であった、そうすれば異世界の魔道師DSの本当の実力が分かるのだった。







感想

DSの<俺>と<俺様>と使う、場面があるのですがそれを表現するのが難しいです。
漫画で見ると、第三者に言う時には<俺>自分の事をいう時は<俺様>と言ってるような気がします。
多分、間違っていないと思いますが、間違ってたら教えてください。
後は、こんなのDSじゃないというかたは、スイマセン勘弁してください。
DSが、誰かの世話になるというシーンは、書くのが難しいので許してください。
それと更新遅れてスイマセン、仕事が忙しくて、
本物の作者みたいに無期限、休暇みたいになる事はないと思いますが、暖かく見守ってください。
次回の更新は、二週間前後だと思います。
それと、ギャグをお待ちの方は、もう少し待ってください。
次の話で、復活するので、ようやく本編に介入できます。
ギャグを生かすために、シリアスを生かす、コレが難しいです。
まあ、頑張っていくので宜しくお願いします。


全然関係ないのですが

ジャンプで掲載中の漫画、PSYRENが終ってしまいました。
作者は、この漫画を楽しみにしたいたので、残念です。
あの話を、週刊で書き、終り方も纏めた岩代先生は、凄いと思いました。

それでは、また次回・・・


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