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あきらめない:塚本英夫がん闘病記/5止 医師・家族、一緒に闘う /群馬

 ◇正しい知識を持つ

 がんを告知された時、桐生厚生総合病院の主治医、斎藤秀一医師には「末期になった場合は延命治療をせず、尊厳ある死を迎えるため相談に乗ってほしい」とお願いした。

 私は以前から「人生の終末だけは、好きな音楽や花々に囲まれながら、家族だけにみとられて逝きたい」「葬儀、戒名、埋葬は必要ない」などとなんとなく考えてきたが、がんの告知で死が現実のものとして迫ってきた。

 この世に生を受けたからには、必ず死が訪れる。私はがんと闘うと同時に「命は必ず尽きる」という現実を受け入れることができつつある。心の平衡を保つことができているのは、告知以前から死のことを考えていたからかもしれない。

 妻は中学時代からの同級生。お互い東京・浅草の下町育ちだが、私が戦後の一時期に疎開した縁で01年、桐生の地に居を定めた。子供は娘2人と息子1人。全員が独立した。

 これまで闘病記を書いてきたのは、ひとえに、一人でも多くの方にがんについて正しい知識を持ってほしいと願うからだ。すべてのがんにいえることだが、初期段階では自覚症状がほとんどなく、進行には気づきにくい。

 肝細胞がんの場合は黄疸(おうだん)が現れたり、腹部にしこりができるが、その段階では末期に進行しているケースがほとんどという。私も医師に「発見があと半年遅れていたら、末期がんになっていたかもしれない」と言われた。

 県内では桐生厚生総合病院や群馬大医学部付属病院などが厚生労働省から「がん診療連携拠点病院」に指定され、複数診療科の連携体制を整えている。このうち桐生厚生総合病院では、早期発見のため「お手軽けんさ」を実施している。便潜血検査(1000円)、前立腺検査(2100円)、腫瘍マーカー検査(1種類あたり3150円)などだ。

 日本では「時間がない」「費用がかかる」などを理由に検診を受ける人が他の先進国に比べて少なく「がん対策後進国」とも言われる。丸田栄院長は「確かに検査には高額の費用がかかる場合がある。しかし、早期に発見して治療を受けるメリットは計り知れない」と強調する。高橋満弘・放射線科部長も「少なくとも年1~2回の定期検診は受けてほしい」と話す。

 がんは2人に1人が罹患(りかん)するというデータもある。多くは私と同様、「自分は大丈夫だろう」という根拠の乏しい安心感の中で日常生活を続けているのではないだろうか。私はがんを告知され、医師と今後の対応について十分話し合った結果、「正しい知識を持って医師や家族と一緒に闘う」と決意することができた。この思いを多くの読者と共有したいと願う。【桐生通信部記者・62歳】=おわり

毎日新聞 2010年12月23日 地方版

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